【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「欲望の名画」中野京子

2019年09月30日 21時01分05秒 | 読書(絵画)
「欲望の名画」中野京子

P126
銀行(bank)という単語自体、イタリア語のバンコ(banco)が起源なのだ。それはイタリアの各都市国家がそれぞれ貨幣を発行したため両替の必要が生まれ、町の広場にバンコという台を置いて、それ台の上で両替商が硬貨の重さを量るなどの交換業務を行ったことに由来する。

P138
フェルメールの作品は常に「静謐」という言葉とセットで語られる。確かにどの絵も喧噪からほど遠い。不思議なことだ。なぜなら彼は十人以上の子持ちのうえ、姑や女中も同居する町なかの自宅をアトリエにし、飼育している鶏の鳴き声はもちろん、すぐ近くの教会が日に何度も打ち鳴らす大音量の鐘の音に至るまで、種々雑多な、そして絶え間のない生活音に囲まれて制作していたのだから。

【ネット上の紹介】
狂おしく激しい愛情、金銭への異常な執着、果てない収集癖、飽くなき野心…。人はあらゆる欲望を絵画に込めてきた。細部に描かれた小さな情報も見逃さず、名画に込められた意図を丁寧に読み解く。
第1章 愛欲
第2章 知的欲求
第3章 生存本能
第4章 物欲
第5章 権力欲
欲望の果てに

「山小屋ガールの癒されない日々」吉玉サキ

2019年09月26日 19時10分31秒 | 読書(山関係)
「山小屋ガールの癒されない日々」吉玉サキ

著者は山小屋で10年間働いた。
その体験記。
想像していたのと同じ点もあれば、
そうなのか!と思うこともある。
興味のある方、あるいは働いてみようと思う方は、読んでみて。
思った以上に濃い人間関係、
そして、その年により当たりハズレがある。

【おまけ】
先日、穂高に行った際に、山小屋に泊まった。
普通、山小屋で働くというと、いかにも山好きな方、という印象がある。
女性スタッフも多い・・・おそらく半分は女性従業員、と思う。
でも、何度見ても、「山ガール」あるいは「山女」に見えない。
街中にいる普通のネエちゃん、である。
いちいちヘリを飛ばす訳もなく、ザイテングラートを登って来たのでしょうね。
クライミングジムに通う女性が、限りなく普通のOLなのと同じなのでしょう。
(当たり前じゃないか、と言われそうだが、90年代は違った)

【ネット上の紹介】
仕事、暮らし、恋、人間関係、そして人生への向き合いかた…山小屋で10年働いたライターがつづる山の上での想定外の日常!
1 山小屋生活ってどんなもの?(仕事ができない私はポンコツ?
一〇〇人前のごはんを作ってました ほか)
2 大自然に…癒されない!(山小屋バイトは自然に癒される?
週三回のお風呂をパスしたくなる理由 ほか)
3 心に残るあの人(常連さんとスタッフのゆるい絆
遭対協隊員の思い ほか)
4 濃すぎる人間関係!(住み込みバイトの人間関係は運まかせ?
一緒に暮らしてたって分からないことはある ほか)

「喪の女王」〈全8巻〉須賀しのぶ

2019年09月24日 21時09分22秒 | 読書(小説/日本)
「喪の女王」〈全8巻〉須賀しのぶ

外伝と番外編を抜かして、本伝のみを再読している。
いよいよ『流血女神伝』シリーズ最終章、「喪の女王」を読んだ。
これにて本伝、再読終了。(次回再読はいつになるだろう?)
今回もネタバレありなので、ご注意!

3巻目P173
「わたしは順応性あるもん。だって、王子と奴隷と小姓と海賊と総督もやったもんね。修道女ぐらいできるよ。だって、べつに戦ったり、誰かを欺いたりする必要がないもの」(今回は、修道女だ!これだけ色んな役になるヒロインは珍しいぞ)

5巻目P171
ロイは親指と人差し指で、金貨の形を作った。
(日本では、これでお金を意味するが、西洋でこれをやるとエッチな意味になると聞いたことがある・・・実際どうなんだろう?)

【蛇足】
4巻目P218
(誤)しか彼女が行った
 ↓
(正)しかし彼女が行った

【おまけ】
この物語にはモデルがあると、皆さんお気づきと思う。
バンディーカ=エカテリーナ
ガンダルク=サンクトペテルブルク
ルトヴィア=ローマ帝国
エティカヤ=オスマン・トルコ
他に気づいた方がいたら教えて。

【ネット上の紹介】
大祭のザカールを襲った大地震により、囚われの身からからくも逃れたカリエは、その身を挺して助けてくれたエディアルドとともに新しい旅を始めていた。胎内には、千人目のクナムとなるであろうリウジールの子を宿し、癒しきれぬ心の傷を負って…。しかし二人の逃避行を容認できない王バルアンは、執拗なまでにその行方をさぐろうとしていく。流血女神伝シリーズ・最終章スタート。

「暗き神の鎖」〈前・中・後〉須賀しのぶ

2019年09月24日 08時42分36秒 | 読書(小説/日本)
「暗き神の鎖」〈前・中・後〉須賀しのぶ

外伝「女神の花嫁〈前・中・後〉を飛ばして、『流血女神伝』シリーズ、第三章にあたる「暗き神の鎖」を読んだ。
今回もネタバレありなので、ご注意!

P205
「マヤラータはさ、いろんな名前をもってますよね。もちろんぜんぶ同じ人なんだけど、役どころは全部ちがう」
(この作品は、ストーリー中心で、どちらかというとキャラクターは類型化されている。それでも、おもしろくて夢中にさせる魅力というのは、激動のストーリーにある。
小説の面白さには、いろんな役を主人公と共に楽しむ、って要素がある。本作は、ひとりの主人公が次々にいろんな「役」をとっかえひっかえなりきっていくことだ。こう言うのって珍しいと思う。猟師の娘、身代わり皇子、奴隷、王妃・・・次はどんな役だろう?、と)

【ネット上の紹介】
カリエがバルアンの王妃となって一年が過ぎようとしていた。いまだ懐妊の気配はないところへ、バルアンの妾妃でもある親友のナイヤが身ごもったとの報せを聞く。ナイヤを祝福しながらも、複雑な想いにとらわれるカリエ。そんな時、彼女はバルアンから聖なる山オラエン・ヤムに一緒に登ろうと誘われる。

「砂の覇王」須賀しのぶ〈全9巻〉

2019年09月24日 08時31分18秒 | 読書(小説/日本)
「砂の覇王」須賀しのぶ〈全9巻〉
『流血女神伝』シリーズ、「帝国の娘」(上・下)に続く第二章にあたる。
今回ネタバレありなので、以下ご注意!

第一章では、猟師の娘・カリエが、日突然さらわれ、少女でありながら皇太子の身代わりとなり、他の皇帝候補たちと共同生活を送る、という激動の設定だった。
しかし、今回はさらなる激変が待っている。
奴隷となってハーレムに売られるのだ!
この9巻は、このシリーズ中でも特に面白い章だ。

【ネット上の紹介】
カリエがエディアルドとともにカデーレの森から脱出して半月が経った。薄暮のなか、その日の目的地の途中にある村に辿り着いた頃、エディアルドの高熱に気がついたカリエ。二人は、宿をその村で求めようとしたが、訪ねる家々で冷たく断られてしまう。途方に暮れるカリエ。そこに一人の男が現れ、自分の家に来てもいいと言う。しかし一夜を過ごすことになったその家には、恐ろしい罠があった。

穂高縦走⑤

2019年09月22日 23時30分47秒 | 北アルプス(穂高・槍・蝶)
●9月19日(木)
今日は最終日。
15:40の高速バスを予約している。
それまで、上高地を散策する。
正面が奥穂高岳、その右に吊り尾根を経て前穂高のピーク
上の写真は、梓川山側の散策路
こちらも同様、梓川の山側の散策路からの写真
明神池に行くのは有料(神社境内だから)

【資料】
距離14Km
9:19 上高地温泉ホテルから散策開始
15:36 バスターミナル

【感想&おまけ】
今日は天気が良かった。
岳沢から前穂を経て奥穂に登り、後半の槍までの縦走を再開しようか、と一瞬思ったくらい。(今回、後半の縦走が出来なかったのが心残り)
機会があれば、トライしたい。
あと、上高地温泉ホテルに泊まっていて思ったのが、どうして両親が元気なときに、このような宿泊プランをプレゼントしなかったのだろう、と。
悔やまれる。(親孝行のタイミングを逸してしまった)
最近、「ああしたら良かった」とか、後悔することばかり頭に浮かんでくる。

【追加】
今回、西穂-奥穂の縦走されている方は、100%と言っていいくらい、ヘルメットをされていた。着用せずタオルを巻いていたのは、私くらい?
奥穂登頂のみの方でも、ヘルメットをされている。
安全を追求するためにも、今後ヘルメットを着用するようにしよう。

穂高縦走④

2019年09月22日 09時37分51秒 | 北アルプス(穂高・槍・蝶)
●9月18日(水)
朝から雨、風も強い。
予定では、北穂から槍に向かうことになっている。
朝3時半に起きて、4時にカッパを着て出発する。
しかし、稜線はさらに風が強く、縦走どころではない。
とりあえず穂高岳山荘に引き返す。
「どうしよう、下山するか・・・」、と。
穂高岳山荘でしばらく休憩した後、6:00am下山開始。
涸沢~横尾経由で上高地に下りる。
上の写真は、途中の本谷橋。
上の写真は、横尾の横尾大橋。
さて、今日はどうしよう?
バス会社にTel.して1日早くしてもらおうか?
「明日のバスの予定なんですが、1日早くしてもらえますか?」
「ネットでいったん解約手続きをして、予約を取り直して下さい」
「じゃぁ、いいです」、と私。
上高地で一泊して、予定通り明日帰阪しよう。
以前から泊まりたかった上高地温泉ホテルにTel.する。
「今晩泊まりたいのですが、部屋は空いていますか?」、と私。
「空いてますよ、3:00pmからチェックイン出来ます」、とフロント。
上の写真が上高地温泉ホテル。
このホテルは、明治のたいていの有名な登山家、文人・墨客が泊まっている。
ある日のこと、高村光太郎が智恵子と泊まっていた。
「智恵子さんは君の妹かね?それとも奥さんか?」、と同宿のウエストンが尋ねるたという有名なエピソードがある。それがこの上高地温泉ホテルだ。

山小屋と違って、1人で10畳くらいの部屋、ベランダ付きで梓川が見える。
当たり前だけど、TV、トイレ、冷蔵庫と、山小屋と比べると夢のような環境。
「こんな感じで、山小屋も泊まれたらなぁ」、と夢想する。
その後、大浴場で汗を流し、レストランで夕食を食べ就寝。

【資料】
6:00 穂高岳山荘
7:17 涸沢小屋
9:29 横尾
10:52 徳澤園~田代池散策
15:00 上高地温泉ホテル
歩行距離:21.7Km(散策含む)

穂高縦走③

2019年09月21日 11時02分00秒 | 北アルプス(穂高・槍・蝶)
●9月17日(火)
今日は穂高岳山荘まで行くつもり。
4時すぎに起きて、5時前に出発しよう、と思っていた。
ところが、寝過ごして起きたら5時。
慌てて色々準備して、出発したのが5時半。(こんなことで大丈夫?)
縦走開始・・・西穂山荘を振り返る
西穂独標
槍ヶ岳が遠くに見える
逆層スラブを登る
鎖があるところもある
天狗のコル
ジャンダルムを振り返る
奥穂高岳山頂
無事、穂高岳山荘に到着したのは、13時過ぎ。
(出発遅かった割に、早めに着いて良かった)

【データ】
西穂山荘-西穂丸山-西穂独標-西穂高岳-間ノ岳-天狗ノ頭-天狗岩-ジャンダルム-ロバの耳-奥穂高岳-奥穂高山荘

【感想】
西穂から奥穂のコースは、最近買ったガイドブック(「山歩き安全マップ」JTB)には記載されていない。(北穂~槍、は載っている)
もし紹介して、事故やケガがあったらマズイ、と判断したのでしょうね。
私の持っている古いガイドブック「空撮登山ガイド」(昭和55年初版発行)には、載っていて、このコースをトライする目安として、次のように書かれている。(P36)
経験では北アルプスの主な山、例えば槍・穂高のほか、剱岳、鹿島槍、と八峰キレット、不帰縦走などをひとりで安全に登りこなせ、北アに5年以上通っている人、が最低の目安だろうか。

穂高縦走①②

2019年09月20日 19時37分06秒 | 北アルプス(穂高・槍・蝶)
●「上高地に行こう」、と思い立った・・・9月15日(日曜)の午前の話。
さっそく、高速バス往復をネットで押さえる。
初日と次の日の山小屋もTel.にて予約。
登山計画書を作成する。
高速バスは、本日深夜発なので、パッキングして着替える。
忘れ物はないだろうか?
よし、出発。

●9月16日(月曜)
早朝5時20分頃、上高地到着。
今日の行程は、西穂山荘までなので、3時間あったら辿り着ける。
まだ6時前だから、時間はたっぷりある。
そこで、登山開始する前に、上高地を散策することにする。

帝国ホテル-田代池-大正池・・・ここから引き返して河童橋。
(上の写真は大正池、下の写真は散策中に出会ったお猿さん)


河童橋-明神橋・・・ここから対岸を引き返す。(上の写真は河童橋)
そうこうしているうちに11:00amになった。
かれこれ5時間半ほど歩いた、距離にして15.3Km。
登山の前のウォームアップにしては、疲れた。
ほどほどにしておいたらよかった。(それが出来ない)

11時頃、上高地・田代橋出発。(上の写真は、西穂高岳・登山口)
ひたすら登り続けるが、花に癒やされる。
お昼2時頃、西穂山荘到着。
2時間55分・・・およそ3時間、予想タイム通り。登り900m。
山荘窓口で手続きをして、部屋で休憩。(上の写真は西穂山荘)
あぁ、疲れた。
明日に備えて、ご飯を食べたら早めに寝よう。(9月17日につづく)

帰宅すると・・・

2019年09月20日 19時24分08秒 | 身辺雑記
ちょっと留守にすると、用事が溜まる。
まず溜まっている新聞を読んだ。
留守中に来たメールを処理した。
花と植木に水をやった。(枯れてなくてよかった)
洗濯をした。
登山靴を洗って、ザックの汚れも拭き取り、メンテした。
郵便物を処理・・・不要な物は破棄。
処理すべき郵便は記入して段取りする。
振込依頼があったので、BKに行って振込。
用事で谷町4丁目に行ってきた。
散髪をしてきた。(散髪してもらいながら居眠りをして注意を受ける)
買物をしてきた。
録画したTVと録音したラジオをチェック。
明日は病院に見舞いに行こう。

上高地~穂高

2019年09月20日 00時25分15秒 | 北アルプス(穂高・槍・蝶)
上高地~穂高の縦走をしてました。
詳細は後ほど。


「帝国の娘」(上・下)須賀しのぶ

2019年09月13日 19時55分40秒 | 読書(小説/日本)
「帝国の娘」(上・下)須賀しのぶ

こういうのを大河小説、と言うのでしょうね。
あまりに長いので、なかなか読み返す機会と気力が涌かなかった。
しかし、このところ「読み返したい」という思いが強くなってきたので実行した。(約10年ぶり)
『流血女神伝』シリーズ、第一章が「帝国の娘」(上・下)である。
萌え要素満載だ。
2度目でもおもしろい、一気読みだ!

【参考】
次のような構成になっている。
「帝国の娘」(上・下)
砂の覇王〈全9巻〉
女神の花嫁〈前・中・後〉・・・外伝
暗き神の鎖〈前・中・後〉
喪の女王〈全8巻〉
天気晴朗なれど波高し。(1)(2)・・・番外編
本編22巻、外伝3巻、番外編2巻、全27巻

【ネット上の紹介】
女神の僕たる神鳥リシク、その翼から生まれたテナリシカ大陸の西に位置する大帝国・ルトヴィア。辺鄙な山村で平凡に暮らしていた少女カリエは、ある日突然さらわれ、ある高貴な人の身体わりにされた。礼儀作法から武術まで、過酷な訓練の日々、冷徹な教育係エディアルド、宮廷をゆるがす謀略―カリエは持ち前の負けん気と行動力ですべてを乗り越えてゆく。ただひたすら、生きるために―魂ゆさぶる大河少女小説開幕。

「焼けあとのちかい」半藤一利/塚本やすし

2019年09月12日 19時35分33秒 | 読書(絵本)
「焼けあとのちかい」半藤一利/塚本やすし

半藤一利さんの戦時中の暮らしと東京大空襲を描いた絵本。


【ネット上の紹介】
半藤少年の戦争体験を描いた初の絵本!東京の下町、向島で生まれ育った半藤少年は、メンコとベエゴマが大好きなわんぱくだった。小学5年生でアメリカとの戦争が始まり、東京大空襲の猛火を生きのびたのが中学2年生のとき。半藤少年が焼けあとでちかったこととは―。大胆な画風で注目を集める塚本やすし渾身の作!!

「邂逅の森」熊谷達也

2019年09月10日 20時34分36秒 | 読書(小説/日本)
「邂逅の森」熊谷達也

大正時代のマタギを描いた作品。
以前読んで良かったので、再読した。
直木賞、山本周五郎賞をダブル受賞した作品だ。
やはり面白かった。

P116
そもそも、平地にいる時、自分からマタギであると、里人に明かすことはない。(中略)なぜならば、マタギという言葉そのものが、本来は里で口にしてはならない山言葉であるからだ。

【参考リンク】
「邂逅の森」熊谷達也・・・初回読書

【ネット上の紹介】
秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。失われつつある日本の風土を克明に描いて、直木賞、山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した感動巨編。

「キリスト教と日本人 宣教史から信仰の本質を問う」石川明人

2019年09月06日 11時08分13秒 | 読書(宗教)
「キリスト教と日本人 宣教史から信仰の本質を問う」石川明人

P68
宣教師のなかには、1580年から教会領になっていた長崎と茂木を要塞化して、ポルトガル・スペインの軍隊を呼び寄せ、そこを足がかりにして日本を制圧することを真面目に検討する者もいたのである。

P79
欲望に基づく「侵略」よりも。善意や正義感に基づく「防衛」の方が凶暴なのだ。

フランシスコ会宣教師・アセンシオンの言葉
P85
スペイン国王は日本のキリスト教とたちを「救済」「防衛」するために、長崎や平戸に要塞を設け、武装艦隊を配備すべきだと説いていたのである。

P87
伴天連追放令の背景としてさらにもう一つ言及すべきなのは、当時ポルトガル人が女性や子供を含む日本人を奴隷として売買していたという問題である。秀吉にはそれも許せなかったのである。

P98
秀吉の時と違って完全な「禁教」にすることができたのは、カトリックであるスペイン・ポルトガルに対し、プロテスタントのオランダ・イギリスとのあいだで宣教を伴わない貿易が可能になったからでもある。

P184
1637年の島原天草一揆の時は、原城に立てこもったキリシタン(カトリック信徒)たちに対して、オランダのプロテスタントたちが海側から艦砲射撃を加えたこともあった。彼らはその見返りとして、ポルトガル船を日本から締め出して貿易を独占できるようになることを期待したからである。

P205
幕末から明治初期にかけては、確かにカトリックは「天主教」、プロテスタントは「耶蘇教」と呼ばれるようにもなった。

P215
ザビエルがやってきた戦国時代の日本人は、キリスト教を前にしても「新しい宗教がやってきた」という認識はなかったことになる。当時の人々の頭には、そもそも「宗教」という概念がなかったからだ。

P224
これまで宣教に費やしたコストとその成果とを比べるならば、やはりキリスト教は日本で成功したとは言い難い。

P226
フィリピンや韓国など、日本と同じアジアでありながら日本よりはるかにキリスト教が広まっている国はある。

【おまけ】・・・韓国事情
Wikipediaによると、韓国では、仏教が22.8%、プロテスタントが18.3%、カトリックが10.9%、儒教0.2%となっている。プロテスタントとカトリックを合わせたキリスト教全体では29.2%となっていて仏教より信者の数が多い。
・・・隣国であり、民族的にも近いのに、この差はいったい何なんだろう?
摩擦が起きるはずだ・・・「近くて遠い国」?

ちなみに、日本のキリスト教徒の割合は1%・・・以下、Wikipediaによる日本の場合、
NHK放送文化研究所による「ISSP国際比較調査(宗教)2008[6]」によると、「あなた自身は、何か宗教を信仰していますか」という問いに対して、「宗教を信仰していない」(無宗教)49.4%、仏教34%、神道2.7%、その他の宗教1.1%、プロテスタント0.7%、カトリック0.2%などとなっており、「宗教を信仰していない」人49.4%に対して「宗教を信仰している」人は38.7%となっている。

【感想】
著者の作品は今まで2冊読んだ。
「キリスト教と戦争」
「私たち、戦争人間について」
どちらもレベルが高く、分かりやすく書かれていて、面白かった。
今回も予想に違わず、とても良かった。お薦めです。

「キリスト教と戦争」
「私たち、戦争人間について」

【ネット上の紹介】
日本人の九九%はキリスト教を信じていない。世界最大の宗教は、なぜ日本では広まらなかったのか。宣教師たちは慈善事業や教育の一方、貿易、軍事にも関与し、仏教弾圧も指導した。禁教期を経て明治時代には日本の近代化にも貢献したが、結局その「信仰」が定着することはなかった。宗教を「信じる」とはどういうことか?そもそも「宗教」とは何か?宣教師たちの言動や、日本人のキリスト教に対する複雑な眼差しを糸口に、宗教についての固定観念を問い直す。
第1章 キリスト教を知らずに死んだ日本人に「救い」はない?
第2章 戦争協力、人身売買、そしてキリシタン迫害
第3章 禁教高札を撤去した日本
第4章 「本当のキリスト教」は日本に根付かないのか
第5章 「キリスト教」ではなく「キリスト道」?
第6章 疑う者も、救われる