原題:『日本解放戦線 三里塚の夏』
監督:小川紳介
撮影:大津幸四郎/田村正穀
1968年/日本
原題:『三里塚(仮題)』
監督:大津幸四郎/代島治彦
撮影:大津幸四郎/代島治彦
出演:大津幸四郎/北井一夫
2013年/日本
「私たちの望むものは」
成田空港建設反対闘争を記録した「三里塚」シリーズの第一作のためなのか、警察や機動隊と戦う農家の若者や女性たちは緊張感の中にもまだ楽しんでいるように見えるのは、撮影者たちも映画を撮ることを楽しんでいるからであろう。それは使用されている挿入曲が、林光が作曲した陽気な行進曲であるところからも感じられるのであるが、1971年9月16日、神奈川県警察特別機動隊員の3名が殉職した「東峰十字路事件」をきっかけに雰囲気が一変してしまい泥沼と化す様子は、その後のシリーズを観ることで明らかになる。
今回公開された26分版の『三里塚』は1971年10月1日に22歳で自殺した青年行動隊員の三ノ宮文男に関する記憶を巡りながら現在の三里塚を映し出す。とりあえず阿部芙蓉美の歌唱による岡林信康の「私たちの望むものは」で閉められた本作のレビューはまた機会を改めてしようと思うが、小川紳介という‘ハードル’が相当高いことは間違いなく、ただのノスタルジーで終わってしまうことがないように祈るだけである。