不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「「正義」の嘘」櫻井よしこ

2023年03月21日 07時18分57秒 | 読書(対談/鼎談)
「「正義」の嘘」櫻井よしこ

P79
大江(健三郎)さんが、現場へも行かず、沖縄の那覇で沖縄タイムスの記者か誰かの話を聞いて、『沖縄ノート』に書いた。それはまったくのデタラメでした。
後に曾野綾子さんが渡嘉敷にも行って取材し、証言をとって、『沖縄ノート』の記述はおかしいですよと指摘しました。(中略)
そして「私が現地に行って調べたら、こういう資料がありました。だからこれを差し上げましょうか」と。すると、大江さんはいきなりガチャンと電話を切った。

P147
「正当防衛」は実は、自己と同時に他人を守るものなのです。
日本国刑法でも、正当防衛は〈急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為〉(第36条)となっています。

P228
植村隆さんは韓国人と結婚し、その義母は「太平洋戦争犠牲者遺族会」の幹部・梁順任氏でした。遺族会は慰安婦裁判で日本政府を訴えた原告の団体です。
(中略)
利害関係者にその記事を書かせていいのか、という倫理の問題です。

【参考リンク】
元朝日「植村隆」敗訴に韓国が沈黙する理由

元朝日の植村隆氏、敗訴確定

【ネット上の紹介】
平和、弱者、隣国、原発…戦後正義の暴走が一目瞭然!言論テレビのキャスター、櫻井よしこ氏と花田編集長が初タッグ!6人の論客を招いて戦後日本の謎をひもとく。
第1章 慰安婦問題だけではないメディアの病
第2章 イデオロギーのためには弱者を食い物にする
第3章 「けちな正義」の暴走
第4章 世論はこうしてつくられる
第5章 軍事はイメージとイデオロギーで語られる
第6章 勘違い「リベラル」と反日
第7章 朝日新聞が歪めた事実と歴史


「私がオバサンになったよ」ジェーン・スー

2021年02月10日 09時29分58秒 | 読書(対談/鼎談)


「私がオバサンになったよ」ジェーン・スー

様々な方と対談している。
興味があるのは、中野信子、海野つなみ、酒井順子の3人。

P64
中野:女性同士の関係は微妙なところがあって、ちょっとしたバランスでマウンティングされたりしたりという形になってしまうことがある。私は長く付き合いたいから。お互い普段は負担にならないところにいて、でもいざという時に助け合えるというふうにしたい

P66
中野:本を読んでくれた人に、私の書いたことを鵜呑みにせず考えてほしくて「わざと指針を示さない」はわりとやってるかも。自分で考えることを厭わない人じゃないと今の時代は生き延びていけないと思うし。

P69
中野:裏を返せば「仲良くしましょう」は、みんなの和を乱す者、その和から外れた者を許しませんという閉鎖性の表れだね。

P222
酒井:全然優しくないけど、ただ極悪人にも石を投げないという主義でもある。
(中略)
正しい人、優しい人には、悪人に対してすぐ石を投げそうな怖さがありますよね。それは自分が悪人である分、したくない。

P227
酒井:体で書く、という感覚も大切か。アスリートと同じで、同じ素振りを千回していれば、どんなに不調な時でも、それこそ親が死んでも破産しても書ける。どんな時でも85点はとりたい、と思っております。(この職人気質からきてるのか・・・酒井作品の質の高さ、おもしろさの理由が分かった)

【ネット上の紹介】
ネガ過ぎず、ポジ過ぎず。人生、折り返してからの方が楽しいってよ!ジェーン・スーとわが道を歩く8人が語り尽くす「いま」。
光浦靖子
山内マリコ
中野信子
田中俊之
海野つなみ
宇多丸
酒井順子
能町みね子


「弱き者の生き方」五木寛之/大塚初重

2018年01月30日 20時23分18秒 | 読書(対談/鼎談)


「弱き者の生き方」五木寛之/大塚初重

五木寛之さんと考古学者・大塚初重さんの対談。

P173
人生を登山にたとえると、登山というのは登るだけでなく、無事に事故を起こさずに下山することも大事な仕事だと思うのです。
 美しき下山といいますか、実り多き下山といいますか、人生の峠道にたたずんで、今度はゆっくりと成熟した豊かな下降をどのように人間的に充実してやっていけるかという、その考え方が熟年層には大切なことではないでしょうか。

p255
十九世紀、二十世紀の人間は傲慢になりすぎて、地上の王者のように振る舞ってきたじゃありませんか。これを、人間というのは非常に弱い、他の草や木と同じような存在であるという、謙虚な気持ちにいっぺん戻る必要があるのではないか。

【備考】
ページは、ハードカバーでのページである。

【ネット上の紹介】
「人間って、地獄に落とされたとき逆に、笑いがこみ上げてくるものですね」引き揚げ者の作家・五木寛之と、撃沈された輸送船の生き残り、考古学の泰斗・大塚初重の二人が、時に泣き、時に怒り、そして感動を共有した。戦後最悪のいま、地獄を見てきた二人が“弱き者”へ贈る、熱く、温かい、生き延びるためのメッセージ。
第1章 弱き者、汝の名は人間なり(人は弱し、されど強し
虎屋の羊羹、銀座のネオンで殴られる ほか)
第2章 善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや(極限状態で交錯する善と悪
二度目の撃沈と敗戦 ほか)
第3章 心の貧しさと、ほんとうの豊かさ(肉親の死を身近に感じる大切さ
お金という魔物 ほか)
第4章 人身受け難し、いますでに受く(人生の峠道でたたずむ
人間性と謙虚さ―前田青邨先生の教え ほか)
第5章 人間は、ひとくきの葦である(「負け組」などいない
辛いことも直視する勇気をもちたい ほか)


中野京子さんと平野啓一郎さんの対談

2017年05月17日 19時36分03秒 | 読書(対談/鼎談)

中野京子さんと平野啓一郎さんの対談がネット上で読める。

http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20170509/Bunshun_2325.html


「中野京子と読み解く運命の絵」中野京子

「マチネの終わりに」平野啓一郎


「僕らが毎日やっている最強の読み方 」池上彰/佐藤優

2017年05月14日 01時32分28秒 | 読書(対談/鼎談)


「僕らが毎日やっている最強の読み方 」池上彰/佐藤優

現在、日本を代表する知識人2人による「読み方」公開。
情報収集、処理、判断、現代を生き抜く武器としての読書スキル。
貯め込むだけだと「教養オタク」だから。(クイズ番組には強くなれるか)
2人ともインプットには相当な時間、労力、金をかけている。
同じように出来ないけれど、効率よいテクニックは得るところが多い。

各社の新聞について
P42
NHK籾井会長の就任会見に対する、各社の紙面構成がまったく違ったんです。籾井会長は、いわゆる従軍慰安婦問題について自説をとうとうと述べ、「政府が右と言うものを左というわけにはいかない」と言ってのけた。これを大きな問題だと捉えて記事にした新聞と、問題にしなかった新聞にはっきり分かれました。

P78
新聞はあくまで「飛ばし読み」が基本です。朝刊の文字数はおよそ20万文字といわれていて、書籍にすれば新書約2冊分。
(中略)
「見出しを見て、読むかどうか迷った記事は読まない」

佐藤さんの趣味発言
P103
本当に好きなジャンルの雑誌は、きちんと定期購読して紙で読んでいます。
「ねこのきもち」「猫びより」「ねこ新聞」

ねこのきもち/公式サイト - benesse.ne.jp‎
公式サイト・月刊「ねこ新聞」
猫びより公式サイト ちょっとお洒落な大人のねこマガジン 2012年7月

P122
『中央公論』は、親会社の『読売新聞』と一体化していて「安倍政権の機関誌」という側面があるので、現政権の意向をより深く知るためには、すごくいい媒体です。

「のらくろ」の後日譚について
P131
佐藤 今度は仕事がなくなり、用心棒や私立探偵など、いろいろヤバめの仕事に手を染めるんです。
池上 『のらくろ』にそんな後日談があるんですか。
佐藤 一方、ブル連隊長はブル商事株式会社の社長としてブルジョアに、モール中隊長は市会議員になっているんですね。しかし、のらくろだけは職を転々としながら、いろいろな仕事で散々な目にあうんです。紆余曲折を経て、最終的に喫茶店の店主としてやっていくんですが。


「失敗の本質」について
P132-133
池上 あれを読むと、日本の組織というのは昔も今もまったく変わらない、つまり陸軍海軍が現代の官僚や役所と同じだったことがよくわかります。
佐藤 続編の「組織の不条理」もあわせて読むといいですね。結局、組織というのは、抜本的な改革はできないことがわかります。私が常々「組織と闘うな」と言う理由のひとつでもあります。「半沢直樹」が流行りましたが、あれを現実でやったら即破滅ですよ。ファンタジーを真に受けると、ひどい目にあいます。


P267
ビジネスパーソンにぜひ手にとってほしいのは、「公民」と「歴史」、それから「国語」と「英語」の教科書です。




【資料】





https://www.foreignaffairsj.co.jp/

【ネット上の紹介】
2人の読み方「最新の全スキル」が1冊に。「普通の人ができる方法」をやさしく具体的に解説。重要ポイントがすぐわかり、読みやすく、記憶に残る。具体的な新聞・雑誌リスト、おすすめサイト・書籍を紹介。2人の仕事グッズも完全公開。見るだけで参考になる!
序章 僕らが毎日やっている「読み方」を公開
第1章 僕らの新聞の読み方―どの新聞を、どう読むか。全国紙から地方紙まで
第2章 僕らの雑誌の読み方―週刊誌、月刊誌からビジネス誌、専門誌まで
第3章 僕らのネットの使い方―上級者のメディアをどう使いこなすか
第4章 僕らの書籍の読み方―速読、多読から難解な本、入門書の読み方まで
第5章 僕らの教科書・学習参考書の使い方―基礎知識をいっきに強化する
特別付録(「人から情報を得る」7つの極意
本書に登場する「新聞」「雑誌」「ネット」「書籍」「映画・ドラマ」リスト
池上×佐藤式70+7の極意を一挙公開!)


「三人寄れば、物語のことを」上橋菜穂子/荻原規子/佐藤多佳子

2015年01月09日 23時57分56秒 | 読書(対談/鼎談)


「三人寄れば、物語のことを」上橋菜穂子/荻原規子/佐藤多佳子

お互いの「物語」についての鼎談。
「RDG」についての荻原規子さんの鼎談は「ユリイカ」2013.04で読んでいる。
今回、わざわざ買う必要ないかも、と思ったけど、
佐藤多佳子さんの「シロガラス」の鼎談も掲載されている。
この手の本は、一部ファンが買ったら重版せず、すぐ絶版になるし。(失礼!)
図書館に入荷しない可能性も高いし。
やはり、買っておくか、と。

P89
荻原 層のことを思いついたのは戸隠に行ったからですね。戸隠の歴史を調べると、最初は行者が寺を建てたけど、そこは地元のひとたちが土地神、つまり九頭龍大神を祀った場所で、それを封じ込めるためだったのね。それから、修験道の霊場としてすごく栄えた後に、戦国時代の戦乱で廃れて、神社だけが残ったという経緯がある。

P150
佐藤 この話(シロガラス)を考えだしたのはすごく前で、荻原さんがまだ「RDG」の原案を考えるよりも前に荻原さんと一緒に神社へ取材に行こうって言ったことがあったんだよね。
荻原 あったあった。そもそも、このお話を書こうと思ったときに最初に降ってきたものは何だったの?
佐藤 さっきも言ったように、最初はとにかく子どもが複数でてきて、やりたい放題にいろいろと動くというものだった。
荻原 そのときにはもう神社は降ってきていた?
 それに神社が合体したってわけ。

う~ん、そうだったのか。
重要な証言が多々ある。
マニアに受ける、貴重な鼎談、である。

【ネット上の紹介】
三人の物語の秘密が解き明かされる! ? 〈守り人〉シリーズ、『獣の奏者』、『西の善き魔女』、『RDG レッドデータガール』、『一瞬の風になれ』、『シロガラス』… 当代きっての物語の書き手でありまた読み手でもある3人の作家が、 お互いの作品を時にするどく時になごやかにあますところなく語り尽くす!


「大人の怪談」辛酸なめ子/木原浩勝

2013年07月05日 22時39分00秒 | 読書(対談/鼎談)

「大人の怪談」辛酸なめ子/木原浩勝

こういう本に弱い。
つい読んでしまう。

P3
スピリチュアルは女の素養で、怪談は男の趣味・・・スピリチュアルブームが広まるにつれいつの間にかそんな霊的ギャップができてしまっているような気がします。

スピリチュアルの世界を愛してやまない辛酸なめ子さんんと、怪談バカ一代の木原浩勝さん。
2人の対談で男女のギャップが浮き彫りになる!?


【関連図書】


【ネット上の紹介】
人生の達人、辛酸なめ子と木原浩勝が教える大人の嗜みとしての怪談の魅力怪談はただ単に人を怖がらせる話ではない。語り手の人生が話の中に反映し、それが聞き手の人生と共鳴したとき、初めて新たな恐怖が生まれるのだ。自他共に認める人生の達人が、大人のための怪談の魅力をレクチャー。
[目次]
第1話 恐怖!トークライブの夜;第2話 暗い部屋のある怖い家;第3話 木原少年の死体のあった日々;第4話 父母の戒め、土地の掟;第5話 「魔」に取り憑かれるということ;第6話 怪談は何を呼び寄せるのか?;第7話 ある日あなたを「気」が襲う;第8話 怪談を嗜む

「よみがえる昭和天皇 御製で読み解く87年」辺見じゅん/保阪正康

2012年11月07日 22時22分26秒 | 読書(対談/鼎談)

「よみがえる昭和天皇 御製で読み解く87年」辺見じゅん/保阪正康

昭和天皇の思いを御製から読み解こうというこころみ。
結果として、昭和そのものを振り返ろう、という企画。
対談者が、辺見じゅんさん阪正康 さん。
この対談の内容は濃いよ。
以下文章を紹介する。
青文字が辺見じゅんさんと保阪正康さんの言葉。
茶色文字が昭和天皇の御製。
黒文字が私の注釈文字。

P10
政治的な言葉で歴史を語ることは、政治闘争には必要ですし、日本軍国主義がアジアを侵略したと、一言、二言で歴史を語ることもできますが、僕は「過去の時代に生きていた人を、後からジャッジしてはいけない。現在の自分の立場でジャッジする権利はない」と考えるようになりました。なぜなら人は生きる時代を選ぶ事が出来ないからです。

P82
昭和天皇は国としての意思決定をするときに、事前にいろいろと意見や注意はするが、一旦政府が意思決定をするときに、事前にいろいろと注意はするが、一旦政府が決定したことについて、拒否するということはありませんでした。自分は立憲君主だという意識が強かったからです。例外は2.26事件と終戦の時の二回だけです。

P94
辺見:終戦後、昭和天皇は疎開中の皇太子に手紙を送っていますね。それには、日本が戦争に負けた理由がはっきり書かれてありました。
保阪:二十年九月九日の手紙です。当時、皇太子は十一歳でした。手紙にはこのように記されています。
「我が国人が あまりに皇国を信じすぎて 英米をあなどったことである
 我が軍人は 精神に重きをおきすぎて 科学を忘れたことである
 明治天皇の時には 山形(有朋) 大山(巌) 山本(権兵衛)等の如き陸海軍の名将があったが 今度の時は あたかも第一次世界大戦の独国の如く 軍人がバッコして大局を考えず 進を知って 退くことを知らなかったからです(以下略)」

P100
終戦時の感想 二首
海の外(と)の陸(くが)に小島にのこる民のうへ安かれとただいのるなり
爆撃にたふれゆく民の上をおもひいくさとめけり身はいかならむとも

P109
戦後の巡行・・・広島訪問の際に詠まれた歌
ああ広島平和の鐘も鳴りはじめたちなほる見えてうれしかりけり

P111-112
保阪:資料を読んで知りましたが、帰国してきた孤児に「どこから帰ってきたの」と聞いたら「サイパンです」と答える子がいるわけ。そうすると、天皇は黙ってしまったという。サイパン島の戦いの悲惨さを知っているからなんですね。非常にデリケートな天皇の一面を知って驚きました。
辺見:当時の巡行の場に居あわせた人に話を聞くと、子どもたちは、天皇がさほど偉い人だという意識がないから、ほっぺたをくっつけてきたりするんですって。天皇が施設から帰るときも、自分のおじさんを見送るみたいに、「さよなら、さよなら」といつまでも車を追っかけたりもした。それが天皇にとって驚きなわけです。おそらく自分の子にも、そんな風にしたわれたことがないから。だからでしょうか、こんな歌を詠まれています。
福岡県和白村青松園
よるべなき幼子どももうれしげに遊ぶ声きこゆ松の木の間に
佐賀県因通寺洗心寮
みほとけの教まもりてすくすくと生ひ育つべき子らにさちあれ

P175
ホテル・クリヨンよりコンコルド広場を眺む
この広場ながめつつ思う遠き世のわすれかねつる悲しきことを
(中略)
コンコルド広場ではフランス革命の最中の1793年に、ルイ16世と王妃マリー・アントワネットがギロチンで斬首されています。「遠き世」というのは歴史への思いでしょう。

P197
昭和天皇はリンカーン大統領が好きだったそうだ
実際に、昭和天皇は太平洋戦争の期間も、このリンカーン像を自分の政務室に飾っていたそうです。侍従が「それを見て、皆がうるさいことを言っていますよ」と天皇の耳に入れても、「いや、いいのだ」と、言ってそのまま掲げていらしたそうです。
辺見:昭和天皇は随分リンカーンを尊敬なさっていたのですね。
保阪:敵国のかつての大統領の像を、戦争の最中にも飾っていた。おそらく奴隷解放政策などに、強い畏敬の念を抱いておられたのでしょう。

P220
しかし、この年(在位60年記念)、終戦記念の8月15日に、靖国神社に関してはっきりと心情を述べられた歌があります。
八月十五日
この年のこの日にもまた靖国のみやしろのことにうれいはふかし

「靖国のみやしろのこと」と靖国神社問題を指して、「うれひはふかし」と不快感を示されています。「この年のこの日にもまた」と畳みかけるようにも詠まれていて、このようなお歌はめずらしいですよ。
保阪:昭和五十四年にA級戦犯の靖国合祀が公になりましたが、昭和五十年を最後に昭和天皇は参拝されていません。この合祀について天皇はかなり不快感を持っておられた。
しかし、その後も歴代内閣は参拝を続けた。

P227
沖縄への天皇の思い・・・62年に沖縄訪問が決まったのに、手術のため行けなかった
辺見:戦後、巡行を始めて、四十六の都道府県は隈なく行かれたのに、米軍統治下の沖縄だけは訪ねることができなかった。このことは、天皇にとって最後まで心残りであられた。そこでこう詠まれています。

思はざる病となりぬ沖縄をたづねて果さむつとめありしを

沖縄にいくことが天皇としての自分の責任だとはっきり歌われている。天皇は沖縄には特別なお気持ちを抱いておられた。

【ネット上の紹介】
昭和天皇が遺した一万首とされる御製には、戦乱から繁栄へと変化を遂げた時代の色が、そして波瀾に満ちた天皇自身の人生が投影されている。昭和史に精通した作家と歌人が、百七十首余を徹底討論。昭和天皇の新たな実像が浮かび上がる。
[目次]
第1章 若き摂政宮の時代―大正年間;第2章 軍部の台頭―昭和初年代;第3章 いくさの時代へ―昭和十年代から敗戦まで;第4章 主権回復への道のり―昭和二十年代;第5章 高度成長と皇太子のご成婚―昭和三十~四十年代;第6章 大いなる昭和の終焉―昭和五十~六十年代

「ふしぎなキリスト教」橋爪大三郎/大澤真幸

2012年06月25日 22時15分32秒 | 読書(対談/鼎談)

2012年 第5回 新書大賞受賞。 中央公論2012年3月号
内容も濃くて、よくできている、と思う。

P48
そもそも、罪とは何か。罪を定義するなら、「神に背くこと」です。(中略)
キリスト教だけが、これに加えて、原罪という考え方を持っている。(中略)
人間そのものが間違った存在であることを、原罪という。

P67
大澤 祈りの最後に「アーメン」という言葉をつける場合が多いですね。これはどういう意味ですか?
橋爪 これはもともとユダヤ教のもので、キリスト教、イスラム教にも伝わっているけれど、「その通り、異議なし」という意味です。新左翼が集会で「~するゾー」「異議ナシッ!」とやってるけど、あれと同じです。
大澤 「アーメン」というのは、人の言うことを確認し、合意することで、いわば反復するような言葉なんですね。

P88
偶像崇拝がいけないのは、偶像だからではない。偶像をつくったのが人間だからです。人間が自分自身をあがめているというところが、偶像崇拝の最もいけない点です。

P198
隣人愛のいちばん大事な点は、「裁くな」ということです。人が人を裁くな。なぜかと言うと、人を裁くのは神だからです。人は、神に裁かれないように、気をつけていればいい。神に裁かれないためには、自分がほかの人を裁かないということです。愛の中味はこれなんです。
(死刑廃止論がキリスト教圏で多いのは、これが理由か?byたきやん)

P256
東方教会と西方教会が分裂したのは、スポンサーであるローマ帝国が、テオドシウス帝の死後、東西に分裂したからです。(中略)「正統」教会も「カトリック」教会も、「本物」の教会の意味。温泉まんじゅうの「元祖」と「本舗」のようで、どっちがほんものかわからない。

P262
八木さんが強調していたけれども、西ヨーロッパで人びとが、キリスト教に改宗する以前に信じていたのは何かというと、ドルイド教である。ドルイド教はもともと、ケルト人の宗教で、ケルト社会、ドルイド教の祭司たちの社会的地位はきわめて高かった。そのように、宗教の権威を認めていたので、キリスト教に改宗しても、王たちが聖職者や教会関係者をことのほか尊敬し、優遇する素地があった。

P304
利子は、キリスト教徒の間ではもともと禁じられていました。とりわけ、中世には厳しく禁じられていた時期があって、利子を取ることは最大の罪の一つで、神の意志に反するものだとされていた。金貸しは神の国に絶対に行けないと考えられていました。(中略)
これはもともと、ユダヤ教の律法から始まった。ユダヤ教は、利子を取ってはいけないのだが、それはユダヤ教徒同士の場合で、異教徒から取ることは禁止されていなかった。だから、キリスト教徒は、ユダヤ教徒からお金を借りればいい、利子を払って。
(これが「ベニスの商人」ベース部分と思われる)

先日、「聖書を語る」を読んだ。
比較したら、「聖書を語る」の方が、親しみやすい内容。
今回の「ふしぎなキリスト教」の方は、広範囲で構成も練れている。
ただ、全容を理解するには、それなりの知識が必要。

【ネット上の紹介】
日本人の神様とGODは何が違うか?起源からイエスの謎、近代社会への影響まですべての疑問に答える最強の入門書。挑発的な質問と明快な答え、日本を代表する二人の社会学者が徹底対論。
[目次]第1部 一神教を理解する―起源としてのユダヤ教(ユダヤ教とキリスト教はどこが違うか;一神教のGodと多神教の神様;ユダヤ教はいかにして成立したか ほか);第2部 イエス・キリストとは何か(「ふしぎ」の核心;なぜ福音書が複数あるのか;奇蹟の真相 ほか);第3部 いかに「西洋」をつくったか(聖霊とは何か;教義は公会議で決まる;ローマ・カトリックと東方正教 ほか


「聖書を語る 宗教は震災後の日本を救えるか」中村うさぎ/佐藤優

2012年06月13日 21時30分56秒 | 読書(対談/鼎談)

「聖書を語る 宗教は震災後の日本を救えるか」中村うさぎ/佐藤優

この二人が聖書を語る!
まさに異色対談。いったい共通点があるのか?
・・・実は共通点があるのだ!
佐藤優さんは同志社大学神学部、中村うさぎさんも同じ同志社大学英文科卒業。
(年齢も近い、中村うさぎさんが4回生のとき、佐藤さんは1回生)
二人ともクリスチャンで、中村うさぎさんバプテスト派、佐藤優さんカルヴァン派。
そんなわけで、けっこう深い話が展開する。
いくつか文章を紹介する。

P22
佐藤 マルコ、マタイ、ルカの三つの福音書を「共観福音書」といい、これらは同じ歴史観、同じアプローチによって書かれています。ヨハネによる福音書はまったく別の世界観にもとづくテキストです。これはロシア正教など東方教会に大きな影響を与えました。ドストエフスキーの作品もヨハネによる福音書の影響を強く受けている。それに対して、カトリック、プロテスタントは三つの共観福音書の影響が色濃いのです。
中村 うん、確かにヨハネは毛色が違うね。何しろ、冒頭の文句からして特徴的だよ。「初めに言があった」という有名な出だし。もう、あの出だしで引き込まれちゃう。ヨハネには、そういう魔術的な魅力があるよね。

P42
佐藤 旧約聖書はヘブライ語で、新約聖書はギリシア語です。(中略)
そしてヘブライ語からギリシア語に訳されたときに、けっこうたくさんの誤訳が生じた。典型的なのが処女降誕の「処女」。ヘブライ語では単に「年頃の女」だったのに、ギリシアには処女神であるアルテミス信仰があるものだから「処女」と訳しちゃった。
中村 「処女マリア」は誤訳だったんだ!
佐藤 そう。それが教義として定着してしまったわけです。マリアはイエスを産む前も処女だけど、産まれた後も処女である、と。

P169
中村 今でいえば、バチカンにいる法王が世界中の信者を束ねていて、非常に父権的だよね。けれどもプロテスタントは、ある種の擬似家族的な感情の下に繋がろうとする傾向があるじゃないですか。
佐藤 おっしゃるようにカトリックの協会組織は父権的で、だからこそバランスを取るためにマリア崇拝が出てくるんですよね。正教会もそうだけど、カトリックは裁きの要素が強くて、信者にすれば、おいそれとは頼みごとも出来ない。それでマリアが駆り出されてくるわけ。それでカトリックの場合、神学的には女性の地位が圧倒的に高いんですよ。
中村 そうなの?
佐藤 どうしてかというと、十九世紀の終わりに「マリアの無原罪の昇天」というのを確認したんです。
中村 そんなもの、どうやって確認できるの?(笑)
佐藤 第一バチカン公会議で決めたんです。(中略)だからマリア様はすでに天国に行っておられる。今のところ、天国にいるのはイエスとマリアの二人しかいないことになっているんです。
中村 え?ペテロも門番として天国にいるんじゃないの?
佐藤 ペテロがいるのは煉獄の門番をしているんです。最後の審判を受けて初めて天国に入るわけで、今は皆と一緒に煉獄で控えている。(中略)
佐藤 プロテスタント教会の場合はマリア論ってないですから。
中村 ああ確かにない。マリアについてはほとんど習ってないもんね。単にイエスを産んだ母親というだけの位置付けで、マリアを神格化するような話はプロテスタントにはないわけだ。
佐藤 最初はあったんだけども、カトリックがマリアを神格化していくと、プロテスタントはグーッと引いた。

P179
(かたわたの編集者に)インクは大丈夫ですか?
――黄色が不足していると言われてますけど。
佐藤 黄色がないとエロ雑誌が困るらしいね。
中村 ああ、肌色が出ないから?
佐藤 乳首の色が出ないんですって。もちろん乳首は黄色じゃないけど、黄色のインクが重要なんだって言ってた。
中村 ヘンなことも知ってるね(笑)。
佐藤 乳首の色がちょっと緑っぽくなったりするだけで、本の売上にすごく影響するって言ってました。
中村 確かにそうだろうな。うん。

【著者紹介】
佐藤 優 (サトウ マサル)  
1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了。著書に『国家の罠』(毎日出版文化賞特別賞受賞)、『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞)など多数
中村 うさぎ (ナカムラ ウサギ)  
1958年福岡県生まれ。作家・エッセイスト。同志社大学文学部英文学科卒。コピーライター、雑誌専属ライターを経て、小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
【ネット上の紹介】
クロノスとカイロス、キリスト教は元本保証型ファンド、「新世紀エヴァンゲリオン」の最終結論、『1Q84』は男のハーレクイン、日本は近代以前かポスト近代か、宗教に何が出来るのか…。共にキリスト教徒の二人が火花を散らす異色対談。

[目次]第1章 「聖書」を語る(文学部と神学部の異種格闘技;終末遅延問題;クロノスとカイロス;キリスト教は元本保証型ファンド;今度は「使徒言行録」を読みましょう);第2章 「春樹とサリンジャー」を読む(聖書から謎の福音書「Q」へ;第二の月はチワワ!?;「新世紀エヴァンゲリオン」の最終結論;『1Q84』は男のハーレクイン;それでも村上春樹は役に立つ;閉経女は逆襲する:フラニーと「ナム・アミダ・ブツ」;聖なるものと俗なるもの:太ったおばちゃんがキリスト;キリスト教徒でないのは狼男;原罪は「セックス」ではなく「自意識」);第3章‐1 「地震と原発」を読む―チェルノブイリ、そして福島(あの日、揺れて感じたこと;チェルノブイリの既視感;日本は近代以前かポスト近代か;若い世代にもデジャヴュが;全体主義のさじ加減;天皇のビデオメッセージ;宗教に何が出来るのか;神様とはズレである;否定して最後に残るサムシング;ロシアでC・ディオールは流行らない;ライプニッツのモナドで繋がる;地震は天罰か天譴なのか);第3章‐2 「地震と原発」を読む―日本人を繋ぐものは?(日本人を繋ぐ「宗教的なるもの」;グレートマザーが日本を救う;聖母マリアの無原罪昇天;大東亜共栄圏はモナドロジー;国家総動員法は誤解されている;人間の内側と外側を繋ぐおmの;スピリチュアルと伝統宗教;「私の喪失」と「私の意見」;「ニガヨモギ」と「メメント・モリ」)


「日本共産党VS.部落解放同盟」筆坂秀世/宮崎学

2011年08月24日 22時53分17秒 | 読書(対談/鼎談)


「日本共産党VS.解放同盟」筆坂秀世/宮崎学

学生時代から不思議に思っていた。
共産党と解放同盟は、なぜ仲が悪いのか?
この疑問に答える本は意外と少ない。(単に、左翼どうしだから、では芸がない)
昨年秋にこの本が出版された時、チェックしていた。
図書館に入るかな、と思って待っていたが、結局入荷しなかった。(何らかの理由で除外されたのでしょう)

では、さっそく文章を紹介する。
なぜ対立するようになったか?おもいっきり(はしょって)超簡単に説明すると・・・
P7
直接のきっかけは、この年(1965年)の8月にだされた同和対策審議会の答申をめぐる評価だった。(中略)
ようするに、高度経済成長にもとり残されていた被差別民が、政府の同和対策を利用して、生活の改善・向上をつうじて差別を打破しようとしたのにたいして、それは独占資本に丸めこまれるものだ、だまされるな、と共産党が反対したという構図である。(中略)
1974年(昭和49年)9月から11月にかけて、兵庫県の八鹿・朝来(ようか・あさご)を舞台に同和教育をめぐる対立が激化し、八鹿高校では、解放同盟員1000人あまりが暴力をまじえて教職員を糾弾する事態に発展し、対決は決定的なものとなっていった。(中略)
こうして、共産党は解放同盟を「利権暴力集団」ときめつけ、解放同盟は共産党を「宮本差別者集団」と規定するという修復不能の敵対関係におちいっていったのである。


以上、これで終了してもよいのだけど、本書ではここからさらに、歴史を振り返りながら、詳細な検討をしていく。(ホンネ・トーク全開)

P34
封建制確立の課程で、支配権力によって民衆にたいする分断支配のために差別が政治的につくりだされた、と。
1980年代半ばまでは、この近世政治起源説が定説として信奉されていたから、差別は権力支配の道具であるということが自明のこととされていたのである、と。(私は主に70年代を学生時代としておくったので、学校でそう習ったように記憶している・・・byたきやん)
だが、近年、差別を中世までさかのぼって考えるべきだというとらえかた、さらにはケガレ観念や不浄観念などの民衆意識に起源を求めていこうとするとらえかたがあらわれてきた。全体としては、差別には民衆意識の層と政治支配の層との両方があり、その両方をとらえつつ、その関連を考えていくことが必要になっている、といえよう。

問題と言えば、『地名総鑑』が有名だけど、P40-42で、触れられている。
宮崎「(前略)それを買って就職差別に使う、使わないという話になるが、被差別の子弟を排除して何か利益になることはあるのか。独占資本側のメリットは、なにもなかったじゃないのか」
筆坂「ぼくもそう思う」
宮崎「とくにメリットはないと思うんです。運動の到達段階で、たまたま1975年は、反独占と反差別が、連動した闘争のテーマとして、割合と入りやすい全般的な状況があり、この問題を利用したんだと思いますよ。じつはよく考えてみると、あんな本をあんな高い値段で買わされたほうがたまらんでしょう。5万円という値段で押し売りされていたというのが実態だったんじゃないんですか」


P44
そして、筆坂さんのいう「無理筋の話」の起源には、民衆はいつも正しくて、悪いことが起こるのは権力のせいだという、戦前共産党以来の左翼共通の神話があったんだと思うんですよ。民衆はもともと差別なんかしないのに、権力が人民を分断するために差別をもちこんだという話になるわけで、そこから、権力と闘って政治を変えれば差別はなくなるかのような方針がでてくる。

P65
権力のありかたと差別の問題とは、まったく別問題ということです。じっさい、左派が権力を奪取したところのほうがむしろ差別の解決から遠ざかっている。ロシアもそうだし、北朝鮮もそうだし、中国もそうでしょう。権力をだれがとるかということと、差別の問題はあまり関係のないことなんだということです。そして、その権力の性格がどういうものであれ、権力性が強い権力、独裁制が強い権力ほど、差別的になるんじゃないか、という気がする。

P92
1970年(昭和45)末には、住井すゑ原作・今井正監督の映画『橋のない川』第二部が差別を助長する映画だとする解放同盟の指摘から、各地で上映阻止闘争がとり組まれ、この映画を支持する共産党系の労働組合員、学生などとの衝突が起こった。

P151
たとえば、1928年(昭和3)の時点では外との通婚率が3%でした。いまは80%を超えています。結婚差別の解決が1番解消につながるわけですから、そういう意味では、すごく運動の成果がでている。もちろん、一般地区出身側の親元・親戚から絶縁された例も多いことを知っておくことは重要です。また、このことと関連して、進学率にしてもその裏にある中退率との関係を考慮に入れない議論は皮相である、ということは断っておかなければならないことですけど・・・・。

ここから、少し駆け足になる。(ひとつひとつ紹介すると、膨大な文章量になるので)
P175
幕末、長州藩のとった政策「屠勇取立」の話は興味深い。

P180
解放令に対する反対一揆の話も興味深い。

P190-191
コンプライアンスが国を滅ぼす・・・これも興味深い。

P201
麻生太郎の野中広務氏にたいする差別発言・・・読んでみて。

P205
1950年代、60年代には「非行は同和教育の宝だ」といっていた。
1970年代に入ってからは、「非行は差別に負けた姿だ」といわれるようになった。

P209
大衆団体が割り込めなかった分野では、利権は官僚や政治家のやりたい放題だったってことですよ。そのとき、問題は、ややこしい問題だし、それを解放同盟のほうが全部仕切ってくれるわけだから、官僚のほうからしたって、非常に好都合な存在だったわけでしょう。そういう点では、利権が解放同盟に浸透する必然性があったんだと思いますよ。

P227
90年代以降、共産党の現状について・・・
やがて、党員・活動家の平均年齢がどんどんあがっていき、また女性(なかでも主婦)の比重が高くなっていく。その女性党員・活動家のなかからやがてヤマギシ会とエホバの証人に流れていく人たちが相当数出てくるようになったという。(中略)
また、議会主義党になっていくにつれ、専従以外の党組織のリーダーが「地方議員」「弁護士」「医師」「教員」などインテリ専門職、亜インテリ中間層にシフトしていった。そこから、党組織がプチブルジョア化し、「人並み」意識・「ねたみ」意識が温存、培養されていったと考えられる。この面においても、共産党活動家と支持層の意識のありかたが変化していった。


【ネット上の紹介】
共産党とは、ともに近代日本の汚辱のなかから生まれ出た栄光の結社であった。それがなぜ、どうしようもない敵対関係に陥ってしまったのか。同和対策は毒まんじゅうか?糾弾イコール暴力か?利権とはなにか?共産党と解放同盟の蜜月がひび割れ、暴力的対決に至った真相をめぐってかわされる両氏の議論は、日本の社会運動のあり方をめぐる本質論となる。

[目次]
第1章 蜜月の時代に生まれていた対立の萌芽;
第2章 同和対策は毒まんじゅうか―解放同盟内での対立;
第3章 矢田事件、八鹿事件―同盟と党の暴力的対立;
第4章 全面的な路線対立・組織対立へ;
第5章 解消論と利権問題;
補論 日本共産党と解放同盟対立の歴史的・社会的背景

筆坂 秀世 (フデサカ ヒデヨ)  
1948年兵庫県生まれ。元共産党常任幹部会委員。高校卒業後18歳で日本共産党へ入党。95年参議院議員初当選。党ナンバー4の政策委員長、書記局長代行をつとめる。2003年に参議院議員を辞職。2005年離党
宮崎 学 (ミヤザキ マナブ)  
1945年京都生まれ。父は伏見のヤクザ寺村組組長。早稲田大学中退。早大在学中は共産党系ゲバルト部隊隊長として活躍。週刊誌記者、家業の土建業を経て、96年に自身の半


「大津波と原発」内田樹/中沢新一/平川克美

2011年07月29日 23時32分37秒 | 読書(対談/鼎談)


「大津波と原発」内田樹/中沢新一/平川克美

原発推進派、肯定派の人たちは、恫喝が好き。
曰く、「今の便利な生活をあなた方は放棄する気があるのか」
曰く、「原発をなくしてしまったら日本のエネルギー自給率はたいへん低くなってしまう。日本の発電量の30パーセントを原子力発電が占めているわけだから、それがなくなったら産業全体が沈滞していって日本経済はどんどん縮小する」

廃棄物処理問題未解決のまま見切り発車、国策として強引に進め、この泥沼状態。
そのあげく、国民を恫喝してどうすんねん。(怒)
では、いったいどうしたらいいのか?
推進派、反対派の不毛論争(中沢新一氏曰く「昔の日蓮宗と浄土宗の論争みたい」)じゃなく、
公平な立場の知識人による、本質をとらえた議論、未来への提言を聞きたい、と思う。
そんな訳で、この本を手に取ってみた。
いくつか文章を紹介する。

P66-68
中沢「フランスなどはたいへん原発推進国で原発大国ですから、彼らはこれを自分たちの社会に持ち込むときも最初から怒れる神を扱うように慎重でした。ものすごく危険な神を自分たちの世界に持ち込んで、熱を出させようとしているのを知っているんです」
内田「そうだよね」
中沢「だから、ノルマンディの海岸に原発を建てるときにには、周辺の住民にヨウ素を配っているわけです。(中略)」
内田「まさに神域なんだ」(中略)
平川「聖なるもの、聖なる場所についての扱い方をわかっている」
内田「聖域をどう扱うかっていうことだね」
内田「フランスの原発のデザインってやっぱり神殿だよね」
平川「ああそうか」
中沢「インドの原発って見たことあるんですけれども、それはなんとシヴァのリンガの形をしているんです」
内田「えー!(笑)それはすごい。でもすさまじいエネルギーがそこからほとばしる場所だからね」
中沢「初期の原発なんですけどね、郵便切手にもなっていて、とても有名な原発です。シヴァの男根の形をした原発なんて、宗教学者はうっとりします。さすがインド人はインド・ヨーロッパ系だから、原子力がシヴァだって知ってるんですね」

(P50-54)
化石エネルギーとして使われたものは生活圏の中に受け入れられる形態に媒介変換されてきたわけです。化石エネルギーはたいへん有効ですし、人間の科学技術で十分コントロール可能なものです。
なぜかというと、化学反応でエネルギーを取りだすしますから、そこに関係しているのは、原子核の周りの電子の結合様式だけなんです。これは、人間が扱える範囲のものです。そのかわり利用できるエネルギー量はあまり大きくないです。
ところが原子力エネルギーというのは、そういうものとはぜんぜんちがうところからつくられてきている。なにしろ原子核に手をつけるわけですから。
原子核を結合している核力エネルギーを取りだす技術です。ところが原子核から放出されるエネルギーは今まで一度たりとも、生活圏を通過することによって媒介されていないのです。
核力からエネルギーを取りだす核融合反応というものは、もともと太陽でおこなわれているものです。
それこそ46億年前に地球は太陽の一部がもぎとられるようにしてできた星で、しだいにマントルと地殻の内部構造が形成された。この初期の地球でおこなわれているのが、核分裂・融合のプロセスです。
そのころはまだ生活圏が形成されていません。20億年前くらい前にようやく原始的な植物が出てきて、生活圏の原型みたいなものがつくられてきます。核分裂というのはようするに生活圏の外にある。
(中略)
1942年に最初の原子炉がつくられていいます。それからまだ70年しか経っていない。
たとえば火を扱う技術というのは、何万年もの蓄積を持っていますよね。人間がその技術をマスターするまでには時間がかかっている。火打ち石から、木の摩擦で火をつくるまでには、1000年近くかかっています。ひじょうにゆっくりと発展をおこなったわけです。
でも原子力については、まだ70年しか経っていない。70年というのはどういう年数かというと、ソビエト連邦の持続期間とだいたい同じです。(中略)
まだ70年しか経っていない技術だということを忘れて「安全だ!安全だ!」と言いつづけてきたというのは、信じられないような神話力です。
たしかに文明史というのは、毒物を取り入れて薬物に変えるということのくり返しなんですけれどもね。(中略)
それが原子核の中の原子の結合エネルギーを取りだそうということになれば、今まで生態圏になかったエネルギー形態ですし、副産物もいっぱい出てくるわけですから、これはりっぱな毒です。生態圏の外で起こっている現象ですから、生態を破壊していくことはまちがいないですし。
人体だって多大な影響を受けるでしょうし。ところが、この毒物を人間の世界のまっただ中に据えることに関しては、70年ぐらいの技術ではとうてい解決し得ない問題がたくさんある。そのことは容易に想像できます。


P115
いちばん刺激的だったのは、中沢さんがエネルギー革命について説明してくれたときに、「一神教的」という言葉が出たことです。それを聞いたときに、自分の中にあった、日本の原子力行政に対して抱いていた何とも言えない違和感の理由がわかったような気がしました。
今回の原発事故の根本のところにあるのは、現代日本人の「霊的な力」に対する畏怖の欠如ではないかと思ったのです。(中略)
どうして人類が「死霊」や「鬼神」という概念を持つようになったのか、その由来をぼくは知りません。けれども、その機能ならわかります。それは「センサーの感度を上げろ」ということです。もし生き延びたいと思ったら、目に見えず、耳にも聞こえず、匂いも、触感もしない「それ」を感知できるようにセンサーの感度を最大化しろ。それが「霊的なもの」という概念から導かれるとりあえず唯一の実践的命令です。(中略)
ぼくは今回の震災と原子力事故については、「アラームの劣化」ということが大きくかかわっていると思います。そして、日本人が21世紀を生き延びるためには、もう一度「霊的再生」のプログラムについての対話が始まらなければならないだろうと思っています。


【ネット上の紹介】

[要旨]

未曾有の震災後に浮かび上がる、唯一神のごとき「原発」。原子力という生態圏外のエネルギーの憤怒に、われわれはどう対峙し、無惨に切断された歴史を転換させていくべきなのか。白日のもとに晒された危機の本質と来るべき社会のモデルを語り尽くす。

[目次]

1 未曾有の経験をどう捉えるか;2 津波と原発事故はまったく異なる事象である;3 経営効率と排除される科学者の提言;4 原子力エネルギーは生態圏の外にある;5 原子力と「神」;6 「緑の党」みたいなものへ;補 私たちはどこへ向かうべきか―質疑応答に関連して

内田 樹 (ウチダ タツル)  

1950年、東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、神戸女学院大学名誉教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。著書に『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書、小林秀雄賞)、『日本辺境論』(新潮新書、新書大賞二〇一〇)など

中沢 新一 (ナカザワ シンイチ)  

1950年、山梨県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。人類学者。著書に『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞評論・伝記賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)、『フィロソフィア・ヤポニカ』(伊藤整文学賞評論部門)、『カイエ・ソバージュ全5巻』(5巻で小林秀雄賞)、『アースダイバー』(桑原武夫学芸賞)など

平川 克美 (ヒラカワ カツミ)  

1950年、東京都生まれ。早稲田大学理工学部卒業。1977年、翻訳サービスと日米IT関連企業へのローカライズサービスを提供する「アーバン・トランスレーション」設立。1955年、ビジネスサポートを主業務とするBusiness Cafe,Inc.(シリコンバレー)設立に参加。2001年、「株式会社リナックスカフェ」設立、現在、代表取締役。2007年、「ラジオカフェ」を創業、同社取締役プロデューサーとしてラジオパーソナリティーを兼務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


「無力感は狂いの始まり」(「狂い」の構造2)春日武彦/平山夢明

2011年07月21日 22時45分42秒 | 読書(対談/鼎談)


「無力感は狂いの始まり」(「狂い」の構造2)春日武彦/平山夢明

以前、「「狂い」の構造」を読んだ。→「「狂い」の構造」春日武彦/平山夢明
これは、その続編。(続編が出るとは、言いたい放題だったけど、わりと好評だったんですね)
さて今回も、そんな「言いたい放題」の対談。
でも、内容はちょっと薄味になったような。(「下品さ」は同じだけど)
前回の方が、面白かったように思う。(単に、気のせい?)
例によって、いくつか文章を紹介する。

(P13)
「今の日本が病んでいる最大の原因は心身ともに貧乏になったこと。特に経済的な理由が大きいんでしょう?」
「そして心の病が駆け込み寺になっている」
「(中略)でも、日本人って何だかんだ言っても我慢するよね。慣れるっていうか」
「不幸慣れする」
「それでぼやくの。母ちゃんっぽいんだよね。母ちゃんって、いつもおやじの文句ばかり言っているでしょう。嫌なら別れりゃいいのにと思うんだけど」
「ぼやきつつ耐えるんだよね」


(P19)
「自己肯定の出来ていない人は、基本的に自分を被害者だと規定するんだよね。被害者だから、自分は善人なの。社会のシステムなり、両親とか世の中の人たちの不理解によって、私はこういう不幸な状態にいるんですと」

(P28-29)
「さっきトラウマを擬人化しましたけど、それ自体がひとつのイニシエーションになっちゃってるんですよね。それを越えれば次の私になれる。無視することはあり得ない。乗り越えれば私は大人になれる、マトモになれるなんて、イニシエーションに変えて、結局トラウマにしてしまうんでしょう?ああ、もう自分とは切り離せない、捨てられない、みたいな。ところで一般人が、トラウマと戦って勝つ、その勝率はどのぐらいなんでしょうか?」
「まず、勝てない。そもそも勝ち負けって発想のところで負けている」


(P70-71)
「見境なく怒鳴り声を出す人間って、獣になってるわけでしょ。人間としての和解とか理解を超えてさ。獣になった瞬間に強くなるんだよ。人間を捨てて、わーっとやった瞬間に、こっちも中に入ろうという気はしなくなるもの。危ないから。(中略)その段階でバランス的には負けているんだよね」

(P172)
「アル中の治療ってさ、言い聞かせたってダメだから」
「どうするの?」
「本当にひどい目に遭わないとダメだから、ちゃんと「底つき体験」という言葉があるの。本当に身に染みないとダメだから。でも、底のつき方というのが、離婚されるはわ、職は失うわ、刑務所に入るわ」
「強姦されるとか」
「本当にひどい目に遭わない限り無理なんだよ。それでも、暫く経つとまた元の木阿弥になるのが多い(略)」


以上、いかがでしょうか?
気が向いたら、読んでみて。

【ネット上の紹介】
秋葉原通り魔事件、婚活殺人から巷の怪事件まで―正気じゃない!人間の深層に眠る狂気の種を抉り出す、伝説の不謹慎放談、まさかの第2弾。

[目次]第1章 無力感が人を狂わせる(狂気の世に思うこと、再び;平山夢明的怪事件 ほか);第2章 犬吠え主義者たちの饗宴(泣くことについて、再び;品のない狂気と大吠え主義 ほか);第3章 鬱と暴力と死体(遊園地で鬱は治らない;ローマ字ニュアンスで“UTSU” ほか);第4章 正論という狂気(嫌な話が読みたい!;ひどい物語の宝庫「南部文学」 ほか);第5章 ゲスさが足りない!(幼年期は愚行すべき!;幼児期に経験する「殺し」は重要 ほか)

著者紹介
春日 武彦 (カスガ タケヒコ)   
精神科医。1951年、京都府生まれ。日本医科大学卒業。都立松沢病院、都立墨東病院勤務を経て、’07年より東京未来大学教授 
平山 夢明 (ヒラヤマ ユメアキ) 

1961年、神奈川県生まれ。’94年、『異常快楽殺人』(角川ホラー文庫)で作家デビュー。『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)で日本推理作家協会賞受賞、『このミステリーがすごい!』’07年版国内編第1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


「「狂い」の構造」春日武彦/平山夢明

2010年11月28日 09時36分14秒 | 読書(対談/鼎談)


精神科医・春日武彦さんと人気作家・平山夢明さんの対談。
・・・と言うより、放談でしょうね。(もう言いたい放題)
さすがに有名精神科医と作家なので、切り口や比喩がするどい。
本音で迫り、核心をガンガン衝いてくる。
一部紹介する。

P58
平山:結局、いつも疑問に思うのは、そんなに精神医療とか、カウンセリング力っていうのは、人間の根本を激変させるほど強力なものなんだろうかと。
春日:いやあ、ないない、ないない。
平山:例えば、『蜘蛛の糸』のカンダタのように異常犯罪者が心から悔い改めたりするんだろうかと思うんだけど、そんなことはあるんですか?要は機能不全みたいなものでしょう?
春日:だから、俺なんか人格障害のヤツなんかを扱ってても、治そうといいう気もないし、治ると思ってないし。じゃあどうするかって、相手が年取るのを待つわけだから。その間をまあ、そんなに外さないでいてくれりゃあいいやと思ってるんだけど。
平山:そうだね。例えば非常に残虐な殺人を犯してしまった人間に対して、「育て直しをする」とか「カウンセリングを行う」とかっていうことで、社会復帰させて、「今はもう立派な人になりました」というようなことがありうるだろうかっていう。
春日:それは嘘だね。愚者のロマンよ。
平山:ないすよねえ・・・と思うんですよ。で、なぜそう思うかといったら、本当に罪を自覚した場合は、自殺しちゃうんじゃないかと。そうでしょう?
春日:ま、生きるということは、いかに自己正当化を図っていくか、その工夫と実践の日々ですからね。


P123
春日:みんなは100万画素なのにさ、例えば殺人を犯したヤツだけは、なんか70万画素になってる感じ。画質が粗くなってる印象がある。
平山:ああ、それはあるかもしれない。結局、やっぱりある種の感度を鈍らせてるわけでしょう。
春日:そうそう。70万画素で、しかもポツポツとドットが抜けてる。
平山:それは、表に出ちゃうんだよね。やっぱり。
春日:で、最終的にはさ、一種の安直の道を選んでるわけだから、あらゆることに投げやりになってくるんだよね。


【ネット上の紹介】
給食費未納問題、赤ちゃんポスト、光市母子殺害事件から伝説的連続殺人鬼まで。怠慢で、尊大で、鈍感で、無意味…世界はついに狂気のざわめきに満たされた。どいつもこいつもバルンガ病だ。「このミス1位」作家と精神科医が超危険な狂気の川を遡り、その源流を目指す。
[目次]
第1章 「面倒くさい」が「狂い」のはじまり(怠慢は人を殺す;交通事故現場は狂気の溜まり場 ほか);第2章 バルンガ病の人々(給食費を滞納する王様たち;「黙って俺の言う通りにしろ!」 ほか);第3章 “雑”な狂人たち(山口県光市母子殺害事件とドラえもん;膝がカクッと抜ける! ほか);第4章 “ハイ”になってしまった人々(有吉佐和子が『笑っていいとも!』をジャック;なぜ盗作するのか? ほか);第5章 殺す狂人たち(人を殺す瞬間;人を食べるということ―ゲイン、ダーマー ほか)
著者紹介
春日 武彦 (カスガ タケヒコ)  
精神科医。1951年、京都府生まれ。日本医科大学卒業。都立松沢病院、都立墨東病院勤務を経て、’07年より東京未来大学教授
平山 夢明 (ヒラヤマ ユメアキ)

1961年、神奈川県生まれ。’94年、『異常快楽殺人』(角川ホラー文庫)で作家デビュー。『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)で日本推理作家協会賞受賞、『このミステリーがすごい!』’07年版国内編第1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)