MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『名探偵登場/名探偵再登場』

2015-09-11 00:03:10 | goo映画レビュー

原題:『Murder by Death』
監督:ロバート・ムーア
脚本:ニール・サイモン
撮影:デヴィッド・M・ウォルシュ
出演:トルーマン・カポーテ/ピーター・セラーズ/デイヴィッド・ニーヴン/ピーター・フォーク
1976年/アメリカ

原題:『The Cheap Detective』
監督:ロバート・ムーア
脚本:ニール・サイモン
撮影:ジョン・A・アロンゾ
出演:ピーター・フォーク/アン=マーグレット/アイリーン・ブレナン/シド・シーザー
1978年/アメリカ

早々にコメディー化していたミステリー作品について

 『名探偵登場』では映画や小説でおなじみの5人の探偵たちがライオネル・トウェインと名乗る大富豪に晩餐に招待され、トウェイン自身の殺人事件を解決させられるはめに陥る。ラストで5人は書斎に現れた死んだはずのトウェインを前にそれぞれ真犯人を推理するのであるが、トウェインは「最後の5ページで初めて犯人を登場させ、才知に溺れ、謙虚さを忘れ、長年にわたり読者を煙に巻き、どんでん返しでこじつけてきた君らの本など安値で投げ売りされ、無数の怒れるミステリー・ファンが復讐するのだ」と5人の推理の拙さを指摘する。特にピーター・フォークが演じたサム・ダイヤモンドはダシール・ハメットの『マルタの鷹』の主人公の私立探偵のサム・スペードのパロディーであるが、サムは実はモノマネ俳優のJ・J・ルーミスであることを明かし、トウェインこそ実はサム・ダイヤモンドなのだと喝破するのであるが、結果的に間違っており、それでは当のサム・ダイヤモンドはどこへ行ってしまったのか分からなくなり最後のオチに至るまでもはやストーリーは滅茶苦茶なのであるが、それも含めて本作はミステリーに対するアイロニーが効いているのである。
 『名探偵再登場』は『名探偵登場』の「続篇」ではなく、寧ろ少なくとも『カサブランカ』(マイケル・カーティス監督 1942年)を観ていなければその面白さがよく分からないかもしれない。『名探偵登場』はミステリー作品全般を皮肉ったものであるが、『名探偵再登場』は具体的な作品に特化したパロディーだからである。例えば、主人公のルー・ペキンポーを演じているピーター・フォークはハンフリー・ボガートを気取っているのであるが、1968年からテレビ放映が始まった『刑事コロンボ』の主人公である、とぼけたコロンボを演じたピーター・フォークがハンフリー・ボガートを気取っているから面白いのである。因みに相手役のアン=マーグレットはイングリッド・バーグマンと同じスウェーデン出身の女優であり、そのキャスティングの徹底ぶりは大したものである。


(ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマン)


(ピーター・フォークとアン=マーグレット)


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