原題:『Wの悲劇』
監督:澤井信一郎
脚本:澤井信一郎/荒井晴彦
撮影:仙元誠三
出演:薬師丸ひろ子/世良公則/高木美保/志方亜紀子/蜷川幸雄/三田村邦彦/三田佳子
1984年/日本
映画の演出が「芝居じみている」原因について
1984年の封切り当時は大ヒットしてさらに数々の映画賞も受賞した本作を改めて観ると、それは薬師丸ひろ子というキャラクターを知った上での感動であって、作品そのものが本当に優れたものなのかどうかは微妙だと思う。
最も疑問に感じる場面はクライマックスである。『Wの悲劇』の主役の和辻摩子を演じ終えた主人公の三田静香が劇場裏の階段から降りようとすると、静香から主役を奪われた菊地かおりが人混みの中から突然現われ、公衆の面前で静香が主役になれた理由をバラした後、ナイフを握って静香目がけて突進してくる。そこへ割って入った森口昭夫が静香の代わりに刺されてしまうのであるが、あれだけ人がいながらかおりがいとも簡単に静香のところまでたどり着けるのも、昭夫が刺されるのを待っていたかのようにすぐさま3人の救急救命士たちが現われ昭夫を担架に乗せて連れて行ってしまうのも、演出がチープに見えるのである。
しかしもしも本作が『蒲田行進曲』(深作欣二監督 1982年)のような「劇中劇オチ」を狙ったものであるならば、このような「芝居じみた」演出に納得できるのであるが、『蒲田行進曲』も角川映画で、同じネタを使い回す訳にもいかず、無理やり青春映画にしたような感は否めない。もちろんあくまでも私見である。