【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子

2024年09月28日 08時22分43秒 | 読書(昭和史/平成史)


「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子

読み返し。

P104
日本側が早く不平等条約を廃止してくださいと言い続けたとき、列強が「それでは商法、民法を編纂してくださいというのは、ある意味、正統な言い分ではあったわけですね。

P185
1902年に満洲から撤兵しますよといったのに、ロシアは撤兵しない。中国と約束したはずの撤兵期限をなかなか守らないという事態を見て、イギリスは日本に同盟を提案するのです。

P204
日清戦争は帝国主義時代の代理戦争でしたが、日露戦争もやはり代理戦争です。ロシアに財政的援助を与えるのがドイツ・フランス、日本に財政的援助を与えるのがイギリス・アメリカです。

P211
ロシアが黒竜江省、吉林省、遼寧省という3つの省を占領していたことで排除されていた国々が平等に満洲に入れるようになった。(中略)「さあ、帝国主義のみなさん、いらっしゃい」と中国東北部を開いた。これが日露戦争でした。

P441
魚雷は高度100メートルぐらいで飛ぶ飛行機から落とされると、ガーッと60メートルくらい、海面から沈む。(中略)
真珠湾は水深12メートルの浅い湾でした。戦艦は水面から船底まで7メートルあれば停泊させられますから、ここに停泊させるのは合理的です。


【ネット上の紹介】
膨大な犠牲と反省を重ねながら、明治以来、四つの対外戦争を戦った日本。指導者、軍人、官僚、そして一般市民はそれぞれに国家の未来を思いなお参戦やむなしの判断を下した。その論理を支えたものは何だったのか。鋭い質疑応答と縦横無尽に繰り出す史料が行き交う中高生への5日間の集中講義を通して、過去の戦争を現実の緊張感のなかで生き、考える日本近現代史。小林秀雄賞受賞。
序章 日本近現代史を考える
1章 日清戦争―「侵略・被侵略」では見えてこないもの
2章 日露戦争―朝鮮か満州か、それが問題
3章 第一次世界大戦―日本が抱いた主観的な挫折
4章 満州事変と日中戦争―日本切腹、中国介錯論
5章 太平洋戦争―戦死者の死に場所を教えられなかった国


「消費される階級」酒井順子

2024年09月23日 13時06分23秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「消費される階級」酒井順子

P2
2006年の流行語大賞においては、「格差社会」の他にも「下層社会」「下流社会」「貧困率」といった言葉もノミネートされています。「豊かになるもならないも自己責任」といった考え方の流布によって経済的な上下差が著しくなり、階級が固定化されたのがこの頃である模様。

P41
韓国ドラマにおいては、日本のドラマよりもずっと、一重まぶたの俳優、それも特に女性俳優が重用されていました。

P206
オリンピックや万博といった大規模イベントは、懐メロ歌手のコンサートのように見えます。

P263
表面的な格差や差別は、今後も減少し続けるであろう日本。そうしてできたつるつるした世の中は歩きやすいだろうけれど、滑って転んでしまう人もいるに違いありません。つるっとした世では、段差の多い世よりずっと、立つ時も歩く時も力が必要となるに違いなく、そんな世に向けて、今はせっせと筋力を鍛えるしかないのでしょう。

【ネット上の紹介】
序列、区別、差別。表かえ、姿を変えた「凸凹」は世らは消の中のあちこちに。あの人より、上か、下か。日本人の階級意識をあぶり出す21の視点。
男高女低神話のゆらぎ
五十代からの「楢山」探し
まぶた差別と日韓問題
“親ガチャ”と“子ガチャ”
東大礼賛と低学歴信仰
『ドラえもん』が表す子供社会格差
「有名になる」価値の今昔事情
「ひとり」でいることの権利とリスク
おたくが先達、“好く力”格差
バカ差別が許される理由
ミヤコとアズマ、永遠のすれ違い
「かっこいい」、「ダサい」、「センスいい」
超高齢化時代のおばあさん格差
姫になりたい女の子と、姫として生まれた女の子
デジタル下層民として生きる
男性アイドルは無常の風の中に
世代で異なる、斜陽日本の眺め方
反ルッキズム時代の容姿磨き
モテなくていいけど、出会いたい
稼ぐ女と、使う女
遅ればせながらの金融教育


「よみがえる昭和天皇」辺見じゅん/保阪正康

2024年09月20日 07時39分56秒 | 読書(昭和史/平成史)


「よみがえる昭和天皇 御製で読み解く87年」辺見じゅん/保阪正康

読み返し。

P31
貞明皇后は旧名を九条節子といって、公家の最高の家柄である五摂家のひとつ、九条家の出身です。
(中略)
一方、香淳皇后は皇族である久邇宮家の正室のお嬢さんで(中略)結婚当初は貞明皇后も気に入っていたのですが、そのうち溝ができていく。

P73
平成8年になって、今上天皇と美智子皇后がどうしても、翌年の宮中歌会始の召人に齋藤史さんを招きたいと仰ったそうです。

P94
8月14日の御前会議では、ポツダム宣言受諾を最後まで反対した陸相の阿南惟幾が、天皇にとりすがるように泣いたそうです。それを天皇はやさしく「阿南もういい、お前の気持ちは分かった。だが私には国体を守る自信があるのだ」と諭されました。阿南陸相はその場を辞すると自分の官邸に帰り自害します。

P150
香淳皇后が美智子妃をあまりお気に召していなかったことは、当時から知られていました。

P220
昭和五十四年にA級戦犯の靖国合祀が公になりましたが、昭和五十年を最後に昭和天皇は参拝されていません。この合祀について天皇はかなり不快感を持っておられた。
しかし、その後も歴代内閣は参拝を続けた。

【ネット上の紹介】
昭和天皇が遺した一万首とされる御製には、戦乱から繁栄へと変化を遂げた時代の色が、そして波瀾に満ちた天皇自身の人生が投影されている。昭和史に精通した作家と歌人が、百七十首余を徹底討論。昭和天皇の新たな実像が浮かび上がる。
[目次]
第1章 若き摂政宮の時代―大正年間;第2章 軍部の台頭―昭和初年代;第3章 いくさの時代へ―昭和十年代から敗戦まで;第4章 主権回復への道のり―昭和二十年代;第5章 高度成長と皇太子のご成婚―昭和三十~四十年代;第6章 大いなる昭和の終焉―昭和五十~六十年代


「彼方此方の空に粗茶一服」松村栄子

2024年09月17日 08時06分29秒 | 読書(小説/日本)


「彼方此方の空に粗茶一服」松村栄子

シリーズ最新刊で、最終刊。

P168
それよりも、一見控えめなこの嫁が時折見せる大胆さには瞠目すべきものがると、公子はあらためて佐保の顔をまじまじと見た。

P192
「争いごとはよくないことですが、それでもひとには闘わなければならないときもあります。命がかかっているときと名誉がかかっているときです。命がかかっているときには手段を選ばず、どんなずるいことをしてでも勝っていき残らなければなりません」中略)
「しかし、名誉がかかっている闘いは、フェアでなくては意味がありません。(後略)」

第六章「今出川家御息女の段」が特におもしろくて、即読み返した。
このシリーズは終了らしいが、スピンオフでまた描いてほしい。

今年もんくなしのベスト。
楽しめた。

【ネット上の紹介】
東京・本所の一角で、弓道、剣道、茶道を伝える〈坂東巴流〉。紆余曲折ののち、家元をつぐ決意をした長男・友衛遊馬の周りには、一癖も二癖もある面々があふれていて--。将来に不安を覚える遊馬の恋人・佐保が出会った呉服屋に隠された「秘密」、遊馬の一番弟子・伊織が直面したある事件、遊馬の京都時代の友人・翠と哲哉のなかなか進まない恋模様、留学した遊馬の弟子・珠樹のイギリス生活、友衛家の三代にわたる嫁姑関係、カンナと幸麿の娘・希の小学校サバイバル術、そして三十代になった遊馬の日々。巧みに織りなされる人間関係の機微と、茶の湯をはじめとする日本文化の奥深さに凛と姿勢が正される、読後感あたたかな7篇の人情譚。


「知らなかった、ぼくらの戦争」アーサー・ビナード/編著

2024年09月14日 12時25分37秒 | 読書(昭和史/平成史)

「知らなかった、ぼくらの戦争」アーサー・ビナード/編著

読み返し。
太平洋戦争を生き延びた人たちを訪ねてインタビュー。
 
P21
1941年12月の時点で、米軍はすでにレーダーを開発していたので、日本艦隊の動きをとらえ、特別な地位にいた一部の人間は、事前に把握できていたはずだ。「人的ミスによって現場への情報伝達が遅れた」というエクスキューズは、あまりに白々しく響き、(後略)

P86
軍隊の現場にはね、「星の数より飯の数」という言葉があります。つまり、偉そうに肩に星がついていて位が上でも、若くて経験のないヤツは現場ではなんの役にも立たん。

P39
米軍による日本への爆撃の指揮官だったカーチス・ルメイ大将って、いまだに許す気持ちになれないな。日本側にはもはや反撃する能力がないと、アイツはだれよりもわかっていて、それなのにドシドシ焼夷弾を落としまくって、日本中の都市を火の海にして、無差別殺戮を繰り返したんだ。とんでもない馬鹿野郎だと、俺は思っているよ。

P105
敵は大和の左舷ばかりを集中して攻撃したから、転覆するのは早かったです。

P111
日本の防衛省は現在、多数の駆逐艦を展開させているが、そうとは呼ばずに「護衛艦」というネーミングを利用している。

P154
沖縄戦で心に刻んだ最大の教訓は「軍隊は民間人を守らない」ということです。

P204
18回のミッションには広島と長崎の原爆投下も含まれ、それ以外に訓練のためだけに30の都市に9発の長崎型模擬原爆「パンプキン」を落としていたという事実が記されていたのです。つまり331の通常のミッションとは別に18の特別の作戦任務があったことを証明するもので、これまで人目に触れることがなかったのです。


【ネット上の紹介】
いつまで知らないでいるつもり!? アメリカ出身の詩人アーサー・ビナード氏(1967年生まれ)が、日本人の太平洋戦争体験者たちを訪ね歩き、戦争の実態と、個人が争いから゛生き延びる知恵゛を探ります。登場する語り手は、真珠湾攻撃に参加したゼロ戦の元パイロット、「毒ガス島」で働いた元女子学徒、戦後GHQで働いた元事務員など、実にさまざま。日本人以上に日本社会に詳しいビナード氏が、自身の受けたアメリカの教育とも照らし合わせながら戦争に対する考察を深めます。日本民間放送連盟賞・2016年番組部門[ラジオ報道番組]最優秀賞を受賞した、文化放送「アーサー・ビナード『探しています』」を採録して再構成した書籍です。「『平和』って、無知のままでいること?」 「『戦後』って、いつの戦争のあと?」
第1章 「パールハーバー」と「真珠湾」と「真実」(マリは蹴りたしマリはなし(栗原澪子)
「空母は何隻いたのか?」(原田要) ほか)
第2章 黙って待っていたのでは、だれも教えてくれない(まだあげ初めし前髪の乙女たちは毒ガス島で働いていた(岡田黎子)
「君は狭間という日本語を知っているか」(飯田進) ほか)
第3章 初めて目にする「日本」(「外地」は一瞬にして「外国」となった(ちばてつや)
「日本という国が本当にあった!」(宮良作) ほか)
第4章 「終戦」は本当にあった?(八月十五日は引っ越しの日?(三遊亭金馬)
ストロボをいっぺんに何万個も(大岩孝平) ほか)
第5章 一億総英会話時代(GHQは東京日比谷で朝鮮戦争の業務を遂行(篠原栄子)
公園はすべてを見てきた(小坂哲瑯) ほか)
 

「チンチン電車と女学生」堀川惠子/小笠原信之

2024年09月10日 08時29分11秒 | 読書(昭和史/平成史)


「チンチン電車と女学生 1945年8月6日・ヒロシマ」堀川惠子/小笠原信之

読み返し。

P10
被爆した70両のチンチン電車に乗務していた運転士・車掌の7割ほどが14歳から17歳の少女たちだった、という事実だ。

P117
隣の呉市が日本海軍の4大拠点の1つで海軍の町だったのに対し、広島市は陸軍の町だった。

P119
連合軍が本土に上陸して日本が2つに分断されるケースを想定し、鈴鹿山系で日本本土を東西に2分、第1総軍と第2総軍を置いたのである。

P126
中国の抗日都市・重慶に対する日本海軍航空隊の無差別爆撃は、1939年春から41年秋まで続いた。そして、218回の集中豪雨的な空襲により、1万1889人の重慶市民を死に追いやっている。この死者数を米軍の戦略爆撃による日本人死者数と比べると、広島、長崎、東京に次ぐものであり、同じく1万1000人台の死者を出した愛知、兵庫、大阪の空襲に匹敵する。



【ネット上の紹介】
原爆が炸裂したあの日も、チンチン電車は広島の街を走っていた。運転士と車掌の多くは14~17歳の女学生たち。兵隊に取られた男たちの代わりを務めていたのだ。本書は、彼女らが通った「幻の女学校」の存在を明らかにし、徹底した取材で、少女たちの青春と、8月6日のヒロシマを記録する。

[目次]
第1章 「幻の女学校」との出会い
第2章 広島電鉄家政女学校開校
第3章 女学生運転士の誕生
第4章 青春の日々
第5章 軍都・広島とチンチン電車
第6章 八月六日、午前八時十五分
第7章 地獄絵のなかを
第8章 復旧電車が走る
第9章 女学生たちの六〇


「原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年」堀川惠子

2024年09月06日 08時33分32秒 | 読書(昭和史/平成史)


「原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年」堀川惠子

読み返し。

P252
遺体の処理作業が一気に進められた背景には、真夏の炎天下、死体の腐敗が進むと伝染病が蔓延するため早急な対応が迫られたという事情もあったし、特殊爆弾の惨状を放置すると、本土決戦に向けた国民の士気にかかわるという背景もあった。

P273・・・動かなかった海軍兵学校
日本の将来を担う海軍エリートの卵に、放射能にまみれた現場で危険を冒させるわけにはいかない、(後略)

P283
原爆が投下される前、広島市の戸籍簿はすべて疎開させていたため無事だった。



【ネット上の紹介】
広島の平和記念公園にある原爆供養塔には、七万人もの被爆者の遺骨がひっそりとまつられている。戦前、この一帯には市内有数の繁華街が広がっていた。ここで長年にわたって遺骨を守り、遺族探しを続けてきた「ヒロシマの大母さん」と呼ばれる女性がいた。彼女が病に倒れた後、著者はある決意をする―。氏名や住所がわかっていながらなぜ無縁仏とされたのか?はじめて明かされる、もうひとつのヒロシマの物語。本格ノンフィクション!
[目次]
第1章 慰霊の場
第2章 佐伯敏子の足跡
第3章 運命の日
第4章 原爆供養塔とともに
第5章 残された遺骨
第6章 納骨名簿の謎
第7章 二つの名前
第8章 生きていた“死者”
第9章 魂は故郷に


「名画と読むイエス・キリストの物語」中野京子

2024年09月02日 08時17分40秒 | 読書(宗教)
 

「名画と読むイエス・キリストの物語」中野京子

読み返し。

P20
古代ユダヤでは、男子は13歳、女子は12歳になると、一人前の成人とみなされた。したがって多くは十代半ばまでに結婚した。大工のヨセフと婚約者のマリアも、おそらく13歳から15歳の間だったと思われる。

『受胎告知』フラ・アンジェリコ

P58
イエスは洞窟の中で、40日間、断食と祈りを続けた。
40は聖なる数であり、何かを為すための準備期間として必要な数とされていた。モーセもエリヤも40日間荒野にこもったし、ノアの洪水も40日続き、人が母の胎内にいるのは40週と考えられた。イエスで言えば、復活後40日間この世にとどまっていた。エルサレムの滅亡は、イエスの死の40日後である。

P69
後にイエスはシモンに、ペテロ(岩の意)という名を与える。岩の上に教会を建て、「天国の鍵」を預けよう、と約束もした。

P70
ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂は、聖ペテロの聖堂という意味だ。絵画においては、十字架に釘で打ち付けられる白髪の老人姿でよく描かれる。

P177
イエスの処刑に、ローマ人たる自分は無関係だ、責任はおまえたちユダヤ人で取れ、と突き放したのだが、雪崩をうって突き進む群衆は、なんら恐れもためらいもなく、「その血は、我らと我らの子孫に帰すべし」と、歴史におけるユダヤ人観を決定づける答えを返すのだった。

P200
キリスト教における最重要の祝日といえば、復活祭(=イースター)。なぜならこの祭は、イエスが予言どおり復活したのを寿ぐ日、即ち、イエスが人間から神になった記念日だからだ。

【ネット上の紹介】
ドラマティックなイエス・キリストの物語画は、独創的な表現に満ちた傑作・名作のオンパレード。イエスのおおまかな生涯を知った上で西洋名画を楽しみたい―そう願う人のための、これは手引書である。
[目次]
幼子イエス;洗礼;荒野の修行;伝道;奇蹟;女たち;使徒たち;エルサレム;最後の晩餐;ゲッセマネ;裁判;磔刑;復活