「錦の松 着物始末暦」(6)中島要
シリーズ6作目。
ついに物語は動き出した。
余一が、お糸に過去を打ち明けたのだ。
シリーズをここまで読んで来た方なら、
読まずにいられないでしょう。
次の4篇が収録されている。
赤い闇
なかぬ蛍
錦の松
糸の先
桐屋の娘で、今は綾太郎の妻となったお玉が良い味を出している。
お玉とおみつのおかげで、物語に深みが出ている。
【ネット上の紹介】
一膳飯屋の看板娘・お糸は悩んでいた。長年、自分が想いを寄せている着物の始末を生業とする職人・余一にはきっぱりと振られてしまった一方で、浅草田原町にある紙問屋の若旦那・礼治郎からは嫁にきてほしいと言われたからだ。想い人を忘れることが出来ず、悶心とした毎日を過ごすお糸の姿をみて、長屋に住む達平が強引にお糸を余一のもとに連れて行った。余一はそこで自分の壮絶な過去を打ち明け、お糸とは夫婦になれない理由を告げる…。果たして二人の恋の行方は!?話題沸騰の大人気シリーズ、待望の大六弾!!
「夢も定かに」澤田瞳子
奈良時代の宮廷が舞台。
そこで働く女官たちの生活と仕事に焦点を当てた作品。
藤原氏と長屋王の対立を背景に、生き生きと描写される。
P8
氏女――とは後宮に勤務する、畿内豪族の娘。これに対し、幾外諸国の郡司の子女は采女と呼ばれ、ともに一族の期待を担って働く下級女官であった。
氏女・采女のほとんどは出仕から5、6年もすれば後宮を退き、官吏の妻になったり故郷に戻ったりする。しかし中には十年、二十年と仕事を続け、叩き上げの女性官吏となる者もおり、諸姉などはまさに後者の代表であった。
P251
あたしは男ってのは、物事をそんなあっさり割り切れない生き物だと思っているの。
P252
男は大なり小なりみな、女子に頼って欲しいと思っている。自分にそれだけの価値があり、何事も成し遂げられると自惚れているからだ。さりながら女は自らの立場を弁え、相手にかような甘さを見せられぬと自戒するゆえに男女の仲はすれ違う。(このあたり、著者の男性観が感じられて興味深い)
P256
しかしこの華やかな後宮のただ中で、夢も定かに見られぬ身だからこそなお、自分たちは各々の生き方を全うするため、足掻き続けずにおられぬ。いつか夢を掴むその時まで。(これがタイトルの由来)
【感想】
とても面白かった。
もっと評判になって、読まれて良い作品、と思う。
現在の価値観を元に描かれているので、非常に親しみやすく、読みやすい。
当時の生活がリアルに感じられるのはいいことだと思う。
しかし、1000年以上前の奈良時代の話。
現在とは異なる価値観、行動原理、風俗習慣をもっと出しても良かったように思う。
例えば、春世が太らないようダイエットを意識するのには引っ掛かりを感じる。
ライトノベルなら、これで100点というか、それ以上の完成度。
でも、歴史小説なら、「違和感」を少し感じさせてほしかった。
(親しみやすさと違和感の両立・・・私は無茶な欲求をしているのかもしれない)
【ネット上の紹介】
郷里を離れ、天皇の身の回りの世話をする采女としてやってきた若子。同室にはしっかり者の笠女、数々の男性と浮き名を流す春世がいた。器量は十人並み、何事につけても不器用、優柔不断な若子も、次第に宮廷内で生き抜く術を身につけていく。だが藤原一族の勢力が伸張しつつある時代にあって、若子も政争に巻き込まれ…。
「泣くな道真」澤田瞳子
左遷された、その後の菅原道真を描いた作品。
小野小町も登場し、物語も華やかになる。
太宰府の様子、役所の仕事が当時の情勢と供に描写され興味深い。
P23
課丁と口分田が不足すれば、律令経済は成り立たぬ。このためいまや財政は地方・中央ともに火の車。相次ぐ飢饉・災害に喘いだ公民が次々と故郷を捨て、権門勢家や殷富百姓ばかりが肥え太る矛盾が、諸国を覆い尽くしていた。
【ネット上の紹介】
右大臣だった菅原道真が大宰府へ左遷された。悲憤慷慨する彼にお相手役の保積もお手上げ。そこへ美貌の歌人恬子が現れ、博多津の唐物商へ誘う。道真は、書画骨董の目利きの才を発揮し、生気を取り戻す。その頃、朝廷に出す書類に不正が発覚し、府庁は窮地に。事態を知った道真は、自ら奇策を…。朝廷を欺き、意趣返しなるか!日本史上最も有名な左遷された男の活躍をユーモアのなかに描く歴史小説。
「もか吉、ボランティア犬になる。」江川紹子
溝に捨てられていた山犬。
拾って育てられ、ボランティア犬となる。
その軌跡をおったノンフィクション。
P40
PPPプログラム(ペット-ピープル・パートナーシップ)は、人間と動物との関係やペットの扱い方について研究し、それを応用して動物を介在させるセラピー教育を実践します。
P41
犬や猫と触れあうと、それまであまり表情がなかったお年寄りの顔にも笑みが広がりました。言葉での意思疎通が難しい人でも、動物をきっかけに昔話がはずむこともありました。
P122
「一人でできることって、何もない。『お願いね』『助けてね』と言える人間関係を作るのが大事。人と動物の関係はもちろん大事だけど、まず人と人との関係だな、っておもいます」
【ネット上の紹介】
山犬の群れで生まれ、人嫌いだった子犬が人に寄り添う、ボランティア犬へと成長した4年間の軌跡。ノンフィクション作家・江川紹子がつづる和歌山発、感動のドキュメンタリー!
[目次]
第1章 側溝で保護した、子犬がやってきた
第2章 病気とのたたかいと、人嫌い
第3章 人に寄り添う、ボランティア犬に
第4章 動物愛護教室「わうくらす」でのふれ合い
第5章 それからも、山あり谷あり
第6章 地域に広がる様々な活動
第7章 家族の愛犬から、みんなの愛犬へ
第8章 防犯パトロール犬隊が出発!
「月になったナミばあちゃん」國森康弘/写真・文
先日紹介した「「恋ちゃんはじめての看取り」と同シリーズ。
滋賀県・君ケ畑という集落が舞台。
田舎では、まだまだ濃厚な人間関係が残っている。
良い悪いはともかく、困った時の手助けがありがたい。
【ネット上の紹介】
滋賀県の東の端にある君ケ畑という集落には、おじいちゃん、おばあちゃんがおおぜい暮らしています。ご近所さんやお医者さん、看護師さん、ヘルパーさんたちがかわるがわる訪問してくれます。それも、これも、おたがいさま。助け、助けられ…。そうやってふるさとで過ごし、やがて看取られていきます。看取りって?大切な人が息を引き取るその「旅立ち」のとき、そばに寄りそい、感謝と別れを交わすことです。ひとり暮らしの89歳、ナミばあちゃんも家族や地域の人たちに囲まれ、あたたかな看取りで旅立ったひとりでした。
「関越えの夜 東海道浮世がたり」澤田瞳子
思った以上によかった。
複雑な感情を呼び起こす短編集。
サブタイトルにあるように、東海道を行き交う人びとの話。
それぞれの話がリンクしている。
バタフライ効果という用語があるが、ひとつのエピソードが、次の話に波及していく。
場所も東海道をどんどん西に向かい、最後は京都で終了する。
だから、最終話は京都弁で進行する。
P217
有夫の婦と通じること――すなわち密通は重罪。官吏に捕縛されれば、男女ともに死罪が定めである。だだしこれはあくまで表向きで、悪評を避けたい大店や武家では、密通が明らかになっても内済で決着をつけるのがほとんどであった。
この内済禁は金一枚、つまり七両二分が相場とされ、「間男七両二分」なる言葉が一般化していたほどである。
いずれの世も、人間のすることは同じ、か?
死罪であった江戸時代でさえ、このような状態だったのか・・・。
箍のゆるんだ現代なら、不倫が横行するのも諾なるかな。
P308
「何か用どしたらはっきりお言いやす。別に、気ぃ悪くしまへんさかい」
明らかな険を言葉尻に感じとったのか、土間で働く、小僧たちが横目でこちらをうかがっている。しかしそれすら目に入らぬほど、お初の心は波だっていた。
(この辺り、京言葉による表現が巧い・・・でも、私だったら『気ぃ悪ぅしまへんさかい』と表記するかも)
【ネット上の紹介】
両親と兄弟を流行り風邪で亡くし、叔母に育てられている十歳の少女・おさき。箱根山を登る旅人の荷物持ちで生計を立てている彼女は、ここ数日、幾度も見かける若侍が気になっていた。旅人はおおむね、道を急ぐもの。おさきの視線に気づいた若侍は来島主税と名乗る。人探しのため西に赴く途中だというが…(表題作)。東海道を行き交う人びとの悲喜こもごもを清冽な筆致で描く連作集。
「恋ちゃんはじめての看取り」國森康弘/写真・文
こんな本があるのか、と驚いた。
子ども向け、『看取り』写真絵本。
2012年 第22回 けんぶち絵本の里大賞受賞。
ばあちゃんの看取りを、恋ちゃんの立場から絵本にしている。
最前列の少女たちは、正座している
写真なので、とてもリアル。
【ネット上の紹介」
琵琶湖の東側に開けた滋賀県東近江市。その山沿いにある甲津畑という集落に、小学5年の恋ちゃんが、大好きなおおばあちゃん、竹子さんと住んでいました。おおばあちゃんは92歳。90歳を過ぎても毎日のように畑仕事をしてきたおおばあちゃんも、急にからだが弱くなり、一週間ほど前からはふとんから出られなくなってしまいました。元気になってほしいと恋ちゃんは毎日おおばあちゃんの手をにぎり、うれしかったこと、悲しかったこと、いろんなことを話しかけました。もっと、もっといっしょにいたかったけど…。
「あきない世傳金と銀 源流篇」高田郁
高田郁さんの新シリーズ。
前回は「料理」だったが、今回は「商い」である。
時代は享保期、不況のまっただ中。
そのあたり、景気低迷している現代に通じる設定になっている。
以下、ネタバレありなので、未読の方ご注意。
ヒロインは幸。
学者の子で摂津の津門(つと)村に生まれる。
(この地名は現在も西宮に存在する。ちなみに尼崎と西宮の境界を流れるのが武庫川)
幸は、七夕の願いに『知恵』を授かりたいと書いた。
しかし、いくつもの不幸が重なり一家離散。
本も読めなくなり、勉強も続けられなくなる。
幸は天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出される。
P118
「袖口の火事」で「手が出せぬ」
「赤子の行水」で「盥で泣いてる」、つまり「(銭が)足らいで泣いてる」
「饂飩屋の鎌」で「湯ぅばっかり」、つまり「言うばっかり」
治兵衛からそんな例を教えられて、幸は声を立てて笑う。津門村ではついぞ聞かない言い回しだった。
小さな女衆が笑い転げる様子を、治兵衛はにこやかに眺めたあと、
「大坂は商いの街だす。尖ったことも丸うに伝える。言いにくいことかて、笑いで包んで相手に渡す。そうやって日日を過ごすんだす」
P150
「五鈴屋はどうやら、とんでもない拾いものをしたようだすな。お前はん、ひょっとしたら大化けするかも知れん」
P278
「何処ぞに、徳兵衛の手綱をしっかり握り、商いにも知恵を貸せるような、この五鈴屋の暖簾を守り、商いを広げてくれるような、そんな娘は居てへんやろか」
とても面白かった。
今回のシリーズも期待できる。
次作を楽しみに待っている。
【おまけ】
菊栄のキャラクターが良い。
一見、浮世離れしたのんきさ、でも、奉公人に対する思いやりもある。
決断力もあり、見切ったら、即、実家へ帰る行動力もある。
年齢が違うが、菊栄と幸の友情が続くと期待したい。
【蛇足】
P126
火鉢の灰や仏壇の香炉の灰は、油断すると固くなるため、篩にかけて柔らかくする必要があるが、粉まみれになるのでお竹もお梅も幸任せだった。それゆえ、髪を手拭いで包み、「灰を篩ってきます」と断りさえすれば、中を離れることも許された。
灰かぶり=シンデレラ、である。
この物語は「シンデレラ・ストーリー」ですよ、と言う事か?
これは「サイン」なのか?
【ネット上の紹介】
物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道か―大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!
「ベトナムの風に吹かれて」小松みゆき
著者はベトナムで働く、日本語教師。
母が要介護・認知症となる。
いったい、どうしたものか?
熟慮の結果、母親をベトナムに連れて行って介護する、という決断をする。
特殊な事例ではあるが、参考になる点もあり、興味深く読めた。
P46
母は自分の生きてきた時代に興味があるようだ。田舎にいるとき「認知症」というだけで、やっかいもの扱いする傾向があったような気がする。けれども一緒に暮らして分かったが、認知症であっても「知りたい」という気持ちは強いし、その場の会話はまともだと思う。だた記憶が飛ぶことや物忘れ、思い違い、思い込みはある。このことを家族や周囲の人がうまくカバーできるか、どう受けとめるかが課題だと思う。
P156
ちなみにハノイを流れる川はソンホン(紅河)。その河の内側の町がハノイ。漢字で書くと河の内なので「河内」と書いてHa Noiとなる。
P159
サバから見える一番高い山は、ファンシパンといい、3143メートルあるベトナムの最高峰だ。
PS
母子を☆(ぼし)と書いたり、婆さん=BAさんとしたり、言語感覚に首をかしげる箇所もあるが、概ね、読みやすい文章だ。
【ネット上の紹介】
ベトナムの首都ハノイで、日本語教師として働く著者。新潟に住む81歳の母とは離れて暮らしていたが、母の認知症がひどくなり介護の必要性が増したことから、母をハノイに迎え同居生活を始めた。人間関係の濃い下町の旧市街や旅先での緑豊かな山々の光景に刺激され、母はイキイキと昔の思い出を語り出す。転倒による大怪我や失踪事件などのトラブルにもめげない母娘。等身大の海外介護の日常をユーモラスに綴った感動のエッセイ。
「師走の扶持」澤田瞳子
女薬師・真葛シリーズ第2弾。
先日読んだ「ふたり女房」の続編。
ネタバレありなので、未読の方は注意。
P15
真葛は常々、男とがむしゃらに肩を並べてはならぬとの自制を己に課してもいた。どれだけ奮闘しても、生まれ持った性は変えられぬ。また自分があまりに頑固な物言いをすれば、それに反発する者も現れよう。男女の分を弁えることが、むしろ欲する道への近道だと、聡明な真葛は気付いていたのである。
P104
血は水よりも濃いとの言葉があるが、血によってもたらされるものは、必ずしも幸せばかりではないのかもしれなかった。
P265
「どうかなさいましたか」
「いや、こなたにはとうの昔に亡くなった姉君がおわすのじゃが、そもじの物言いがふと姉君に似ている気がいたしたのじゃ。不思議じゃのう。顔かたちや声は、まったく似ておらぬと申すに」
ひどく温かな灯が、ぽっと胸に灯る。
自分の姪と知らずに対面している。
真葛は自分の血縁者の前に名乗り出る日が来るのだろうか?
読んでいて、とても心地よい気持ちになる。
人物設定、ストーリー展開、距離の取り方、いずれも私の好みである。
今後も読み続けたいと思う、シリーズ作品である。
【ネット上の紹介】
その病に、理由あり――。妊娠したという幼い娘が持参した丸薬の秘密。薬種屋の主が、仕入れの旅に出ないと言い出した理由。どんな薬を煎じても一向に治らない咳病とは……。京都・鷹ヶ峰で幕府直轄の薬草園を営む藤林家で養われた女薬師・元岡真葛が、薬草を通じて隠れた悩みを解きほぐす。『若冲』の著者が贈る、心に沁みる絶品時代小説。
2015年年間ベスト(個人的)をジャンル別に選んでみた。
どの本も良かったので、3冊を選ぶのは難しい。
それでも、あえて選んでみた。
【2015年心に残る作品たち】
「世界の果てのこどもたち」中脇初枝
「長いお別れ」中島京子
「シンデレラの告白」櫻部由美子
「君の膵臓をたべたい」住野よる
「老後の資金がありません」垣谷美雨
「王妃の離婚」佐藤賢一
「かたづの!」中島京子
「みなそこ」中脇初枝
「武士道ジェネレーション」誉田哲也
「昭和の犬 Perspective kid」姫野カオルコ
「きみはいい子」中脇初枝
「蓮花の契り 出世花」高田郁
「流」東山彰良
「雪とけ柳 着物始末暦」中島要
「宇喜多の捨て嫁」木下昌輝
「あまねく神竜住まう国」荻原規子
「なみだ縮緬 着物始末暦」中島要
「イルカの家」ローズマリー・サトクリフ
「転がる香港に苔は生えない」星野博美
「続・竹林はるか遠く―兄と姉とヨーコの戦後物語」カワシマ・ワトキンズ,ヨーコ
「日本国最後の帰還兵深谷義治とその家族」深谷敏雄
「みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記」星野博美
「生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後」小熊英二
「昭和史 1926-1945」半藤一利
「昭和史 戦後篇」半藤一利
「境界の町で」岡映里
「コリアン世界の旅」野村進
「戦後史をよみなおす」福井紳一
「日本戦後史論」内田樹/白井聡
「牛と土 福島、3.11その後。」眞並恭介
「瀬島龍三 参謀の昭和史」保阪正康
「空が、赤く、焼けて 原爆で死にゆく子たちとの8日間」奥田貞子
「健康で文化的な最低限度の生活」(2)柏木ハルコ
リアル」(14)井上雄
「空也上人がいた」山田太一/新井英樹
「いちえふ」(2)竜田一人
「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」(3)竜田一人
あれよ星屑」(3)山田参助
「あれよ星屑」(4)山田参助
「いちまつ捕物帳」(1)細野不二彦
「3月のライオン」(11)羽海野チカ
「百姓貴族」(2)(3)荒川弘
先日紹介した「百姓貴族(1)」のつづき。
北海道の農家の生活がリアルに描かれる。
とても興味深く、面白い。
イモだんごの作り方。
ゆでたてのじゃがいもをすぐ潰して温かいうちにでんぷん(片栗粉)を混ぜて小判型にする
片栗粉の量はお好みで!少なすぎるとポロポロくずれ多すぎるとかたくなるよ
焼くと表面さくっと中はもっちりゆでるとつるつるのもちもち
砂糖正油(ママ)をつけたり中にチーズを入れて焼いても美味いですぞ
私も、このマンガを見て、実際作ってみた。
とても美味しかった!
ぜんざいに入れると・・・
殺人的美味さイモだんごぜんざい!!
(なお、ぜんざいにカボチャを入れても美味いそうだ)
ロールベール・・・牧草をロールケーキみたいに巻いた保存用家畜飼料
サイロは「サイレージ」という乳酸発酵飼料を作る施設です
今は地上に積むサイレージが主流です
この地上積みの施設を「バンカーサイロ」と言います
【ネット上の紹介】
マンガ家になる前は北海道で七年間、農業に従事していたマンガ家・荒川弘。「働かざるもの食うべからず」&「俺にできる事はおまえにもできる」の家訓のもと、牛も畑もマンガも全力投球! 今巻も、農家の嫁、牛舎や牧草のこと、収穫祭などたっぷりの農家エピソードに加え、マンガ家デビュー前、どのようにしてハードな家業とマンガ執筆を両立していたか、その秘訣がついに明かされる・・・!
「将棋の子」大崎善生
以前から気になっていた作品を読んだ。
「3月のライオン」の元ネタのひとつ、と思われる。
奨励会を舞台にしたドラマ。
日本各地で天才と言われた少年達。
しかし、勝ち残れるのはごく一部のみ。
敗れ去ったものたちは、いかに挫折を克服するのか?
あるいは、出来ないのか?
P340
では、なぜ彼らの闘いがこんなにもせつなく胸に迫ってくるのだろうか。
それは、棋士を目指すというあまりに単純で逃げ場のない目標のせいなのかもしれない。あるいは、少年の日に抱いた夢に人生をかけて突き進んでいく姿が健気だからなのだろうか。それとも、その挑戦があまりにオールオアナッシングだからなのか、年齢制限という厳然とした逃れられないシステムのせいなのだろうか。
棋士の世界という特殊な世界を扱いながら、万人に訴える内容。
思った以上に、胸に応える。
講談社ノンフィクション賞受賞作・・・読んでみて。
【ネット上の紹介】
奨励会…。そこは将棋の天才少年たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る“トラの穴”だ。しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。途方もない挫折の先に待ちかまえている厳しく非情な生活を、優しく温かく見守る感動の一冊。第23回講談社ノンフィクション賞受賞作。
[目次]
第1章 北へ
第2章 沈黙の海
第3章 夢への遡上
第4章 吹きあれる風
第5章 月光
第6章 再会の日
第7章 放浪
第8章 恋
第9章 勇気の駒