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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「失踪.com 東京ロンダリング」原田ひ香

2016年11月14日 21時22分57秒 | 読書(小説/日本)


「失踪.com 東京ロンダリング」原田ひ香

これはおもしろかった。
ひとつひとつの章が、独立した短編のようになっている。
登場人物の感情が丁寧に描かれていてレベルが高い。
通して読むと、それぞれの章に繋がりが出て来るのが解る。
ミステリ仕立ての趣向になっている。

妻から離婚を告げられる夫…この科白は怖い!
P97
「あなたから取れるものは、すべてしぼりとるつもり。ケツの毛一本だって逃がさない。一生、私たちに尽くすのよ。かりんとも会わせない。無駄遣いしないようにね。再婚なんてできないようにしてやる。覚悟しておいた方がいい」

P137
「若い人は二言目にはプライバシー、プライバシーって言うけど、プライバシーじゃ飯食えないんだから。プライバシーを飛び越えて、できたつながりとか、関係だからこそ、お互い面倒も見るし、迷惑と感じないようになるんだよ。(後略)」

本作品は「東京ロンダリング」の続編であるが、前作を読んでいなくても、十分楽しめる。
(もちろん、読んでいたら、より楽しめる)
久しぶりに、原田ひ香作品を読んだが、進化していた。
嬉しい驚きである。
他の作品も読んでみようと、って気になった。

「東京ロンダリング」原田ひ香

【ネット上の紹介】
事故物件に住み部屋をロンダリング(浄化)する人材を斡旋する相場不動産。ある時から、なぜかその関係者が次々と相場不動産を離れていく。背後に妨害工作の動きを察知し、調査を始めた仙道は、とある事実を突き止める。相場と共に、巨大勢力と戦おうと立ち上がった仙道が決断したこととは…。 


「子育てはもう卒業します」垣谷美雨

2016年11月06日 08時37分08秒 | 読書(小説/日本)


「子育てはもう卒業します」垣谷美雨

3人の女性を対比しながら、それぞれの成長を描いている。
大学生の時に彼女たちは出会う。
その後、就職、結婚、出産、さらに、子どもの受験と就職。
それぞれのポイントで悩みながら、生きていく。
これでいいのだろうか、これで良かったのか。
いかに子離れし、子どもは親離れするのか。
垣谷美雨作品の中でも、上位の面白さ、と思う。

1981年、就職
P85
就職課の壁の前で、私は呆然と立ち尽くていた。
自宅通勤に限る?
それ、どういうこと?
(中略)
いったい、なんなの。
田舎から出てきた女子はどうすりゃいいの?
田舎モンを馬鹿にしているの?

P147
「人間っていうのは、誰しも話せばわかるものよ」
「もちろん、それはわかっている」
 なんと単純なヤツ。
 話せばわかるなんて、本気で信じているのか、我が夫よ。
 あんな常識外れの両親や義姉たちとうまくやっていける嫁なんて、この世の中にいないよ。

P182
 どんな集まりでも派閥ができて序列ができる。女ばかりの気楽な飲み会やカラオケに魅力を感じないではなかったが、新たなストレスの種になる予感がした。それに、そういうグループはいったん入ると抜けるのが困難だ。

【ネット上の紹介】
「いくつになっても心配だけど、遠くから見守るしかないよね」 母親業に終わりはない。だけど、“子供のために生きる私”のままでいいの? 注目作家が、親離れ・子離れを等身大で描く書下ろし長編小説 教育費を捻出するため夫の両親と同居するお受験ママの「淳子(Junko)」 娘には一生続けられる仕事に就(つ)いてと願う専業主婦の「明美(Akemi)」 親の猛反対を押し切り結婚したことを後悔するお嬢様育ちの「紫(Yukari)」 就職、結婚、出産、子育て、嫁姑、実家との確執、職場復帰…… 故郷を離れた18歳から40年、3人は悩みを語り合ってきた。時には口に出せない痛みを抱えながら─── 


「坂の途中の家」角田光代

2016年11月04日 21時55分28秒 | 読書(小説/日本)


「坂の途中の家」角田光代

里沙子は刑事事件の裁判員の通知を受ける。
事件の内容は、幼児虐待で、母親による子殺し。
裁判の進行とともに、彼女は被告の母親の心に寄り添って考えてしまう。
里沙子も、まもなく3歳になる女の子の母親だから。
わが子を殺した母親は、自分だったかもしれない。
そんな思いが、裁判の進行と共に増幅していく。
子供への苛立ち、子育ての悩み。
その中で、夫や義母と折り合いが悪くなっていく。
感情のすれ違いの描き方が絶妙に巧い。

P350
なんであんなことを言ったのだろうと、里沙子は後悔する。六実の夫のように、心配してほしかったのだとこの段になって気づく。心理的に多大な負担を引き受けている、私もそのように社会に参加していると、分かってほしかっただけだ。言ってほしい言葉があるとするなら、本当にたいへんだよな、その程度のことだ。なのに、いつもおかしな方向に話が着地する。それとも、私が何か求めすぎているのだろうか。求めながら、言葉にすることもしないで、わかってくれと要求しているだけなのか。

P418
閉廷が告げられる。里沙子は自分が泣いていることに気づいてあわててハンカチを取り出す。白いワンピースの女が目の前を通り過ぎていく。たった十日間かかわった、私でない女。いや、違う、もうひとりの私。自分で自分の人生をコントロールし損なった私。母親として生き抜くことができなかった私。

テーマがテーマだけに、読んでいて楽しくない。
しかし、気になる内容なので読んだ。
それにしても、角田光代さんて、これほど筆力があったのか、と驚いた。
昔、読んだときは、さほど感情表現が巧くなかったように思う。
心理描写に深みが出た。
未読の作品で気になるものを読んでみようと思う。 
(この作品を図書館で借りるのに、だいぶ順番待ちをした。世間で評判になっていて人気なんでしょうね)

【ネット上の紹介】
刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇にみずからを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの心と闇に迫る心理サスペンス。 


「ニュータウンは黄昏れて」垣谷美雨

2016年10月27日 21時29分46秒 | 読書(小説/日本)


「ニュータウンは黄昏れて」垣谷美雨

ニュータウンを舞台にした、社会派エンタメ作品。
失踪した友人はどうなったのか?
最後は英国にも舞台は移動する。
文章を紹介するが、最後の文はネタバレありなので、ご注意下さい。

P32
老人たちは、車の運転はなかなかやめないが、自転車に乗るのは早々にあきらめるらしい。

P113
女性は歳を重ねると、顔の造作そのものよりも髪型や服装や姿勢や太り具合などに美醜が大きく左右されるように思う。

P154
家を買うというのは難しい。それというのも慣れていないからだ。

P255
大人の男性――自分をぐいぐい引っ張っていってくれる頼れる存在――とつきあうと、そのオマケとして漏れなく我慢がついてくる。

P485
「私たち、これからも友だちでいようね」
「それは無理だと思う」
(中略)
「三起子、別にそんなに悲しむことじゃないと思うよ。子供の頃に仲良しでも、それぞれ違う環境で育って大人になれば考え方も生き方も変わっていくでしょ。新しい出会いがあって新しい友だちができる。それでいいじゃない」
「そんな……」
 悲しそうな顔で見つめてくる。
「じゃあ、元気でね」
(この潔さは素晴らしい。でも、実際は難しい。なんとなく疎遠になるのがフツーでしょうね。一般に、出会うより別れる方が時間と労力を必要とする)

あとがきを読むと、著者は多摩ニュータウンに住んでいたそうだ。
32歳の時、分譲団地の4LDKを5200万円で購入。
当時の金利は7%。
住宅ローン、集会の役員人事や会議の様子が非常にリアル。

【ネット上の紹介】
バブル崩壊前夜に買ってしまった分譲団地。20年近く経つ今もローンを抱え、織部頼子は節約に必死だ。その上、老朽化による建替え問題に振り回される日々。一方、娘の琴里は27歳フリーター。ある日、友人の三起子にイケメン資産家の彼氏を紹介される。が、彼女は失踪し、いつしか琴里が彼と婚約することに。織部家、まさかの人生大逆転?!一気読み必至の傑作社会派エンタメ長編。 


「農ガール、農ライフ」垣谷美雨

2016年10月20日 21時48分05秒 | 読書(小説/日本)


「農ガール、農ライフ」垣谷美雨

派遣切りにあい、失業した久美子。
追い打ちをかけるように、同棲相手からも別れを告げられる。
心機一転、農業を始めようと、田舎に引っ越し、農業大学校に入学。
いったい、どうなるのか?

P77
講師の説明によると、新規就農者であっても、ひとりで五反は作れるということだった。一反は300坪もある。それなのに、いま目の前に割り当てられた20坪さえ広く感じてしまう。

P118
「男女平等が謳われるようになってから真っ先に変わったのは、実は男性なのよ。女性を守るという最低限の気遣いを一切しなくなったわ」

田舎の婚活パーティに参加する。
P156
「男女の出会いの場では、視覚から得る情報が最も大切なんです。女性に求められるのは、清潔感、笑顔、女らしい雰囲気、その三つです。ブランド物のバッグや華美な服装はNGです。男性が引いてしまいますからね」

P251
――結婚式で新婦が言うじゃん。「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも」とかなんとかゴチャゴチャと。静代ちゃんが言うにはね、あの中で重要なのは、病めるときと貧しいときなんだってよ。つまりね、人生最悪の事態に陥ったときの保険がないと誰だって安心して生きられないよっていう意味なんだってさ。

垣谷美雨作品らしく、感情移入しやすい登場人物たち、テンポの良い展開。
農村の実情も分かって、そうなのか、って感じで楽しめる。
エンターテインメントなので、きちんと落とし処に落としてくれる。

【おまけ】
タイトルから連想するのは、ことわざ「no pain no gain」。
――労なくして得るものなし。
ガールなくして、ライフなし、
農ガールなしで、農業の未来はない…と。

もうひとつ思い出した。
No Woman, No Cry」
そうなると、意味が違ってくる。

【参考作品】
幻冬舎文庫<br> 七十歳死亡法案、可決 




【ネット上の紹介】
「結婚を考えている彼女ができたから、部屋から出て行ってくれ」派遣ギリに遭った日、32歳の水沢久美子は同棲相手から突然別れを切り出された。5年前、プロポーズを断ったのは自分だったのに。仕事と彼氏と家を失った久美子は、偶然目にした「農業女子特集」というTV番組に釘付けになった。自力で耕した畑から採れた作物で生きる同世代の輝く笑顔。―農業だ!さっそく田舎に引っ越し農業大学校に入学、野菜作りのノウハウを習得した久美子は、希望に満ちた農村ライフが待っていると信じていたのだが…。 


「七十歳死亡法案、可決 」垣谷美雨

2016年10月11日 21時33分54秒 | 読書(小説/日本)

幻冬舎文庫<br> 七十歳死亡法案、可決 
「七十歳死亡法案、可決 」垣谷美雨

年々、表現が巧みになっている気がする。
特に、極端な設定をして、物語を紡ぎ出すのが巧い。
今回も、思った以上に楽しめた。

P9
果たして、長寿は人類に幸福をもたらしたであろうか。
本来なら喜ばしいはずの長寿が、国の財政を圧迫する原因となっただけでなく、介護する家族の人生を台無しにするような側面があることは今や誰も否めない。

P295
いるいる、こういう男性。
――女のくせに生意気だ。
こう思われたら最後、好々爺がセクハラ男に変わる。こういう男性に限って、自分が尊敬されているかどうか、馬鹿にされていないかどうかを始終気にしているから始末に負えない。

【参考リンク】
 垣谷美雨インタビュー&メッセージ


【ネット上の紹介】
高齢者が国民の三割を超え、破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法案」を強行採決。施行まで二年、宝田東洋子は喜びを噛み締めていた。我侭放題の義母の介護に追われた十五年間。能天気な夫、引きこもりの息子、無関心な娘とみな勝手ばかり。やっとお義母さんが死んでくれる。東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。すぐそこに迫る現実を描く衝撃作!


「ブロッケンの悪魔 南アルプス山岳救助隊K-9」樋口明雄

2016年09月28日 20時26分21秒 | 読書(小説/日本)


「ブロッケンの悪魔 南アルプス山岳救助隊K-9」樋口明雄

シリーズ3作目。
趣向が変わった。
今まで、味わい深いけど地味、という印象だったが、「冒険活劇」になった。
今回は、テロリストとの闘い。

登山シーズンが終わった9月。
山岳救助隊・星野夏実は、不審な登山者を見かける。
一般の登山者と比べて、異質な雰囲気を放っている。
広河原にアプローチする3つの道路は爆破される。
北岳山荘は占拠され、台風が近づき、陸の孤島となる。
こうして、山岳救助隊VSテロリストの闘いが始まる。

【ネット上の紹介】
9月の半ば、山梨県警南アルプス署地域課山岳救助隊は登山シーズンを乗り切り、救助の技術を磨くため訓練の日々を送っていた。救助隊員の星野夏実巡査は、移動中、何度か不審な登山者たちを見かける。無言で苦行僧のように厳めしい顔、ふつうの登山者みたいな恰好をしてい るが、体格ががっしりしていて隙がなく、ただ者ではない眼つきをしている。その登山者のひとり・元自衛隊員の鷲尾は、国家に見殺しにされた息子(福島原発 で)と部下(海外派遣で)の復讐のために、恐るべき計画を立てていた。一方、その頃、総理執務室では総理大臣をはじめ警察関係・内閣関連のトップたちが集まっていた。5日前、さいたま市の自衛隊施設から最強の毒ガス兵器「VXガス」が盗まれたのだ。単純計算で七十万人以上の致死量に相当するという――。そしてテロリストからの要求が……。爆破によって三つの林道が閉ざされたことによって、北岳は陸の孤島になった。不審な登山者たちの突然の発砲により北岳にある山荘にいた人々は、監禁され人質となった。おなじみ、星野夏実巡査と相棒の救助犬・メイ、神埼静奈巡査とバロン、松戸楓一郎も大活躍!北岳を戦場に、絶体絶命の闘いが始まる。


「ハルカの空 南アルプス山岳救助隊K-9」樋口明雄

2016年09月27日 20時11分33秒 | 読書(小説/日本)


「ハルカの空 南アルプス山岳救助隊K-9」樋口明雄


シリーズ2作目。
「天空の犬」の続編。
こちらも、以前読んだ作品を再読。→「ハルカの空 南アルプス山岳救助隊K-9」樋口明雄
文庫用の書き下ろし短編「ビバーク」も収録されている。

【ネット上の紹介】
軽装で山の中を駆け巡るトレイルラン。自信に満ち溢れた走りをする大学生。小さな気の迷いが大きな事故に――「ランナーズハイ」。山小屋でバイトをはじめた女子大生は、マナー違反の登山客に愕然。しかしそこは“命”を預かる場所でもあった――「ハルカの空」。登山で妻を亡くし、すっかり抜け殻となってしまった男。かつて山岳救助隊に救われた過去が――「孤高の氷壁」。汗光り涙伝う、犬とともにある本格山岳小説全5篇。特別書下し短篇も収録。


「向田理髪店 」奥田英朗

2016年09月18日 08時32分24秒 | 読書(小説/日本)

向田理髪店 
「向田理髪店 」奥田英朗

奥田英朗さんの新刊。
北海道の小さな町で起こる様々な出来事。
かつて炭鉱の町として栄えたが、今は過疎で年寄りばかり。
理髪店、ガソリンスタンド、役所、農協のオヤジたちが繰り広げる人間模様。

P86
「女の方が平均寿命が長いって、神さまの配剤のなかじゃかなりのヒットなんじゃないの。あななたち、奥さんに先立たれたどうしていいかわからないでしょう」

P235
「母親は息子を残して自殺なんかしないの。母親は何があろうと、最後まで息子を信じて庇うものなの。だから秀平君が出て来るか、逮捕されるのをじっと待っている。過去の事件を見たって、息子の犯罪に責任を感じて自殺するのはみんな父親でしょ。母親は死なないの」

【誤植】
P40
どうぜ気障で口だけ達者なハッタリ屋が
 ↓
どうせ気障で口だけ達者なハッタリ屋が

【ネット上の紹介】
札幌で就職した息子がわずか一年で帰郷。理髪店を継ぐと言い出した。幼馴染の老父が突然倒れた。残された奥さんは大丈夫? 異国の花嫁がやって来た。町民大歓迎。だが新郎はお披露目を避け続ける。なぜ? 町に久々のスナック新規開店。妖艶なママにオヤジ連中、そわそわ。映画のロケ地になり、全町民大興奮。だけどだんだん町の雰囲気が……。地元出身の若者が全国指名手配犯に! まさか、あのいい子が……。


「エチュード春一番 第2曲 三日月のボレロ」荻原規子

2016年09月16日 21時01分44秒 | 読書(小説/日本)


「エチュード春一番 第2曲 三日月のボレロ」荻原規子

「エチュード春一番 第2曲 三日月のボレロ」を再読した。

P292
「今回、美綾がどういう人か、本当はあまりわかっていなかったって、しみじみ考えちゃったよ。何年会っていても気付かないことって、たくさんあるものだね」
(中略)
「美綾の周りには、かなり変わった人が多いんだと思ったの。S女では思ってもみなかったよ、でも、美綾の何かが変わった人たちを惹きつけるってことだよね。狭い場所から出て大学へ行ったら、美綾のそういう面が伸びるんだなと思ったというか」

今回、このシリーズの隠れたテーマを垣間見た気がする。

また、もう一つ分かった事がある。
本シリーズが、「逆・源氏」になっている点、である。
「源氏物語」は、ご存じのように好色男が、さまざまなタイプの女性を攻略していく話。
「エチュード」は、言い寄る男を、次々に袖にしていく。
タイトルの「エチュード」、ってそういう意味だったのか。
次回、美綾がどんな男を振るか楽しみだ。


「狩猟家族」篠原悠希

2016年09月01日 20時36分20秒 | 読書(小説/日本)


「狩猟家族」篠原悠希

ニュージーランドが舞台。
現地でトレッキング中に、道に迷う。
たまたま出会ったのが、現地で狩猟生活を営む一家。
お父さんと二人の娘、三人で生活している。
こうして、その一家と関わりながらファーム・ステイすることとなる。

P22
ニュージーランドでは、親がライセンスを所有していれば、何歳からでも射撃や狩猟を始められるとアンディは語った

P54
日本人が会話の最中に頭を下げる仕草が、現地の人間にとっては笑いのツボになるということを、遼平はあとになって知った。

日本人から見れば、狩猟生活なんて想像もできない。
興味深い内容で、とても楽しめた。

【おまけ】
この一家の母は日本人。
ニュージーランドは親日家の方が多い印象を持っている。
実際、日本人妻の白人は多い(と思う)。
私も2か所の宿泊施設に泊まったが、両方とも奥さんが日本人だった。

海外に出かける日本人女性にとって、「外人」、ってだけでアドバンテージがある。
ワーホリで滞在する日本人女性は多い。
彼らは、日本人女性=従順、のイメージを持っている。
日本人男性と違って、彼らは愛情表現をストレートに出す。
くらっ、とくるのかもね。
こうしてニュージーランド男性+日本人女性のカップルは成立する。
(以上、私の分析)

【ネット上の紹介】
大学四年生の武島遼平は、卒業旅行として、ニュージーランド南島を訪れた。現地でトレッキング中に道に迷った遼平は、銃を抱えた中学生ぐらいの少女と、その父親に出会う。農場の飼料畑を食い荒らす野生化したウサギや山羊、ポッサムを狩りながら暮らしている彼らの生活は、遼平にとって、想像もつかないほど自由で、過酷で、逞しいものだった―高峰に抱かれ、荒々しくも美しい自然のなか、生き物の命が身近に感じられた。爽やかな読後感が胸に迫る傑作。 


第155回芥川賞・直木賞

2016年08月01日 21時13分04秒 | 読書(小説/日本)

第155回芥川賞・直木賞受賞作が発表されたが、インタビュー記事を収録しておく。
「海の見える理髪店」 荻原浩
「コンビニ人間」村田沙耶香


「モップの精は旅に出る」近藤史恵

2016年07月27日 21時04分06秒 | 読書(小説/日本)


「モップの精は旅に出る」近藤史恵

シリーズ最新刊にして、最終巻。
何年かに1冊ずつ、ぽつりぽつりと出版された、息の長いシリーズ。
これで最後かと思うと、寂しいかぎり。

P175
「ときどき、思うんです。男の人と女の人って、見える世界が全然違うんだなって」

P233
「菜々ちゃんはよく言ってた。部屋をきれいにしてたら大丈夫って。片付けたり、掃除したりすると、頭の中も片付いて、きれいになるんだって。わたしもずっとそうなんだと思ってた」
(中略)
「でも、なんかもういやになっちゃった。掃除したって、結局は汚れるし、散らかるんだもの」

【参考リンク】
掃除人・キリコシリーズ

【シリーズ作品】



【ネット上の紹介】
フィスで起きた怪事件も、仕事の悩みもクリーンに解決。そんなキュートな清掃人・キリコが目的地も告げず家を出た…!?おそうじ上手、謎解き上手。読めば元気になれる大人気ミステリ最新刊!
 


「エチュード春一番 第2曲 三日月のボレロ」荻原規子

2016年07月25日 21時18分38秒 | 読書(小説/日本)


「エチュード春一番 第2曲 三日月のボレロ」荻原規子

シリーズ2巻目。
1作目から半年で早くも続巻!
うれしい驚きである。

夏休みの出来事が中心に描かれる。
親戚の家に泊まりにいく。
そこで、特殊な能力を持った神官の娘・弓月とその仲間に出会う。
意外な展開であった。
こんなふうに、物語が動くとは思わなかった。
宗教や歴史の蘊蓄も楽しめる。
以下、ネタバレあり、未読の方ご注意。

前回との共通登場人物は、村松愛里と獣医・川森先生。
川森先生が活躍して、一番いいとこを取ってしまった。
さて、今後人気が出るか?

モノクロの3D映像技術だが、あまり役に立たない。
他の者に見えないし、物理的なパワーを持たないから。
今回では、犯人を怯ませるくらいの何かが欲しかった。
美綾自身も非力なので、結局、他力本願になる。
今後進化するか?
拝殿
武蔵一宮 氷川神社

【参考リンク】 
「エチュード春一番 第1曲」荻原規子

【閑話休題】
今回も7/19(火曜)、という中途半端な発売日。
週末まで待てないので、週半ばに書店まで足を運んだ。
(これは、現在の私にとって大変な時間と労力を要する作業)
それでも、早く読みたい気持ちには勝てない。

【ネット上の紹介】
パピヨンの姿をした八百万の神・モノクロと暮らして四ヵ月。祖母の家に帰省した美綾は、自身の才能や適性を見出せず、焦燥感を抱いていた。東京へ戻る直前、美綾は神官の娘・門宮弓月の誘いで夜の氷川神社を訪れ、境内で光る蛇のビジョンを見る。それは神気だとモノクロは言う。美綾を「能力者」と認識した「視える」男、飛葉周は彼女につきまとい、仲間になるよう迫る。 


「負の方程式」宮部みゆき

2016年07月24日 10時08分34秒 | 読書(小説/日本)

新潮文庫<br> ソロモンの偽証〈第3部〉法廷〈下〉 
「負の方程式」宮部みゆき

以前、「ソロモンの偽証」を紹介した。→「ソロモンの偽証」宮部みゆき
文庫版「ソロモンの偽証」第3部〔下巻〕に「負の方程式」が収録されている。
20年後の“偽証”事件を描く、書き下ろし中編である。

本作品は、映画化された。
さらに、今年5月20日に「前篇」、27日に「後篇」が、TV放映された。
それを録画しておいて、つい先日観た。
思った以上に、よく出来ていて感心した。
その時、少し調べて、本作「負の方程式」があることを知った。
藤野涼子の20年後の姿が描かれる。
しかも、別シリーズの杉村三郎が登場する。
これを読まずにいられるだろうか?

P641
最初から反りが合わず、嫌い合っている関係より、一度は親しい時期があってから離反した場合の方が、感情の振幅が大きい分だけ、相手を害してやろうという負のエネルギーも強くなるのではないか。

P574
負の方程式だと、私は思った。教師と生徒、教える側と教わる側、導く側と導かれる側、圧する側と圧される側の組み合わせが間違っていて、だからどんな数字を入れたところで、マイナスの数字ばかりが出てくる。