長ぐつをはいたネコ
2011年/アメリカ
‘金の卵型のスーツ’について
総合
70点
ストーリー
0点
キャスト
0点
演出
0点
ビジュアル
0点
音楽
0点
ヨーロッパに伝わる民話である『長靴をはいた猫』を中心に、水を汲みに丘に登ったが、2人とも丘から転げ落ちてしまったというイギリスの伝承童謡である『ジャックとジル(Jack and Jill)』と、同じくイギリスの童話である『ジャックと豆の木』(Jack and the Beanstalk)に、イギリスのマザーグースの童謡に登場するキャラクターであるハンプティ・ダンプティ(Humpty Dumpty)とイソップ物語の金の卵を産むがちょう(Golden Goose)も取り入れたストーリーの組み立ては良くできているのであるが、詰めが甘いように感じる。
例えば、クライマックスにおいて主人公のプスは崩壊した橋を左手で掴みながら、右手でハンプティ・ダンプティが掴まっているロープを握っている。街を救うためにハンプティ・ダンプティがロープから手を離した時にプスはそのロープを手放してしまっているのであるが、両手で橋を掴むわけでもなく、まるでプスもハンプティ・ダンプティを落とそうと意図していたように見えてしまう。このような細部が丁寧に描かれているかどうかが演出のクオリティーの目安になるのである。
敢えて細かいことを気にしないようにするとしても、ハンプティ・ダンプティが身につける‘金の卵型のスーツ(Golden Egg Suit)’の役割がブレているように感じる。橋から墜落したハンプティ・ダンプティは殻が割れて彼自身が金の卵になったように見えたが、ラストショットでハンプティ・ダンプティは再び‘金の卵型のスーツ’を身につけていた。これでは金の卵が善意を表す比喩とはならず、‘金の卵型のスーツ’で‘良い人’を装っていたハンプティ・ダンプティが‘本物の金の卵’になったという、子供にも分かりやすい隠喩が活きてこないと思う。
予告編で使用されていた楽曲であるPitbullの「I Know You Want Me」が本編で使われていなかったことは残念だった。
吉本隆明氏、死去 評論家、87歳「共同幻想論」など(産経新聞) - goo ニュース
吉本隆明の死去の報道が大きいことに、もしかしたら吉本隆明とは吉本興業の創業者
なのかと勘違いしている若者がいるらしいが、だからと言って残念なことに正確に吉本隆明
が何者なのか説明するだけの知性を持ち合わせていないから、引用でごまかすしかない。
「この世で、『ただの人』が一番偉いということをいった人」「暗い人間でも、暗いなりに自分を
開いて、自分の頭で考え、自分の手で仕事をして、本気で生きて行くなら、それが一番尊い
ことなんだ、たとえ思い通りにならなくても、その場で力を尽くせばいい、ということをいった
人が吉本さんなんだ」「吉本隆明は、世界の一切を認識して見せるといわんばかりの自信と
覚悟で、多様な分野において研鑽につぐ研鑽を自らに課し、独力で考えに考え、書きに書き
つづけた。思念の高さと広さと深さは稀有だが、そうでありながら、存在の仕方としては、
あくまでもひとりの『ただの人』という場所からテコでも動かない。そのような在り方を見せた
人間はひとり吉本以外にはありえなかったのである。知識人と『ただの人』を垂直に貫く
その直立性こそが吉本隆明である」(『最後の吉本隆明』 勢古浩爾著 p.216-217)