【ぼちぼちクライミング&読書】

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龍應台さんインタビュー記事

2016年01月29日 22時56分21秒 | 読書(台湾/中国)

昨日「台湾海峡1949」を紹介した。
以前からチェックして気になっていた作品であるが、そのような作品は他にも何冊もある。
どうして急に手にとって読みたくなったのか?
それは、台湾の選挙に絡んで、著者・龍應台さんのインタビューが掲載されたから。(2016.1.9朝日新聞)

不安を感じるのは健康的なことですが、不安が恐怖に変わると恐怖の人質になり、外交政策や経済政策を行う時に恐怖に主導されてしまう。最後は自分を傷つけ、代価を払うことにならないか心配です。

中国は日本に歴史に向き合うことを要求している。すばらしい。正しいことです。ではあなた方は文化大革命にどう向き合うのですか?反右派闘争や、多くの国民を死なせてしまった大躍進に対する態度は?抗日戦争で果たした(果たさなかった)役割についても事実を話していない。だから日本を批判する資格が足りないように見えるのです。


「台湾海峡一九四九」龍應台

2016年01月28日 21時22分05秒 | 読書(台湾/中国)


「台湾海峡一九四九」龍應台(りゅう・おうたい)著、天野健太郎訳

「古典となるべき運命」と言うフレーズがあるが、この作品のことだろう。
1945年、日本は終戦を迎えた。
それにより、日中戦争が終結。
しかし、新たな戦争が始まる。
いわゆる、「国共内戦」である。(この資料は少ないそうだ)
「戦争」と1949年を中心とした「時代」と「人々」が描かれる。
すばらしい作品、である。
ノンフィクション作品でありながら、「文学」でもある。

数々のエピソードが、様々な立場から積み重ねて語られる。
膨大な量の資料にあたり、取材も相当な人数にのぼる。

P8
本書は文学であって、歴史書ではない。私は信じている。文学だけが、花や果物、線香やろうそくと同じように、痛みに苦しむ魂に触れることができるのだ、と。

長春の包囲戦
P186
 包囲戦が始まった時点で、長春市にいた民間人は50万であったといわれている。しかし市内にはほかにも外地から流れてきた無数の難民と親類を頼る居候がいたから、総人口はおそらく80万から120万人であったろう。そして包囲戦が解かれてとき、共産党軍の統計によれば、中に残っていたのは17万人であったという。
 それほど大量の「蒸発」者は、いったいどうなってしまったのかって?
餓死者の数は10万から65万といわれ、あいだをとって30万とすると、ちょうど南京大虐殺で引用される数字と同じになる。

1945年9月2日ミズーリ号にて
P224
重光葵(まもる)のかたわらに立つ軍装の男。彼は望んでこの場所に来たのではなかった。この男は、最後の1兵卒まで戦うことを主張した陸軍参謀総長、梅津美治郎(よしじろう)である。権力を盾に「梅津―何応欽(かおうきん)協定」の調印を何応欽に強要し、華北を勢力下に置いていたのが、彼である。そして「壊滅作戦(三光作戦)」を発動し、中国の村々を焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くした――それが彼である。「七三一部隊」の創設を許可し細菌兵器を製造させた――それも彼である。関東軍総司令官を拝命したとき、梅津は「今後はますます粉骨砕身して皇恩に報いる」と厳粛に語ったという。

P360
 そう、1944年9月2日、アメリカ軍の飛行機が1機、父島で日本軍に撃墜された。海に墜落したあと、搭乗していた4名が斬首され、それ以外4名の乗組員は日本軍将官に殺され、煮て食われた。
 9人で唯一生き残ったのは、マサチューセッツ州出身で20歳になったばかりの若者だった。海を漂流していた彼は、アメリカ軍の潜水艇に救助された。
 この九死に一生を得た若者は、65歳のとき第41代アメリカ大統領となった。彼の名はジョージ・H・W・ブッシュという。

P387
つけは多すぎて払いきれず、恩は多すぎて返しようもなく、傷は多すぎて塞がることはなく、失ったものは多すぎてどう埋め合わせても追いつかない・・・・・・。

著者の言葉・・・
P5
私の目を見つめて、正直に答えてほしい――
戦争に「勝利者」はいるの?

訳者の言葉・・・
P429
本書は原題を「大江大海1949」という
「大河、大海」を意味する書名は言うまでもなく、蒋介石国民党政府が台湾へ撤退した1949年に、中国という広大な大地(とそれにつらなる大海)で荒れ狂った歴史と運命を指し示したものだ。

【感想】
あまりに濃度の高い作品で、登場人物も多い。
いずれ、再読の必要有り。

【参考リンク】
龍應台『台湾海峡一九四九』

【ネット上の紹介】
人びとが下したささやかな決断と、それがもたらした壮絶な流浪の軌跡。台湾随一のベストセラー作家が満を持して放つ歴史ノンフィクション。

[目次]
第1章 手を離したきり二度と…―父と母の漂泊人生
第2章 弟よ、ここで袂を分かとう―少年たちの決断
第3章 私たちはこの縮図の上で大きくなった―名前に刻み込まれた歴史
第4章 軍服を脱げば善良な国民―包囲戦という日常
第5章 われわれは草鞋で行軍した―一九四五年、台湾人が出迎えた祖国軍
第6章 フォルモサの少年たち―捕虜収容所にいた台湾人日本兵
第7章 田村という日本兵―ニューギニアに残された日記、生き残った国民党軍兵士
第8章 じくじくと痛む傷―一九四九年の後遺症


「今年の抱負」

2016年01月27日 22時15分29秒 | 身辺雑記


「今年の抱負は?」という記事。
1位「無駄遣いをしない」・・・ホント、そのとおり・・・老後に備えたい
2位「整理整頓を心がける」・・・そうしたいけど、なかなか出来ない
3位「質素倹約」・・・1位と対を成す抱負
4位「私生活を充実させる」・・・どうやって実行するのか?それが難しいところ
5位「夫、妻に優しくする」・・・普段やさしくしていない人が多いのか?
6位「運動をがんばる」・・・頑張りたいけど、時間がない・・・何とかやりくりしたい
7位「本をたくさん読む」・・・これも時間がないが、最低限の時間を確保したい(週2冊~3冊が目処)
8位「病気をしない・治す」・・・今のところ(まぁ)元気かな
9位「向上心を持つ」・・・健康であれば何とか維持できるか?
10位「親を大切にする」・・・既に大切にしてるつもり(主観的に)

具体的な私の抱負は、「山歩きをして足腰を鍛える・・・月2回山行を目指したい」


「戦後史入門」成田龍一

2016年01月26日 21時20分36秒 | 読書(昭和史/平成史)


「戦後史入門」成田龍一

基本的な考え方・・・歴史の解釈の問題が書かれている。
ここを押さえなさい、と。
文献も紹介されていて参考になる。
「歴史とは何か」と考える契機となる作品。

敗戦か終戦か?
P22-23
大江健三郎氏の言葉(「終戦世代のイメージ」より)
 敗戦とという言葉は、小学生のぼくの心に、破滅とか屈辱とかのイメージ、もうどうしようもない、絶望的な状態のイメージをよびおこした。
 そして、終戦という言葉は、終結とか安息とかのイメージ、働きおわって休息し再出発しよとする、もの悲しいが、静かなイメージをもたらすものだったのである。

P22
出来事の呼び方には、つねに、歴史を見る人・書く人の「解釈」が含まれているということです。

P109
バブルがはじけたのは1991年ですが、その後、日本経済は一挙に不況になります。「失われた10年」という、長い不景気の時期に入ります。
 逆に世界経済はようやくオイルショックから回復をして安定的な成長を始めたところなんですね。

沖縄戦について
P134-149
ここを紹介すると、入力文字数がいっきに増加するので、実際、自分で読んでみて。

【ネット上の紹介】
「戦後」を学ぶには、まずこの一冊から!占領、55年体制、高度経済成長、バブル、沖縄や在日コリアンから見た戦後、日米関係…これだけは知っておきたい重要ポイントを平易にレクチャー。「歴史とは何か」を考えつつ、“いま”がわかる入門書の決定版。

[目次]
第1章 戦争に負けてどうなった?占領の話(あの戦争を何と呼ぶ?
敗戦?終戦? ほか)
第2章 知ってる?「55年体制」って何?(君は『三丁目の夕日』を観たか
1958年―失われゆく記憶の世界 ほか)
第3章 経済大国?それっていつのこと?(あのころの経済の話をしよう
日本を改造? ほか)
第4章 「もうひとつの」戦後日本を見てみよう(「沖縄」の歴史から戦後を見てみよう
年表のつくられ方からちがう ほか)
第5章 歴史は生きている これからの日本(戦後が終わらない?
「ベルリンの壁」崩壊が意味するもの ほか)
第6章 歴史はひとつではないが、なんでもありでもない(歴史になるまで
歴史になってから ほか)
補章 「戦後」も70年たった…(「戦後70年」…
何が問われている? ほか)


「ひとびとの精神史」(1)栗原彬/吉見俊哉/編

2016年01月25日 21時57分53秒 | 読書(昭和史/平成史)


「ひとびとの精神史」(1)栗原彬/吉見俊哉/編

P4
 本企画は、第二次世界大戦の敗戦以降、現代に至るまでのそれぞれの時代に、この国に暮らすひとびとが、何を感じ考えたか、どのように暮らし行動したかを、その時代に起こった出来事との関係で、精神史的に探求しようとする企てである。

全部で三章ある。
内容は次のとおり。

①生と死のはざまで
 大田昌秀―原点としての沖縄戦
 大田洋子―原爆と言葉
 水木しげる―ある帰還兵士の経験
 黄容柱と朴鐘鴻―近代の成就と超克
②それぞれの敗戦と占領
 茨木のり子―女性にとっての敗戦と占領
 黒澤明―アメリカとの出会いそこない
 花森安治―その時、何を着ていたか?
 堀越二郎―軍事技術から戦後のイノベーションへ
③改革と民主主義
 中野重治―反復する過去
 若月俊一―地域医療に賭けられたもの
 西崎キク―大空から大地へ
 北村サヨ―踊る宗教が拓く共生の風景

それぞれの人物を、その道の研究者、専門家が語っていく。

【おまけ】
図書館に入荷するのを待っていたが、入ってこなかった。
取り寄せて購入した。

【ネット上の紹介】
敗戦という大転換を経て、何が変わり、何が変わらなかったのか。戦後70年の「原点」を見つめる。


ポンポン山▲678.9m

2016年01月23日 21時24分22秒 | 登山&アウトドア(関西)

ポンポン山に登ってきた。

山頂近くに、薄化粧程度の雪があった

2年前は冷え込んで、積もった雪が消えなかった

昨年はさっぱりなかった

今年はどうだろう?

山頂から愛宕山の方向を見るとこんな感じ
比叡山方面が愛宕山に比べて雪が多いように感じた


「海街diary」(7)吉田秋生

2016年01月22日 23時13分54秒 | 読書(マンガ/アニメ)


「海街diary」(7)吉田秋生

すべてが動き出した。
全てとは、三姉妹+すず、である。
喜んで良いのか、悲しんで良いのか。
なぜ悲しむかというと、「動いた」って事は、物語の終わりに近づく、ってことだから。
なんとなく「終章」が見えた気がした。(感無量)

この表情をされて落ちない男がいるだろうか?

すず達は京都にやってきた・・・この竹林はもちろん嵯峨野、

すず達のコースは次のとおり・・・
清水寺→地主神社→三年坂→二年坂→石塀小路→(抹茶パフェ)→(ここが離れている)晴明神社→(かなり遠い)渡月橋→嵯峨野・竹林→野宮神社
いずれ時間が出来たら、このとおり歩いてみたい。(けっこうハードスケジュール)

なお、P96に・・・
「じゃあ最初清水寺行って地主神社寄って
 二年坂三年坂おりてあと石塀小路?」、とある。
道順では二年坂→三年坂のように読めるが、
その逆でないと、段取りが悪い。

【ネット上の紹介】
海街ファン待望の7巻、発売です! 中学最後の年を迎えたすずに、静岡の高校から舞い込んだ”サッカー特待生”の誘い。受けるかどうかなかなか決められず悩むすずに、寄り添う風太だが・・・。一方、すずの姉たち3人も、それぞれ恋の悩みを抱えていて・・・!? 初夏の風が吹く鎌倉の街を舞台に繰り広げられる、大人気シリーズ7巻!!
 


「エチュード春一番 第1曲」荻原規子

2016年01月21日 21時24分50秒 | 読書(小説/日本)


「エチュード春一番 第1曲 小犬のプレリュード」荻原規子

新シリーズ始動!
「RDG」が終わったのは残念だけど、このシリーズも面白い。
大学生・美綾の家に、迷い犬がやって来たことから物語が回り出す。
この犬が「わしは八百万の神だ」、と。
この声は美綾にしか、聞こえない。
過去の自殺と絡めて、ミステリ仕立てで物語が展開していく。
けっこう怖い話だけど、犬と村松愛里で救われる。
以下、ネタバレありなので、未読の方ご注意。

サブタイトルが「小犬のプレリュード」となっていたので、何かの比喩か、と思っていた。
実際、犬(パピヨン)が登場するとは思わなかった。
犬は「RDG」で一条が和犬になったのを思い出すが、美綾との会話は、深行と和宮を彷彿させる。
この犬(モノクロと名付けられる)と美綾のやり取りが、とてもいきいきと描写されていて愉快。
キャラクター設定は、過去の作品と相似形で、ある程度引き継いでいる。

美綾・・・泉水子ほど浮き世離れした内気さではないが、ピュアなところが相似形(だからこそ、八百万の神が顕現した・・・さらにつけ加えると、美綾は生娘、と推察される。巫女の基本だから)
智佳・・・「樹上のゆりかご」の有理を思いだした、さらに性格が悪いか?
モノクロ・・・カラスの和宮ほど、つっこみを入れない。体を張って美綾を助けるシーンは泣かせる

さて、今後の展開が気になる。
モノクロが最後に見せた3D映像を照射するテクニックが斬新。
美綾と一緒に授業を受ける可能性が出てきた。
物語に影響する伏線ととって良いだろう。
ただ、モノクロがどんどん世間に出ていくことを素直に喜んでいいのかどうか?
神さまの重要にして基本のひとつに「祟る」って行為がある。
移動「依り代」となったパピヨンが、世知辛い人間界に出てどうなるだろう?

【追加感想】
本来なら、暗くて後味の悪い作品になったかもしれない。
それを犬のモノクロと村松愛里、そして何よりヒロイン・美綾のキャラクターが救っている。
しかし、人によっては、飄々としてるヒロインのキャラクターに反感を感じるかもしれない。なぜなら、イケメンで他の女性が獲得したいとやっきとなるような男性が自分にアプローチしているのに、超然としている。(あるいは、そのように見えるから)ある種の人には、美綾を許せないでしょう・・・己の価値観を覆す存在だから。

【おまけ】1
いきなり文庫本、ってのは珍しい。
今までの作品は、単行本→文庫本、である。
読者層が広がるかもしれない。
表紙絵が勝田文さんなのも嬉しい。

【おまけ】2
12月に予約しておいた書店から電話が入ったのが1月19日の昼過ぎ。
忙しいので書店まで取りに行くヒマがない。
木曜日なら、そのまま土曜まで取り置きしてもらったかもしれない。
しかし、火曜から土曜まで5日も待てない。
急遽駆けつけて受け取った。

【新境地】
驚いたシーンがある・・・次の箇所。(P220)

駆け寄った美綾を自分に引き寄せ、そのまま抱きしめた。

「濡れ場」を描かないのが荻原規子さんの「作風」。
これは、いったいどうしたことなのだろう。
年齢とともに、人生がこなれてきたのか。
これを新境地と呼ぶのか、円熟味が増したと言うべきか?

【ネット上の紹介】
「あなたの本当の目的というのは、もう一度人間になること?」 大学生になった春、美綾の家に迷い込んできたパピヨンが「わしは八百万の神だ」と名乗る。はじめての一人暮らし、再会した旧友の過去の謎、事故死した同級生の幽霊騒動、ロッカーでの盗難事件。波乱続きの新生活、美綾は「人間の感覚を勉強中」の超現実主義の神様と噛み合わない会話をしながら自立していく──! 


第154回芥川賞・直木賞受賞作決定

2016年01月20日 22時14分53秒 | 読書(小説/日本)

1月19日(火)に選考会が行われ、
第154回芥川賞・直木賞受賞作が決定した。


『異類婚姻譚』 本谷有希子

『死んでいない者』 滝口悠生

『つまをめとらば』 青山文平


「それでもわたしは山に登る」田部井淳子

2016年01月19日 22時24分26秒 | 読書(山関係)


「それでもわたしは山に登る」田部井淳子

昨日紹介した「私には山がある」は、インタビューを原稿に起こしたものだが、
本作は、 田部井淳子さん自身による作品。
第1章と第2章に、分かれている。
第1章は、危機状況に陥ったときの対処。
第2章は、癌と診断され、その後の手術と闘病生活、それでも山に登った話。

P3
山で切羽詰まった状態になった時、つまり土壇場に立たされた時、どう行動したかについて本にしたいという話を編集部からいただいた。

P83
 不満を持っている人というのは、言葉よりも態度でわかる。自分の不調を口に出して言えないとますます不満が溜まり、不満が溜まると、仲間からも遠ざかることになる。そして、孤立して人とのふれあいがなくなると、ますます不満が溜まっていく、というような悪循環に陥ることになる。
 こういう人が一人いるだけで、グループ全体の雰囲気は悪くなってしまうものだ。だからこそ、わたしはできるだけ、早目に、不満を溜めていそうな人の傍に行き、まめに声をかけるように心がけている。

P147
一番の苦労は人との付き合いである。義理を欠いて多少悪人にされても、ストレスのない付き合い方に変えていかないといけない。まずは自分の健康、体治しが最優先である。

【おまけ】
一番良かったのが、第一章(P43)の「声が大きい人に気をつけろ」。
極限状況での、この対処・・・「ベースキャンプまで来て、登山の仕方そのものをひっくり返すような発言」に対して、冷静かつ波風を立てず、相手の立場を尊重した対応に感心した。

【参考リンク】
「私には山がある 大きな愛に包まれて」田部井淳子

【ネット上の紹介】
余命三カ月!?抗がん剤の副作用で足がしびれ、自宅の階段を上ることさえままならない。だが、点滴の合間を縫って登山家は山へ向かった。

[目次]
第1章 山から学んだこと(大切なものを守るために
墜落と平常心
偏らずに見る
声が大きい人には気をつけろ
疲れている時はまちがえやすい ほか)
第2章 それでもわたしは山に登る(がんのはじまり
乳がんのこと
そうだ、騒ぐな、オタオタするな
山とシャンソンと抗がん剤
こんな山に登った ほか)


「私には山がある 大きな愛に包まれて」田部井淳子

2016年01月18日 22時24分38秒 | 読書(山関係)


「私には山がある 大きな愛に包まれて」田部井淳子

NHK・BSプレミアムで放送された内容をもとに、原稿を構成して単行本化してある。
読みやすく、実際すぐ読了した。
昔、「エベレスト・ママさん 山登り半生記」を読んだが、「その後」も書かれている。
田部井淳子さんの波乱に富む、濃い人生が語られる。

P24
 頂上に着いた時の「やった!」という喜び。自分の足で一歩一歩登っていかない限り、頂上には辿り着けない。どんなにつらくても、登り始めたら誰も選手交代はできない。そんなことも私にとっては何かすごく心地よかったんですね。

P39
登っている時はつらい坂だなと思っても、歩くことで風景が変わっていくのは、たまらない魅力でしたね。

P73
親は子どもを常に守れるかといえば、そうではないと私は思っていました。三歳までは一緒でなければいけませんけれども、私に何かあっても、子どもは子どもの人格で育っていくと思っていました。

【参考リンク】
公式HP

NHKアーカイブス 日本女子登山隊エベレスト登頂(1975年) - 日本放送協会(NHK)

青春の挫折を救ってくれた山。雪崩に遭い、病気にもなり、子どもの反抗もあり、それでも一歩一歩登り続けた。夏には東北の高校生と富士山へ。今なお世界中の頂を目指す登山家の「山と人生」。

[目次]

第1章 病弱な子ども時代
第2章 憧れの東京、苦悩の日々
第3章 山に夢中
第4章 大切な出会い
第5章 エベレストへの道
第6章 女性だけの登山
第7章 登山と子育て―両立のはざまで
第8章 “下り”も楽しむ人生
第9章 「がん」になって
第10章 “一歩一歩”未来をひらく


「キノベス!2016」発表

2016年01月17日 11時21分44秒 | 読書(小説/日本)

紀伊國屋書店「キノベス!2016」が発表された。
次にリンクしておく。

紀伊國屋書店「キノベス!2016」発表

羊と鋼の森ホワット・イフ?―野球のボールを光速で投げたらどうなるか 君の膵臓をたべたい 


「沖縄の70年 フォト・ストーリー 」石川文洋

2016年01月15日 22時41分01秒 | 読書(沖縄・八重山)


「沖縄の70年 フォト・ストーリー 」石川文洋

沖縄の70年を写真とともに振り返る。
著者は、沖縄出身のカメラマン。
丹念に取材した内容を、深い愛情を込めて語る。

集団自決について
P27
 沖縄戦での「集団自決」は、力の強い者が弱い者を殺したうえで最後に自殺することが多い。父は子や老いた両親を、夫は妻を、母は子を、というように殺す。
 その方法も、鎌や包丁、カミソリなどの刃物で、のどや動脈を切ったり、胸を刺す。クワで後頭部を打つ、石や棒で頭を叩く。紐で首を絞める。子どもを岩の上に叩きつける。それが、あちらでも、こちらでも、集団で行われる。異常心理となり、敵に殺されるよりは、せめて自分の手でと考えての行動であろう。
 この惨劇にまで追い込んだ皇民化教育や日本軍を憎み、「自決」とは絶対に呼びたくないという生存者もいる。

証言
P53
「子どもを殺して自分だけ生き延びようという親はひとりもいない。自分も死を決意して子どもたちをこれ以上苦しませてはいけないという気持ちでしょう。殺されるのなら自分の手で安らかにという、親の愛情だと思います。泣きながら子どもを殺している光景を、数カ所で見ています」

P120
2月4日、嘉手納基地内にはデモを警戒する米兵が一列に並んでいた、米兵たちには沖縄は多くの血を流して確保した島という占領意識がある。また世界の平和を守るために駐留しているという意識もある。米兵の思い上がった意識は、ベトナムにおけるものと同じであった。(1969年2月4日)

【感想】
フォト・ストーリー とあるので、写真集に説明文が添えられている作品、と想像していた。
その逆で、文章に写真が添えられている、と言った印象。

さまざまな証言を集めているが、よく胸の内明かしてくれたなぁ、と思う。
著者の人柄と関わりの深さゆえ、であろう。

【ネット上の紹介】
一九三八年に沖縄に生まれ、幼い頃に本土に移住した著者は、ベトナム従軍カメラマンとして、ベトナム戦争に関わる沖縄米軍基地を取材した。それをきっかけに、自らのルーツとも向き合いながら沖縄について考え続け、撮り続けてきた著者が、七〇年の歴史を、戦争と基地を軸に描き出す。カラー写真多数。
[目次]
第1章 沖縄に生まれて
第2章 沖縄戦の記憶
第3章 南洋群島の沖縄人―海のむこうの戦争体験
第4章 ベトナム戦争と沖縄
第5章 本土復帰
第6章 米軍基地一九七二~二〇一五
第7章 故郷を思う


「日本の山究極の絶景ガイド」西田省三

2016年01月14日 22時18分32秒 | 読書(山関係)


「日本の山究極の絶景ガイド」西田省三

読んでいると、行ってみたい、って気分になる。
そのためにも、体力は維持しておきたい。

神遊びの庭のお花畑とトムラウシ山

四国山地・剣山直下から望む次郎笈

草すべりから見るカラマツの紅葉と浅間山

八甲田樹氷原

【おまけ】
現状に鑑みて、いったい、行ける日が来るのだろうか?
ある種、目の毒、でもある。

【ネット上の紹介】
山岳写真家が厳選した一生に一度は歩いて訪れたい四季折々の「山の絶景」を収録!
[目次]
夏の絶景(神遊びの庭のお花畑とトムラウシ山―北海道大雪山
南岳から望む大キレットと穂高連峰―北アルプス ほか)
秋の絶景(双六台地から望む槍・穂高連峰―北アルプス
大汝峰から望む剣ヶ峰と御前峰―白山 ほか)
冬の絶景(姿見の池から見る冬の旭岳―北海道大雪山
八甲田樹氷原―青森県八甲田山 ほか)
春の絶景(至仏山から望む尾瀬ヶ原と燧ヶ岳―尾瀬
さくらの里から望む妙義山―群馬県 ほか)


「おっかなの晩」折口真喜子

2016年01月13日 21時18分56秒 | 読書(小説/日本)


「おっかなの晩」折口真喜子

船宿・若狭屋を舞台にした連作時代小説。
いずれの作品も不思議な出来事が起こる。
女将であるお涼が、どの作品にも登場し事件が収まる趣向。

軽やかであたたかみのある人物描写』と、著者紹介に説明されている。
まったくそのとおり。
嫌味や外連味とはほど遠い内容。
複雑な感情を呼び起こす事件が起こるが、
エンディングは清涼感がある。

P188
「(前略)この世とは違うあちらの世の中、いわば彼岸へと導いてくれるのが船宿だと。その船宿は良いところを選べば、彼の地でのことをきちんと準備させてくれると言っておりました。その良い船宿というのが、こちらの若狭屋だと」
 竹丸の言葉に甚八はしゃがみ込んで頭を抱えた。
「・・・・・・竹丸・・・・・・そりゃ遊郭のことだよ・・・。(後略)」

【ネット上の紹介】
狐憑きと噂される花魁、川に消えた子供、息子を探す山姥…。浅草川に浮かぶ島、日本橋は箱崎。汐と水が入りまじり、色々なモノが流れ集まり川が三つに分かれるところ。この川辺にある若狭屋には、ちょっとさみしい魂がふらりとやって来る。にんげんもあやかしも隔てなく―。ここはこの世とあの世をつなぐ不思議な船宿。女将が出合う、八つの愛おしいあやかし話。