「世界史のなかの昭和史」半藤一利
読み返し。
20世紀には特筆すべき悪人が2人いる。
ヒトラーとスターリンである。
この2人に焦点を当てながら昭和史を考える。
P19・・・レーニンの遺書
「スターリンは粗暴すぎる。そして、この欠点は、われわれ共産主義者の間では十分我慢できるものであるが、書記長の職務にあっては我慢できないものとなる」
P22・・・スターリンの言葉
「1人の人間が死ぬときは悲劇だ。何万人の人間が死ぬときは統計だ」
P226・・・山本五十六の判断
「日本の海軍軍備とくに航空軍備の現状をもってしては、対米英戦争には勝算はまったくない」(だからドイツとの軍事同盟に反対、と)
P230
国際情勢の動向や国力の限界を無視した、この軍人特有の功名心と名誉心とが何をもたらしたか。
P357・・・松岡洋右への評(米内光政覚書)
「物事を客観的に判断しないで、自分の主観を絶対に正しいと妄信するから危険である」
ヒトラーと松岡洋右
P436
当時の日本人は、スターリンという独裁者およびソ連人というものを、まったくわかっていなかった。端的にいって、日露戦争の復讐というソ連人が根に深くもちつづけていた対日本への心理的動機を、ついに見抜くことができないままであった、ということになるのではないでしょうか。
P441
ヤルタ秘密協定を締結した時点で、この日ソ中立条約の破棄はすでに織り込み済み。
P445
日本が「ソ連仲介」という戦争終結の方法にすがりつき、努力に努力を重ね、結果としてはソ連に翻弄されたことになったのです。
(前列左から)チャーチル、ルーズベルト、スターリン
P490・・・アヘン戦争
中国は全体で30万人ほどの兵隊がいたんじゃないでしょうか。ところが攻めてきたイギリスは、軍艦数隻と兵隊2万人かそころです。それでも清国はコテンパンに負けてしまった。なぜかというと、何十万人いようと清国は封建制度で、天津省がやられても他省から助けに来ずに「天津省対イギリス」で戦ったんです。
P492
西郷隆盛や大久保利通、木戸幸一らがみんな途中で死んでるんですね。大久保さんが明治11年に暗殺されて、伊藤博文と山県有朋というとんでもない奴が権力のトップに立った。両方とも長州です。それで長州ふうの国家をつくろうとしたところ、猛反対した肥前の大隈重信や土佐の板垣退助が民権、民権とうるさいもんだから、面倒くさくなって、じゃあ立憲君主国にしようじゃないかと、そっちの方向に向かった――簡単にえばそれが明治のスタートでした。
【ネット上の紹介】
ヒトラー、スターリンら巨悪がかきまわした世界と戦前昭和史はどう関わっていたのか?昭和史を世界史のなかにおいてみると―。アジアの小さな“持たざる”島国が欧米列強の政略や戦略に翻弄された歴史を、初めて「世界史の視野から」「現代の視点で」時系列で辿る。混迷と危機を迎える現代の根っこを知り、未来を考えるために必読の“半藤昭和史三部作”完結編。青木理氏との対談「歴史は繰り返すのか?」収載。
プロローグ 歴史の皮肉と大いなる夢想―長い探偵報告のはじめに
第1話 摂政裕仁親王の五年間―大正から昭和へ
第2話 満洲事変を中心にして―昭和五年~八年
第3話 日独防共協定そして盧溝橋事件―昭和九年~十二年
第4話 二つの「隔離」すべき国―昭和十二年~十三年
第5話 「複雑怪奇」と世界大戦勃発―昭和十四年
第6話 昭和史が世界史の主役に躍りでたとき―昭和十五年
第7話 「ニイタカヤマノボレ」への道―昭和十六年
エピローグ 「ソ連仲介」と「ベルリン拝見」―敗戦から現代へ
半藤一利・青木理対談 歴史は繰り返すのか?