【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「銭湯の女神」星野博美

2023年12月30日 11時19分21秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「銭湯の女神」星野博美

久しぶりの読み返し。

比較的、初期の作品。
2001年に上梓されている。
順番で言えば、「転がる香港に苔は生えない」の次。

P15
 旅に出る機会が比較的多い生活を始めてから13年。たかが旅、と思っていた存在が肥大化し、日常を侵食する瞬間というものがある。大きなものから小さなものまで、何らかの決定を下す時、旅が自己主張し始めるのだ。

p78-79・・・偽装結婚した日本人の話
「結婚の宣誓のあと、キスをしなきゃならないんです。周りの偽装結婚の人たちは、いかにもそれらしく大袈裟に抱き合ってキスしてたけど、私にはどうしてもキスできなかった。その時、ああ、これが偽装結婚ってことなんだな、って初めて実感しました。私はキスすらできない相手と、法律上は夫婦になったんだ、って」

P156
灼熱地獄の南中国を旅していた時のことだ。南中国の沿岸部は鉄路が発達していない。これはこの海岸線が台湾に面しているため、有事の際に鉄道が攻撃目標にされやすいからだといわれているが、それはさておき、移動にはもっぱらバスを利用した。

星野さんは、かつて就職をしたことがある、その初日の話
P177
「星野っていって思い出すのは、入社した日のことだよ。あの日、自分が何いったか覚えてる?」とT氏が尋ねた。もちろん何も覚えていない。私は首を振った。
「これは大事な仕事だから、これから星野さんに引き継ぐよ、っていったんだ。そしたらこいつ、何ていったと思う?『そんなに大切な仕事だったら、引き続きTさんがやってください』っていったんだよ。俺はたまげたね」
(中略)
「よくお局様につっかかって、ひやひやさせられた。星野がお局様に向かって『ちょっと待ってください』っていいながら立ち上がると、フロア全体に緊張が走ったな」

P209
 仕事柄、旅に出る機会は一般の人よりは多いが、それが仕事であれ遊びであれ、いまだにどうしても旅が好きになれない。

P216
 十代は、個性の見えない自分との闘いだった。
 二十代は、自分にしかできないことを模索する自分と、普通の人にできることを期待する周囲との闘いだった。
 三十代になり、そんなことはどうでもいい、他人から見て少々異質に見えようが、自分は自分の考える「普通」の生き方をしていけばいい、と腹をくくれるようになった。一番見苦しいのは、「自由業だ」「芸術関係者だ」と開き直って、数々の愚行や不道徳や不義理や非常識を社会から免罪されようとすることだ。
 社会と接触して生きていく限り、どんな理由も免罪符にならない。

【注意】
最初、文庫本で読み、2回目、単行本で読んだ。
頁番号が合致しない場合がある。
ご了承ください。

【ネット上の紹介】
切なくも騒々しく、温かい街から戻ってみれば、異和感のなかに生きる私がいた。自分の存在そのものが異物になってしまったようだった―。現在の東京を象徴する両極、銭湯とファミリーレストランを周遊する暮らしから芽生えた思いを、鋭い観察眼と端正な文体で描いた、大宅賞受賞の俊英による39の名エッセイ。
私がテーブルを買う時
燃えるゴミ
パンクは態度である
一〇〇円の重み
大女
The Net
新聞の正しい読み方
偽装結婚
癒しのまやかし
ああ、胃炎〔ほか〕


「愚か者、中国をゆく」星野博美

2023年12月29日 11時13分38秒 | 読書(台湾/中国)


「愚か者、中国をゆく」星野博美

久しぶりの読み返し。

P133・・・西安・解放路餃子館
「こんな小さな餃子はいままで見たことがありません。まったく用意ではありません」
「この店はすべてが餃子ですからね。西太后もこの小さな餃子が好物だったそうですよ」

天安門事件・・・通称「六四」について
P318-319
1989年の天安門事件が大きな分岐点だったのだろう。
改革解放政策の自由な空気に触発されて民主化要求が一気に高まり、それが弾圧されたのが天安門事件だった。この一件を通して人々は、政治的自由を主張しない限り、経済活動の自由は保障する、という政府の強い意志を感じとった。そして心の中に開かずの間を作っていいたいことを封印し、経済活動に邁進してきたのだ。天安門事件が改革解放政策をより一層推し進める拍車となったということもできるだろう。

P330
私は中国を「学習」したかった。しかし学習しても学習しても、中国の変化のスピードについていけない。(中略)中国に関する報道を目にする時、また実際中国へ行った時、無性に悲しい気持ちになるのは、自分が変化のスピードについていけないことを自覚してしまったからだろう。
しかし同時に思うのは、中国全土でどれだけの人が同じような落伍感を味わっているだろう、ということだ。その落伍感が高まった時が私は怖い。
なぜなら、中国では何かが起きる時、徹底的に、破壊的に起きるからである。


星野博美さんは1966年(丙午)生まれ。
本書は、著者が大学生の時の記録。

時代背景を整理しておく。
①1986~1987年「愚か者、中国をゆく」(香港~烏魯木斉)・・・2008年出版
②1992~1994年「謝々!チャイニーズ(華南、南中国海岸線沿い)・・・1996年出版
③1996~1997年「転がる香港に苔は生えない」(返還前後の香港)・・・2000年出版
実際の旅と発表された順番は合わない。

【ネット上の紹介】
交換留学生として香港に渡った著者は、一九八七年、アメリカの友人、マイケルと中国旅行に出る。中国社会が大きな転換期を迎えたこの時期に、何を感じ、何を見たのか。「大国」の本質を鋭くとらえた貴重な記録。

第1章 香港
第2章 広州
第3章 西安から蘭州へ
第4章 嘉峪関まで
第5章 シルクロード
第6章 ウイグル
第7章 旅の終わり
第8章 それから


台湾雑感

2023年12月28日 11時12分53秒 | 台湾2023/12

忘れる前に、感じたことなど書いておく。

台湾はビザ必要なし。
ワクチン接種証明書も不要。

台湾の必需品・Easy Card(悠遊カード)。
MRT、TRA、バス、コンビニ、ロープウェイなど、いろいろ使えて便利。

中国語の発音は難しい。
ガイドブックのカタカナを読み上げても、四声があるので通じない。
漢字を書くか、ガイドブックの漢字を見せた方が早い。

下の映像はTRA線、瑞芳や基隆に行くときに利用。
金瓜石や九份は、瑞芳や基隆からアクセスする。
台北から瑞芳まで50分かかる。
金瓜石行きのバスは、瑞芳駅を出て道路を渡り、左に250m行ったバス停から出ている。駅員さんに教えてもらわないと分からない。九份は金瓜石に行く途中にある。

MRTやバスでは、6割くらいの方がマスクをしている。
空港線は8割くらい。

下の写真は劍潭駅。

座席はプラスチック

下写真の赤色=淡水信義線で、大阪の御堂筋線に相当する。
台北中心に行動するなら、この路線沿いでホテルを取ると便利。


ホテルを予約するとき、前回エクスペディアを利用したが、
今回は楽天トラベルを使った。
HIS宿泊検索サイト、Expedia 、楽天トラベル・・・この3つ併用している。
他で満室でも何かしら出てくる。値段も微妙に違う。

海外では、シャワーのみの部屋が一般的。
バスタブ付きの部屋は高額になる。

航空券は、HISネットで取得。
ピーチは安くて便利。
Eチケットは発行されない。
パスポートと予約番号で本人確認する。
日本到着時間が22時10分+税関手続きなので遅延すると電車がなくなる。
私は、南海電車なんば駅からタクシーに乗った。(13,010円)
22時を過ぎて到着する帰国便は避けた方が良い。

帰国するとき、入国カードを書いてもいいけど、
デジタル庁・Visit Japan Webに登録しておくとすんなり通過できる。
税関申告するのが無くても「無し」で入力しておく。
QRコードをスクショして、スマホの画面を係官に見せる。

セブンイレブン、ファミリーマートは、あちこちにある。
私は、酒の品数が多いセブンイレブンを利用していた。

台湾に着いて気がついたら、iPhoneは自動で現地時間に同調していた。
ガーミンの時計は、強制的にGPSを取得させないといけない。
帰国前日、無耳茶壺山の山頂でGPSを取得して、やっと現地時間になった。
日本に戻ったときは、空港でGPSを取得させると、即日本時間に戻った。

現地でよく道を尋ねられた。
地元の人に見えるのでしょうか?
普段着で歩いていているからかも。
男性はヘアスタイルと服装が微妙に違う。
女性はなんとなく化粧が違う。

失敗談:
搭乗口B4なのに、勘違いでB5で待っていた。
10分前に気づき、あわててB4に行く。
すると誰もいない。もう搭乗おわって、離陸体勢?
B5に戻って、搭乗口の係官に、「B4に誰もいない!?」と言うと、調べてくれた。
「急いでB1に行くように」、と。
B5からB1まで、「エクスキューズミー」と息を切らして走る。
陽明山のあとだから足が筋肉痛で、本当は走れる状態じゃないけど。
B1に行くと、大勢の人が搭乗しようと待っていた。
係官に搭乗券を見せると、「今から搭乗呼びかけするから待っていなさい」、と。
どうやら出発遅延で、搭乗口がB1が変更になったようだ。
とりあえずほっとする。
最悪の場合、航空券を買いなおして、市内のホテルに戻るところだった。
(しっかり搭乗口を確認するように、と反省)

現地のお金に換金するとき、現地空港で「台湾ドル」にするが、
空港には複数の換金場所がある。
入国審査出口すぐの換金場所より、少し離れた場所の方が「率」はよく、
対応も親切だった。
換金場所①10000円=2085元(ここから30元が手数料引かれる)
換金場所②10000円=2088元(ここから30元が手数料引かれる)
・・・およそ4.8
前回2019換金=4万円÷10,590元=およそ3.8。円安に涙。

これは黄金博物館の映像。
前回2020年1月5日=330450000元(×当時の公式率3.4=11億円)
今回2023年12月25日=456241300元(×現在の公式率4.6=20億円)
円高も含めて、当時この金塊を台湾ドルで買っていたら、差額=9億円)
・・・取らぬ狸の皮算用

壮大な話の後で恐縮だが、卑近な値段を示す。
とんかつ定食330元、1,520円
親子丼定319元、1,470円
イモ団子スープ60元、280円
餃子定食320元、1,470円
工員弁当180元~200元、830円~920円
ワイン、グラス1杯350元、1,610円

下写真、鉱山で働く礦工弁当、竹に入っているのが200元、プラ容器は180元。

台湾の麺を空港で食べたが、思った以上においしかった。少し濃いけど。

一回は飲んでおこうと、空港でタピオカ


台湾⑦七星山

2023年12月27日 09時27分42秒 | 台湾2023/12

帰国して書いています。
最終日、陽明山国家公園内にある、七星山に登りました。
下の写真が七星山です。

陽明山は台湾では有名ですが、陽明山という山はない。
立山という山がなくて、実際は、立山三山=雄山、大汝山、富士ノ折立を縦走したり、別山を登るようなもの。
陽明山に行くには、劍潭駅からバスで陽明山総站バス停、その後バスを乗り換え、小油抗を登山口にして、そこから七星山に登るのが便利。

バス乗り換えポイント・陽明山総站バス停で、50代くらいのオヤジに「このバスは小油抗に行くか?」と確認してから乗ったところ、違うバスだった。
「知らないなら知らないと言えよ」、と思った。
(バス運転手に聞くべきだった、と反省もした)

人に聞くときは、年寄りか女性が間違いない。
中途半端な年齢の男性はプライドがあるのか、「知らない」と言わない。
そのオヤジは横に連れの女性がいたから、よけい知ったかぶりをしたのかも。
その後、上の写真の煙(水蒸気)のところまで歩いて戻り、無事登頂した。
夕方の飛行機に間に合うか、心配しながらの登山となった。

硫黄の匂いが立ちこめている。活火山だ。





下山後、草山行館で食事するつもりだったけど、
時間がないので、急いで市内のホテルに戻り、荷物を引き取り空港へ移動。
桃園空港は、こんな感じ。

皆さん、読んで下さりありがとうございました。
また後ほど、いろいろ思い出すことなど、雑感を書こうと思います。


台湾⑥金瓜石,九份

2023年12月25日 19時57分17秒 | 台湾2023/12

金瓜石と九份に行ってきた。
観光もハイキングもできる、価値のある街だ。
まず、金瓜石に行って無耳茶壺山に登った。
もうすぐ山頂。

山頂は露岩して、穴があいている・・・だから、無耳茶壺山

下山開始・・・向こうに基隆山が見える。
下山後、黄金博物館へ移動。(入館料80元)
これ本物です・・・横から手を入れて触らせてくれる(前回来た時も触った)

入館費に50元を足すと、坑道巡りもできる。
ここから入っていく。

ヘルメットを借りて出発

当時の様子が人形で再現されている



金瓜石から九份に移動して、基隆山に登った・・・眺望良好
龍洞方面を眺める

下山開始・・・九份の街が見える

九份の街を散策・・・観光客でいっぱい

イモ団子の温かい小豆スープをいただく(氷バージョンもある)


台湾⑤烏来

2023年12月24日 17時48分22秒 | 台湾2023/12

雨の中を滝を見に烏来(ウーライ)に行ってきた。
とても立派な滝だった。

トロッコ電車に乗った(こんな電車で通勤してみたい)

下の写真はいつも食べに行くフードコート。
前回は基隆に滞在したので、夜市で屋台の食事をした。
今回は台北市内なので、フードコートに食べに行っている。

小豆の中に白玉団子が入っている、75元(340円)

ジャックダニエルがなくなったので、バランタインを買った。
夜の友は、ウイスキーと読書だ。

私の食生活は保守的なので、玉子丼のような日本食が多い。


台湾④新北投,淡水

2023年12月23日 20時05分50秒 | 台湾2023/12

天候が安定せず、登山はひとまず保留。
今日もバリバリ観光している。
まず新北投に行った。
日帰り温泉=瀧乃湯があって入浴できる。
150元必要、時間帯もあるので注意。タオル必携。

湯けむりが上がっている下の写真は地獄谷。

次に、淡水に移動して老街を散策する。
フェリーにも乗った。





その後、國父紀念館に移動。

國父=孫文のこと。
共産党、国民党、民進党、いずれからも尊敬されているのは孫文。
孫文の奥さんは宋慶齢。
妹の美齢は蒋介石と結婚。
ちなみに長女・宋靄齢は財閥に嫁いでる。(有名な宗家三姉妹)

さらに龍山寺に移動。

前回2020年と今回観光した限りでは、龍山寺界隈の濃度が一番高い。

女性は一人で夜うろうろしない方がいいかも。


台湾③動物園

2023年12月22日 20時03分09秒 | 台湾2023/12

動物園に行ってきた。
(天気イマイチなので、計画を変更し、調整しながら実行している)

思った以上に広かった。

このパンダはとても活動的で、木に登ったり、降りてうろうろしたり

じっとしていない







動物園の近くにある猫空(マオコン)ロープウェイにも乗ってみた。
4km以上あるので、乗っていて途中で寒くなった。

眺望良好で、台北101も見えた。


台湾①②象山

2023年12月21日 18時35分30秒 | 台湾2023/12

12月20日(水曜)
下の写真は関空です。
台湾に向かうところ。

13時半に桃園空港到着。
大阪は晴れていたけど、台北は雨。
雨なのであまり元気が出ない。
入国手続きとホテルへの移動で1日が終わった。
ホテルは台北市内。
場所が分かりにくく、年老いたおじさんに聞いたら、
すかさずスマホの翻訳アプリを使って「日本語」で回答してくれた。
ありがたいことだ。

12月21日(木曜)
北にある陽明山国家公園に向かった。
しかし、だんだん雨風が強くなってきた。
山に登る気分にならないので台北市内に引き返す。
七星山は1,000m以上の標高なので、自然条件も厳しい。

象山なら南にあるし、標高も低いから少し風雨もマシかも、と行き先変更。

象山~獅山~豹山~虎山、と雨の中を縦走する。

途中にある道教のお寺

縦走最後の虎山峯

下の写真は下山して象山駅に向かって歩いているところ

地下鉄で中正記念堂に移動。

中正記念堂を見学。
前回も見学したけど、今回も気になってやってきた。
中正=蒋介石のこと。
享年と同じ89段の階段があるそうだが、数えながら登ったら90段だった・・・私の数え間違い?
下の写真は、蒋介石そっくりの人形。


「項羽と劉邦」(全12巻)横山光輝

2023年12月18日 11時42分20秒 | 読書(台湾/中国)

「項羽と劉邦」(全12巻)横山光輝

項羽と劉邦、対照的な性格の2人を対比させながら物語を進める。
背水の陣、四面楚歌、有名な故事の元となったエピソードが披露される。

「覇王別姫」も再現される。
覇王=項羽
姫=虞美人
この2人の別れのこと。
項羽と虞美人が、劉邦の軍師・張良の四面楚歌作戦により追い詰められる。項羽と虞美人は、別れの宴をはり虞美人は舞を舞う。有名な京劇の演目である。
これを踏まえて映画「さらばわが愛」も作られた。(カンヌ映画祭パルム・ドール賞受賞)

第1巻P72
始皇帝の政治を批判した儒者は次から次へと捕らえられた
その数460余人
彼らは坑に入れられ見せしめのため生き埋めとされた
これが悪名高い「焚書坑儒」である。
(「キングダム」を見ているかぎり、「嬴政がこんな風になるなんて」、って思うかもしれない。中国では、始皇帝の評判は悪い。だから「キングダム」もイマイチ盛り上がらないのかもしれない。『史記』『十八史略』には、始皇帝は、虎や狼のような残忍で冷たいという意味「虎狼の心あり」と書かれています。「中国の歴史」②P19(小林隆)より。ちなみに呂不韋は中国で人気)


第1巻P136・・・項羽のセリフ
書は自分の名前が書ければよい
剣は1人を相手にするもの
俺は万人を相手にする術を学びたい


第3巻P94
「陛下に馬を献上致します」
「なにっ?何をたわむれている これは鹿ではないか」
(始皇帝が築いた秦を、宦官・趙高が滅亡させたと言える)

第3巻P179・・・項羽と劉邦の足取り


第12巻・・・四面楚歌作戦発動、張良が韓信に言う。
「楚軍の兵士の望郷の念を駆り立てるのです」


【ネット上の紹介】
少年項羽、天下を望む。「書は自分の名前が書ければよい。剣は一人を相手にするもの。俺は万人を相手にする術を学びたい」紀元前221年、中国統一を果たした秦の始皇帝は、自分の権威を示すために、軍用道路を作り、各地を巡行していた。ある時、始皇帝は、青い服の子供と赤い服の子供が日輪を奪い合い、青い服の子は赤い服の子を72度なぐるが、赤い服の子が一撃で青い服の子を倒す夢を見る。不老長寿の薬を得るために徐福を東の島へ派遣した始皇帝は、万里の長城、阿房宮、陵墓などの建設に人民を駆り出す。人々の怨嵯の声は日増しに高まっていった。


「謝々!チャイニーズ」星野博美

2023年12月15日 08時02分31秒 | 読書(台湾/中国)


「謝々!チャイニーズ」星野博美

久しぶりの読み返し。
本作品は、著者が27、28歳の頃、
1993年から94年にかけて行った旅の記録。

P28
「髪廊(ふあーらん)」とは、名目上は「床屋」だが、昼間から怪しげな赤い光を発して肌を露わにした女性が鏡の前に座って客を引き、中で売春行為を行う風俗店のことだ。

P112・・・広州の駅の路上生活者との会話
江西省の廬山。いいかね?中国で一番きれいなところだ。それに山東省の泰山。いや、泰山の方がきれいかな?それから安徽省の黄山市。今度中国に来たら、この三つに必ず行きなさい。中国のきれいなところを旅行しなさい。もうこんなところに来るんじゃないよ。

P164・・・厦門のコーヒーショップでの会話
「やっぱり彼女たちは娼妓なの?」
「ここにいる子は全員そう。ホテルの前で立ってる子も。違うのはあなたと私ぐらいのものだわ」
社会主義、か。
社会主義経済が資本主義経済のシステムに呑みこまれた時、真っ先に流通するのがポルノと娼婦であるとこは、いまや世界中に共通した現象となっている。

P222・・・「一人っ子政策について」湄州での話
ホテル近くの宮下村に住む漁師さんは、二人目が男の子だったため、三人目の女の子の時は2000元の罰金を払った。同じ宮下村の雑貨屋の店主は、1人目も2人目も女の子だったため、三人目にトライしたところ、男の子だったので、罰金は払わずに済んだ 。

P176
中国に来てから、この厦門(あもい)に限らず、私が訪れた町には一つの例外もなく「髪廊」が存在した。金になるからそれを商売にする人間が現われ、金を持った人間がそれまで手にしたこともないものを手に入れようとする。資本主義の原点だ。
(中略)
しかし、こんなことをいったらフェミニストから袋叩きにあいそうだが、私には彼女たちを買う男たちを大声で糾弾する気にもなれない。それまで目にしたことのないものが目の前に並んでいる時、人間はどれだけ欲望を抑えることができるものなのだろうか。

P244-245
「黒猫と白猫の話知ってる?」
「ねずみを捕るのがいい猫だ、でしょう」
「そうだ。でも本当の意味は少し違う。黒だろうが白だろうが黄だろうが、自分でねずみを捕ってこない猫は飢え死にする、っていう意味だ。つまりいまの中国では、自分で金を稼がない奴は、死ぬってことだ。(中略)
中国は金がないと生きていけない国になっちまったよ」

P256
いまの中国には種類を問わず、宗教が浸透する素地があると思う。格差が広がれば広がるほど、その度合いはさらに強くなるだろう。

P272
それまで中国は、職場や住居の確保から社会福祉に至るまで、すべて国がしてくれる国家だった。ところが改革開放で何でもしてくれた国は「自分でねずみを捕ってこい」という国に変わった。野心に燃える人間にはまたとないチャンスとなったが、それ以外の人たちにとっては、誰も何もしてくれない時代になった。持てる者と持たざる者との経済格差が限りなく広がり、持てる者の富は一族やその故郷にしか還元されない。持たざる者の心には、「誰も何もしてくれない」感が余計に強くなる。

【注意】
最初と2回目、文庫本と単行本と異なるので、頁番号が合致しない場合がある。
ご了承ください。

【ネット上の紹介】
時は1993年。中国に魅せられた私は、ベトナム国境から上海まで、改革開放に沸く中国・華南地方を埃だらけの長距離バスに乗って旅をした。急激な自由化の波に翻弄される国で出会った、忘れえぬ人々。『転がる香港に苔は生えない』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した著者の、みずみずしいデビュー作。[目次]

第1章 東興
第2章 北海から湛江まで
第3章 広州
第4章 厦門(あもい)
第5章 〓洲島(めいちょうだお)
第6章 平潭
第7章 長楽
第8章 寧波
終章 東京


天王寺動物園とベルリンの壁

2023年12月13日 19時40分40秒 | お出かけ

天王寺動物園に行ってきた。
水遊びするシロクマ





通天閣がすぐ近くに見える

大坂の陣跡

動物園と茶臼山のすぐ近くに統国寺がある。
写真右にある壁=『ベルリンの壁』。
以前から気になっていたので、見ることができて良かった。





動物園=楽
茶臼山=戦
統国寺=聖
なお、統国寺の中に『統国寺会館』があり、葬儀会場となっている。
下の写真は、統国寺を出たところ・・・ラブホ街。

楽、戦、聖、死、俗が、混然一体となっている。
そこに心を揺さぶられた。


「転がる香港に苔は生えない」星野博美

2023年12月11日 07時05分26秒 | 読書(台湾/中国)

「転がる香港に苔は生えない」星野博美
久しぶりの読み返し。

P130
「炒(ちゃう)」という言葉がある。チャーハンの「チャー」、文字通り「炒める」ことだが、何かの値段がどんどんつり上がっていくこと、あるいは故意につり上げていくことを広東語では「炒」という。炒の対象として代表的なものは股票(かぶ)」そして楼(まんしょん)。フライパンで炒めれば中のものはどんどん熱くなるが、やりすぎれば必ずこげる。

P232
(前略)97年2月19日、鄧小平が死去した。私はそれを学校へ向かう地下鉄の中で知り、とりあえず身近にいる香港人、つまり学校の先生たちに感想を尋ねた。
一時間目の先生はノーコメントだった。(中略)
二時間目の先生はもう少し柔軟だった。
「驚きました。もう少しで返還なのに、それを見ることができずにかわいそうだと思いました」
三時間目の先生は正直だった。
「心の準備はできていたから驚きませんでした。同時に、やっと本当の情報が出たなと思いました。安心している人はたくさんいると思います」
私はその真意を尋ねた。鄧小平の死去に「安心する」とはどういう意味か。
(この続きは、実際読んでみて)

P244かつての同級生・維真(わいちゃん)の言葉
新移民(さんいーまん)――大陸から香港に移民してきた人たちをこう呼ぶ。彼らの存在が今、香港の大きな社会問題になっている。(中略)
おかしいな、って思った。だって香港はもともと大陸からの移民の寄せ集めでしょ?

P268
「どうして日本人は英語ができないの?日本の大学生もビジネスマンもほとんど英語が話せないんだってね。どうして日本人はレベルが低いの?」
「それは日本がイギリスの植民地じゃないからでしょ」
彼女は顔を赤くして黙りこんだ。

P275
阿強、議論して相手を負かすことで、あなたは自分を守ろうとしているだけだ。
あなたが自分の現状を私にぶつけるのはかまわない。でも何の関係もないお店の人たちを見下すのだけは許せなかった。

P286
「金が好きだ」「香港はゴミだらけ」「香港人は声が大きくて乱暴だ」「階級社会だ」「芸術を理解しない」「せっかちだ」「愛想が悪い」・・・・・・香港の何をけなしても、彼らは大抵のことを許してくれる。絶対に口にしてはならないタブーは、食に対する批判。これをうっかり口にすると、彼らの逆鱗に触れることになる。

P465・・・大陸の高級官僚の言葉
『香港の人は何かと汚職汚職っていいますが、慣れていないから怖いだけですよ。なにすぐ慣れますよ』

P535・・・日本人の妻をもつ香港人・阿波の言葉
香港人は経済活動が自由だったから、自分たちは自由を知っている人間だと思っている。でも経済の自由と政治の自由の違いが全然わかっていないんだ。

P621
今我々に必要なのは、誇りではなく、多様性だと私は思う。単一の方が楽だから、楽な方法へ向かおうとしているだけだ。多様な文化と接してこそ、自分たちの誇りは意味を持つ。単一性の中だけで誇りを持つのは、狂信である。私たちは本当に、深く眠っている場合ではない。苔など生やしている場合ではない。

【参考リンク】
「謝々!チャイニーズ」星野博美
「華南体感 星野博美写真集」

「転がる香港に苔は生えない」星野博美
「銭湯の女神」星野博美
「のりたまと煙突」星野博美
「迷子の自由」星野博美
「愚か者、中国をゆく」星野博美

「コンニャク屋漂流記」星野博美
「島へ免許を取りに行く」
「戸越銀座でつかまえて」星野博美
「みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記」星野博美
「今日はヒョウ柄を着る日」星野博美

「旅ごころはリュートに乗って 歌がみちびく中世巡礼」星野博美
「世界は五反田から始まった」星野博美 

【ネット上の紹介】
1997年7月1日、香港返還。その日を自分の目で、肌で感じたくて、私はこの街にやってきた。故郷に妻子を残した密航者、夢破れてカナダから戻ってきたエリート。それでも人々は転がり続ける。「ここは最低だ。でも俺にはここが似合ってる」。ゆるぎない視線で香港を見据えた2年間の記録。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。

[目次]

第1章 香港再訪
第2章 深水〓
第3章 返還前夜
第4章 返還
第5章 逆転
第6章 それぞれの明日
第7章 香港の卒業試験


「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦

2023年12月08日 07時35分56秒 | 読書(科学)
「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦

P174
婚姻の高齢化が一因で自然妊娠が難しくなったり、原因はよくわかりませんが男性の精子の数が減ってきている現実があります。

P178
老化の主な原因はDNAの傷で、これらが加齢とともに少しずつ蓄積して細胞の働きを悪くします。

P218
なぜヒトだけが老いるのか。それは死を意識し公共を意識するためです。死は何のためにあるか。それは進化のためです。

P191
【男性】
平均寿命=81.41歳
健康寿命=72.68歳・・・この差、約9歳
【女性】
平均寿命=87.45歳
健康寿命=75.38歳・・・この差、約12歳

【感想】
日本の人口が減少している。
道路・鉄道・上下水道などのインフラ、物流、食糧供給を維持するには何人必要なの?(東京オリンピックの頃の道路、鉄道、ビル、トンネルが老朽化してるし)
対策として、高齢者でも死の直前まで働き、プラス、移民を受け入れるの?
「日本沈没」しなくても「滅亡」に近い状態にはなるかも。
読んでいて不安になった。

【ネット上の紹介】
人間以外の生物は老いずに死ぬ。ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があった。生物学で捉えると「老いの常識」が覆る!
第1章 そもそも生物はなぜ死ぬのか
第2章 ヒト以外の生物は老いずに死ぬ
第3章 老化はどうやって起こるのか
第4章 なぜヒトは老いるようになったのか
第5章 そもそもなぜシニアが必要か
第6章 「老い」を老いずに生きる
第7章 人は最後に老年的超越を目指す


神戸どうぶつ王国

2023年12月06日 07時38分52秒 | お出かけ

神戸どうぶつ王国に行ってきた。
阪急京都線→阪急神戸線→ポートライナー、けっこう時間が掛かるのが難点。

7、8割が室内という全天候型動物園。
ただそのせいで、野外の開放感はない。一長一短だ。
人気の動物園だけあって、動物との距離が近くなるよう工夫されている。


レッサーパンダが生き生きとしていた


ナマケモノは1日20時間眠るとか・・・たまたまよく動いていた


カピバラも動いていた
(長崎のカピバラは寝ていて動かなかった)


ラクダでかい


この時期、トナカイはスターだ
(服を着るのを嫌がってた・・・仕事だから我慢してね)

プレーリードッグは立ち姿が良い


また、レッサーパンダ見に来た。
あちこちの動物園で見たけど、ここのがいちばん愛敬がある


スマトラトラと目が合った


右の穴から遠慮がちに覗いているモルモットがいい


シロクロゲリがうろうろしていた