「みんなが知りたい動物園の疑問50」加藤由子
P34
コアラはユーカリしか食べないので、ユーカリが確保できないかぎり、飼育するのはムリである。
P80
「動物が寝ているだけでつまらない」という不満は多い。だが、動物とは元来、ムダなエネルギーは使わないものなのである。
P88
「野生で暮らしている動物はみな美しい」と人はいう。(中略)
野生の世界には、年老いたものや体の不自由なものがいないからだ。若くて元気で美しいものしかいないからである。
P154
同種または近縁の動物をくらべた場合、北に住むものほど大きい。これを「ベルグマンの法則」といい、トラだけでなく多くの動物に当てはまる。
【ネット上の紹介】
動物園に家族みんなで遊びに行き、「動物はどうやって運ぶの」「休園日はなにをしているの」と疑問に思ったことはありませんか?ひょっとしたら「動物は檻の外に出たいと思わないの?」と、お子さんに聞かれて困った経験のある人もいることでしょう。そこで3万人のWebアンケートで集めたみんなの疑問に、科学的視点で答えていきます。本書を読めば、動物園をより楽しめることまちがいなしです。
第1章 動物園についての疑問(大きな動物の輸送はどうするのか
飼育員の一日の仕事はどうなっているのか
休園日、動物や飼育員はなにをしているのか ほか)
第2章 動物園で暮らす動物についての疑問(ペンギンの行進はどうやって教えるのか
放し飼いのクジャクは逃げてしまわないのか
いつ行けば活動的な動物が見られるのか ほか)
第3章 動物園での素朴な疑問(レッサーパンダはなぜ2本足で立てるのか
コウモリはどうやってオシッコやウンコをするのか
アライグマは本当にものを洗うのか ほか)
P45
肉食動物の目は、動くものに反応するようになっている。(中略)
ところが、ナマケモノはほとんど動かない。
そのため、動くものを探す肉食動物の目には、木立の中で動かないナマケモノは目に入らないのだ。
P27
豚の体脂肪率は15%である。(中略)
この数字は、イヌやネコと比べても低い。(中略)
豚は時速40キロメートルで走ることができると言われている。これは100メートルを9秒台で走る速さである。
P74
カモノハシは、卵を産む卵生だが、卵から生まれた子どもを母乳で育てる。そのため、哺乳類に分類されているのだ。(中略)
2億5000年前からの恐竜が繁栄していた中生代にはすでにカモノハシは存在していたと考えられている。
カモノハシは、大昔から姿を変えていない「生きた化石」なのだ。
P110
百獣の王と言われるライオンの狩りの成功率は、およそ20%程度だそうだ。
それに対して、ブチハイエナの成功率は、70%を超える。
【ネット上の紹介】
ナメクジ、ダンゴムシ、モヤシ、イモムシ、雑草…。いつも脇役の、「つまらない」生き物たち。しかしそのつまらなさの裏に、冴え渡る生存戦略があった!ふしぎでかけがえのない、個性と進化の話。
第1章 「もっともない」生き物
第2章 「にぶい」生き物
第3章 「ぱっとしない」生き物
第4章 「こまった」生き物
第5章 やっぱり、そのままでいいんだよ
第6章 あなたもそのままでいいんだよ
P174
婚姻の高齢化が一因で自然妊娠が難しくなったり、原因はよくわかりませんが男性の精子の数が減ってきている現実があります。
P178
老化の主な原因はDNAの傷で、これらが加齢とともに少しずつ蓄積して細胞の働きを悪くします。
P218
なぜヒトだけが老いるのか。それは死を意識し公共を意識するためです。死は何のためにあるか。それは進化のためです。
P191
【男性】
平均寿命=81.41歳
健康寿命=72.68歳・・・この差、約9歳
【女性】
平均寿命=87.45歳
健康寿命=75.38歳・・・この差、約12歳
【感想】
日本の人口が減少している。
道路・鉄道・上下水道などのインフラ、物流、食糧供給を維持するには何人必要なの?(東京オリンピックの頃の道路、鉄道、ビル、トンネルが老朽化してるし)
対策として、高齢者でも死の直前まで働き、プラス、移民を受け入れるの?
「日本沈没」しなくても「滅亡」に近い状態にはなるかも。
読んでいて不安になった。
【ネット上の紹介】
人間以外の生物は老いずに死ぬ。ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があった。生物学で捉えると「老いの常識」が覆る!
第1章 そもそも生物はなぜ死ぬのか
第2章 ヒト以外の生物は老いずに死ぬ
第3章 老化はどうやって起こるのか
第4章 なぜヒトは老いるようになったのか
第5章 そもそもなぜシニアが必要か
第6章 「老い」を老いずに生きる
第7章 人は最後に老年的超越を目指す
「面白くて眠れなくなる人体」坂井建雄
P37
胃の粘膜は33日、小腸にいたっては約1日で入れ替わってしまいます。
P113
哺乳類の中で色鮮やかな世界を楽しんでいるのは、人間とサルだけなのです。例えば犬や猫には色を感じる錐体がないので、モノトーンに近い世界を見ています。
P134
鼻の孔は、どうして2つあるのでしょう?(中略)
実際には、鼻は交互に孔を使って呼吸しているのです。(中略)
敏感な嗅覚を休ませるという意味もあります。(中略)
左右が交代する周期は個人差がありますが、だいたい1~2時間ごとといわれています。
P167
実際に受精するのは、1つの卵子に1つの精子だけです。それにもかかわらず、精子は1日に3,000万個作られます。1回の射精で放出される精子に数は、1~4億個といわれています。
P181
体液を調節するためには、塩分を捨てる必要があります。
さて、私たちの体には、常に体液の濃度を一定に保とうとするホメオスタシスという働きがあります。その役目を担っているのが腎臓です。
【ネット上の紹介】
我慢したオナラはどうなる?血管は日本列島の二倍も長い!?鼻の孔はどうして二つある?男女をわける遺伝子のスイッチ。人体は最大のミステリー。
1 人体はふしぎに満ちている(とても器用なノド―呼吸する、食べる、声を出す
「もぐもぐ」と哺乳類の進化
胃の容量はどれくらい? ほか)
2 面白くて眠れなくなる人体(医学とギリシャ神話の意外な関係
黒い瞳と青い瞳では見えている色が違う?
長時間携帯を見ると視界がぼやけるしくみ ほか)
3 人体は小宇宙(精巣と月経のはなし
男女の性別はどうやって決まる?
最も進化した内臓―腎臓 ほか)
「徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか」稲垣栄洋
戦国武将を植物から読み解く。
この視点の作品は初めて。
とても興味深くおもしろい。
P27
上方からくるものは「下りもの」と言われ重宝された。一方、関東で作られた品質の悪いものは「下らないもの」と評された。現代でもつまらないものを「くだらない」というのは、この言葉に由来する。
P36
1石は、1人が1年間に食べるだけの量を基準として定められた。すると、100万石というのは、100万人が1年間に食べるだけの量の米がとれる、ということになる。
1石の10分の1が1斗、1斗の10分の1が1升、そして1升の10分の1が1合となる。さらに1合の10分の1が1勺である。
P112
秀吉の側室の淀君は日本で初めてタバコを吸った女性として知られ、1日中タバコを手放すことがないほどの愛煙家だったという。
【ネット上の紹介】
★日本人の植物常識はすごい! ●加藤清正が築城した熊本城は食べられる城だった! ●なぜ戦国武士は草食系の食事で戦い続けられたのか ●植物の知識で暗躍した甲賀忍者 ●世界最大のリサイクル都市、江戸はどうやって作られた ●大名がやっかいな雑草を家紋にした理由 ●なぜ関ヶ原の戦いで家康は生米を食べるなと指示したのか などなど、戦国の世から江戸時代における植物と武士の知られざる関係を描く これまでにない驚きの日本史!
第1章 徳川家康はなぜ江戸を都に選んだのか―家康が築いた植物都市(家康が江戸を選んだ理由
湿地帯を開発すれば広大な農地が確保できる
江戸の地名と植物の深い関係 ほか)
第2章 完全リサイクルの循環型社会ができるまで―大名が投資したイネという植物(織田信長の兵農分離革命
田んぼが作った単位
武将は面積の単位も田んぼを基準にした ほか)
第3章 お城にはなぜ松が植えられているのか―植物を戦いに利用した戦国武将(松の木は軍事用の植物
黒田長政が非常食のワラビを隠した方法
加藤清正が築城した熊本城は食べられる城だった ほか)
第4章 三河武士の強さは味噌にあり―地域の食を支える植物(徳川家康家臣団、強さの秘密
家康が愛した八丁味噌の由来
戦国日本を席巻した赤味噌武将たち ほか)
第5章 織田信長はトウモロコシが好き―戦国武将を魅了した南蛮渡来の植物(信長が好んだ赤こんにゃく
信長が愛した意外な花
玉蜀黍の漢字の意味 ほか)
第6章 門外不出だったワサビ栽培―家康に愛され名物となった植物(家康と信玄の抗争から生まれた門松
薬草マニアだった家康
家康が駿府の鬼門封じに植えた果物 ほか)
第7章 花は桜木、人は武士―武士が愛した植物、サクラの真実(日本人はなぜサクラに惹かれるのか
お花見の始まり
サクラよりもウメが愛されていた ほか)
第8章 ヨーロッパ人を驚かせた園芸大国―植物を愛する園芸家となった武士たち(武士が築いた園芸国家
戦国武将が愛したチャ
茶器の高騰を利用した織田信長 あほか)
第9章 徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか―武将が愛した植物の家紋(三つ葉葵のモチーフになった地味な植物
フタバアオイは不思議だ
葵の紋はもともと京都賀茂神社の神紋 ほか)
「怖くて眠れなくなる植物学」稲垣栄洋
P17
昆虫は、情報を処理する脳が、足の付け根にも分散しています。そんため、素早く動くことができるのです。人間の脳のように、迷ったり悩んだりすることもありません。
P127
ヒガンバナは毒があります。この毒が遺体を食い荒らすネズミや盛り土に穴を空けてしまうモグラを寄せ付けない効果があると言われています。(中略)ヒガンバナの球根には毒がありますが、水にさらして毒を抜くと豊富なでんぷんを得ることができます。そのため、飢饉や天災など、いざという時の食糧にするために、植えられたのです。
P160
魔女は英語で「witch」と言います。これは、もともと「wicca」という「賢い女性」を意味する言葉に由来します。
魔女の手先としてネコが大量に殺された結果・・・
P163
中世から近世にかけてヨーロッパではペストが大流行し、無数の人々が病に倒れることになってしまいました。ペストの伝染源はネズミです。ネコを殺しすぎたためにネズミが大繁殖したこともペストが蔓延した原因の一つとなってしまったのです。
P170
トリカブトの塊根は、「附子(ぶす)」と言います。トリカブトを口にすると、神経系の機能が麻痺して無表情になります。これが、「ブス」の語源であると言われています。
ブスというのは、顔が醜いことではありません。表情がないことがブスなのです。
P186
7月7日の頃に妊娠していると、もっとも忙しい稲刈りの時期に大きなお腹で動けなくなってしまいます。無理に重労働すれば流産の危険があるばかりか母体も危なくなります。
そのため、7月7日にはホオズキを飲んだり、ホオズキの煎じた汁を子宮にいれて堕胎したのです。
昔はどこの農家の庭先にもホオズキが植えてありましたが、ホオズキにはこんな利用法もあったのです。
P189
華岡青洲は麻酔手術で人々の命を救いたいと、麻酔の研究をしました。このとき用いたのが、チョウセンアサガオというナス科の有毒植物です。チョウセンアサガオは、別名を「きちがいなすび」と言います。誤って食べると、幻覚を見て、泣きわめいたり、踊りだしたりと狂乱状態になることから、そう名付けられているのです。(中略)日本麻酔学会のロゴマークはチョウセンアサガオが用いられています。
【関連図書】
「オスとメスはどちらが得か?」稲垣栄洋
「なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか」稲垣栄洋
「生き物の死にざま」稲垣栄洋
「世界史を変えた植物」稲垣栄洋
【ネット上の紹介】
食虫植物ハエトリソウ、死骸の花ラフレシア、絞め殺し植物ガジュマル、百獣の王を殺すライオンゴロシ、美しき悪魔ホテイアオイ、植物の毒の誘惑…。読み出したらとまらないおそろしい植物のはなし。
1 植物という不気味な生き物(何度でも蘇る
不老不死の生き物 ほか)
2 奇妙な植物(もし、あなたが虫だったら
人食い植物の伝説 ほか)
3 毒のある植物たち(毒の森でリフレッシュ
毒を使うプリンセス ほか)
4 恐ろしき植物の惑星(共生の真実
操られしもの ほか)
「できそこないの男たち」福岡伸一
著者は分子生物学教授。
本書を簡略にまとめると、
生命体は女性が基本、と書かれている。
興味深くおもしろい。
P160
その部分はちょうど女性器の割れ目にあった左右の大陰唇を縫い合わせてできた、だぶつきがある袋状の場所である。こうして陰嚢が出来上がる。
P166
男性は、生命の基本仕様である女性を作りかえて出来上がったものである。だから、ところどころ急場しのぎの、不細工な仕上がり具合になっているところがると。(中略)
アダムがイブを作ったのではない。イブがアダムを作り出したのである。
P182
地球が誕生したのが46億年前。そこから生命が発生するまでにおよそ10億年が経過した。そして生命が現れてからさらに10億年、この間、生物の性は単一で、すべてがメスだった。
P184
生命が出現して10億年、大気には酸素が徐々に増え、反応性に富む酸素は様々な元素を酸化するようになり、地球環境に大きな転機がおとずれた。気候と気温の変化もダイナミックなものとなる。多様性と変化が求められた。
メスたちはこのとき初めてオスを必要とすることになったのだ。
【関連図書】
「生物と無生物のあいだ」福岡伸
「動的平衡 新版」福岡伸一
「動的平衡 2 新版」福岡伸一
「動的平衡」(3)福岡伸一
【関連図書】2
「オスとメスはどちらが得か?」稲垣栄洋
【ネット上の紹介】
「生命の基本仕様」―それは女である。本来、すべての生物はまずメスとして発生する。メスは太くて強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす“使い走り”に過ぎない―。分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら「女と男」の「本当の関係」に迫る、あざやかな考察。
第1章 見えないものを見た男
第2章 男の秘密を覗いた女
第3章 匂いのない匂い
第4章 誤認逮捕
第5章 SRY遺伝子
第6章 ミュラー博士とウォルフ博士
第7章 アリマキ的人生
第8章 弱きもの、汝の名は男なり
第9章 Yの旅路
第10章 ハーバードの星
第11章 余剰の起源
「世界史を変えた植物」稲垣栄洋
コンパクトな中に情報がぎっしり詰まっている。
とても面白く、お買い得な作品、と思う。
読んでみて!お薦めです。
P41
コメは栄養価にも優れている。炭水化物だけでなく、良質のタンパク質を多く含む。さらにはミネラルやビタミンも豊富で栄養バランスも優れている。(中略)
唯一足りない栄養素は、アミノ酸のリジンである。ところが、そのリジンを豊富に含んでいるのがダイズである。そのため、コメとダイズを組み合わせることで完全栄養食になる。ご飯と味噌汁という日本食の組み合わせは、栄養学的にも理にかなったものなのだ。
P135
世界で最も多く栽培されている作物はトウモロコシである。次いでコムギの生産量が多く、三位はイネである。トウモロコシ、コムギ、イネという主要な穀物は世界三大穀物と呼ばれている。四位がジャガイモ、五位がダイズであり、食糧として重要なこれらの主要な作物に次いで生産されているのがトマトである。
P192
日本人が古くから飲んできた番茶に含まれるカフェインの量は、1杯当たりおよそ10ミリグラムである。一方、高級なお茶であった煎茶は20ミリグラムである。
これに対して、コーヒー1杯には、60ミリグラムものカフェインが含まれる。
P211
世界の古代文明の発祥は、主要な作物と関係している。
メソポタミア文明やエジプト文明には、オオムギやコムギなどの麦類がある。また、インダス文明には麦類とイネがある。長江文明にはイネがあり、そして黄河文明にはダイズがある。
アメリカ大陸に目を向けると、アステカ文明やマヤ文明のあった中米はトウモロコシの起源地であり、インカ文明のあったアンデスはジャガイモの起源地である。
P258
サクラの「さ」は、田の神を意味する言葉である。
サクラの他にも、稲作に関する言葉には「さ」のつくものが多い。田植えをする旧暦の五月は「さつき」と言う。そして、植える苗が「さなえ」である。さらに、「さなえ」を植える人が「さおとめ」である。(中略)
そして、サクラの「くら」は依代という意味である。つまり、サクラは、田の神が下りてくる木という意味である。つまり、稲作が始まる春になると、田の神様が下りてきて、美しいサクラの花を咲かせると考えられていたのである。
【ネット上の紹介】
古代の文明が植物によって生みだされたとしたら、どうだろう。近代社会を生みだした産業革命の原動力となったものが、ある植物であったとしたらどうだろう。世界一の大国であるアメリカの隆盛の陰に、ある植物があったとしたらどうだろう。アメリカの南北戦争やイギリスと清とのアヘン戦争の陰に、ある植物の存在があったとしたらどうだろう。人類の歴史は、植物の歴史でもある。本書では、そんな植物から見た世界の歴史をのぞいてみたいと思う。
イネ―稲作文化が「日本」を作った
コショウ―ヨーロッパが羨望した黒い黄金
トウガラシ―コロンブスの苦悩とアジアの熱狂
ジャガイモ―大国アメリカを作った「悪魔の植物」
トマト―世界の食を変えた赤すぎる果実
ワタ―「ヒツジが生えた植物」と産業革命
チャ―アヘン戦争とカフェインの魔力
コーヒー―近代資本主義を作り上げた植物
サトウキビ―人類を惑わした甘美なる味
ダイズ―戦国時代の軍事食から新大陸へ
タマネギ―巨大ピラミッド建設を支えた薬効
チューリップ―世界初のバブル経済と球根
トウモロコシ―世界を席巻する驚異の農作物
サクラ―ヤマザクラと日本人の精神
「生物と無生物のあいだ」福岡伸一
2007年 第29回 サントリー学芸賞・社会・風俗部門受賞
科学読み物の秀作、と思う。
2008年 第1回 新書大賞受賞作品だけど、古さを感じさせない内容。
ぜひ読んでみて、お薦めです。
「面白かった、読んでよかった」、って思える内容です。
P4
生命とは何か?それは自己複製を行うシステムである。20世紀の生命科学が到達したひとつの答えがこれだった。
P36
ウイルスは、栄養を摂取することがない。呼吸もしない。もちろん二酸化炭素を出すことも老廃物を排出することもない。つまり一切の代謝を行っていない。(中略)
ウイルスは自己複製能力を持つ。(中略)
結論を端的にいえば、私は、ウイルスを生物であるとは定義しない。つまり、生命とは自己複製するシステムである、との定義は不十分だと考えるのである。
P84
博士号とかけて足の裏についた米粒と解く
そのこころはとらないとけったくそ悪いが、とっても喰えない
P163
私たちが仮に断食を行った場合、外部からの「入り」がなくなるものの内部からの「出」は継続される。身体はできるだけその損失を食い止めようとするが「流れ」の掟に背くことはできない。私たちの体タンパク質は徐々に失われていってしまう。したがって飢餓による生命の危険は、エネルギー不足のファクターよりもタンパク質欠乏によるファクターのほうが大きいのである。エネルギーは体脂肪として蓄積でき、ある程度の飢餓に備えうるが、タンパク質はためることができない。
P180
常に傷ついたタンパク質、変性したタンパク質を取り除き、これらが蓄積するのを防御することができる。(中略)生命はさまざまなストレスにさらされ、その都度、構成成分であるタンパク質は傷つけられる。酸化や切断、あるいは構造変化をうけて機能を失う。糖尿病では血液の糖濃度が上昇する結果、タンパク質に糖が結合し、それがタンパク質を傷害する。(アルツハイマー病、狂牛病、ヤコブ病もタンパク質が構造に異常を来し、脳の内部に蓄積する。廃物の蓄積速度が、くみ出す速度を上回った状態になる、と)
【ネット上の紹介】
ページをめくる手がとまらない極上の科学ミステリー。分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色がガラリと変える。読むとかならず誰かにすすめたくなる一冊です。15万部突破!。朝日新聞、読売新聞、産経新聞、週間文春等各詩誌、王様のブランチ(TBSテレビ系)ほかで絶賛、話題沸騰!「福岡伸一さんほど生物のことを熟知し、文章がうまい人は希有である。サイエンスと詩的な感性の幸福な結びつきが、生命の奇跡を照らし出す。」――(茂木健一郎氏)「超微細な次元における生命のふるまいは、恐ろしいほどに、美しいほどに私たちの日々のふるまいに似ている。」――(内田樹氏)「スリルと絶望そして夢と希望と反逆の心にあふれたどきどきする読み物です!大推薦します。」――(よしもとばなな氏)「分子生物学の最前線は福岡さんの異議申し立てにどう反論するか。興味津々だ」――(最相葉月氏)
ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
アンサング・ヒーロー
フォー・レター・ワード
シャルガフのパズル
サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
ダークサイド・オブ・DNA
チャンスは、準備された心に降り立つ
原子が秩序を生み出すとき
動的平衡とは何か
タンパク質のかすかな口づけ
内部の内部は外部である
細胞膜のダイナミズム
膜にかたちを与えるもの
数・タイミング・ノックアウト
時間という名の解けない折り紙
「動的平衡」(3)福岡伸一
生命とは何か?
シリーズ3冊目。
とても興味深いので読んでみて。
P32
幸い、ニューヨーク州は、北に自然豊かなキャッツキル丘陵地帯がある。そこから長大なトンエルを掘ってニューヨーク市街に水を導くことになった。
P33
ニューヨークの水道水はおいしいことで評判だ。
P80
私たちが毎日、タンパク質を食物として摂取しなければならないのは、自分自身の身体を日々、作りなおすためである。
P119
免疫システムの最大の敵は、ストレスなのである。
P131
がん細胞は、いうなれば、社会の一員として職業に就き、自分の専門の仕事に邁進していた大人が、あるとき何の拍子か、すべてを放り投げて、青春期に戻って当てのない自分探しを始めてしまったようなものだ。
P174
抗生物質の発見は、近代医学史上、最大の革命のひとつに数えられる。
P196
赤ちゃんは子宮から押し出され、そのかわいらしい、しかし大きな脳をもつ頭部を狭い産道にこすりつけながら、やっとの思いで外に出てくる。まさに生まれ出ずる苦しみだが、このとき、赤ちゃんは好むと好まざるとにかかわらず、産道の壁に口や鼻をぴったりと押し付けることになる。膣の壁は外界に直接通じており、そこはある意味で雑菌がうようよ棲みついている。赤ちゃんはこれらを無理矢理なめとらされる。赤ちゃんはお母さん以外の生命体に初めて出会うことになる。これが腸内細菌の最初の候補者となる。(乳酸菌とビフィズス菌が、お母さんからのプレゼントだ。じゃあ、帝王切開の場合どうなるのか?親がアレルギー体質だと、アレルギー疾患のリスクが高まる、とも言われている。正常分娩の方が、赤ちゃんは良いスタートを切れる、と言える)
【関連図書】1
「動的平衡 新版」福岡伸一
「動的平衡 2 新版」福岡伸一
【関連図書】2
【ネット上の紹介】
生命現象の核心を解くキーワード、それは「動的平衡」。哲学する生物学者が問う生命のなりたち、ふるまい、ありよう―流麗な文章でつづられる、福岡生命理論の決定版。
第1章 動的平衡組織論
第2章 水について考える
第3章 老化とは何か
第4章 科学者は、なぜ捏造するのか
第5章 記憶の設計図
第6章 遺伝子をつかまえて
第7章 「がんと生きる」を考える
第8章 動的平衡芸術論
第9章 チャンスは準備された心にのみ降り立つ
第10章 微生物の狩人
「動的平衡」第2弾。
前回に引き続き、生命とは何か、と根源的な問題を考察し、
関連して、最新サイエンスが紹介される。
P61
P100
P233
P240
この息のうち4パーセント、つまりざっと600リットルが二酸化炭素である。
P262
では、いったい、私たち人間は何を判断基準に生きていけばいいのだろうか。これはもう一義的に言えるようなテーマではないと思う。ただ、個人的な感想として言えば「真偽」「善悪」の次のフェーズとして「美しいか、美しくないか」という「美醜」のレベルがあるように感じている。(生命がテーマだけど、別な話をする。例えば、クライミングにおいて「チッピング」の「真偽」「善悪」は、どう判断するか?・・・これに対して、「美しくない」、と返せる)
身近な話題から深淵なテーマまで、さまざまな切り口で、最新のサイエンスを紹介。読者を「生命の本質とは」という根源的な問題に誘っていく。新書化にあたり、時間についての論考を追加。知的興奮が味わえる「福岡ハカセの生命理論」決定版。
第1章 「自由であれ」という命令―遺伝子は生命の楽譜にすぎない
第2章 なぜ、多様性が必要か―「分際」を知ることが長持ちの秘訣
第3章 植物が動物になった日―動物の必須アミノ酸は何を意味しているか
第4章 時間を止めて何が見えるか―世界のあらゆる要素は繋がり合っている
第5章 バイオテクノロジーの恩人―大腸菌の驚くべき遺伝子交換能力
第6章 生命は宇宙からやって来たか―パンスペルミア説の根拠
第7章 ヒトフェロモンを探して―異性を惹き付ける物質とその感知器官
第8章 遺伝は本当に遺伝子の仕業か?―エピジェネティックスが開く遺伝学の新時代
第9章 木を見て森を見ず―私たちは錯覚に陥っていないか
第10章 「動的平衡」時間論―世界は流れゆく
第1章 脳にかけられた「バイアス」―人はなぜ「錯誤」するか
第2章 汝とは「汝の食べた物」である―「消化」とは情報の解体
第3章 ダイエットの科学―分子生物学が示す「太らない食べ方」
第4章 その食品を食べますか?―部分しか見ない者たちの危険
第5章 生命は時計仕掛けか?―ES細胞の不思議
第6章 ヒトと病原体の戦い―イタチごっこは終わらない
第7章 ミトコンドリア・ミステリー―母系だけで継承されるエネルギー産出の源
第8章 生命は分子の「淀み」―シェーンハイマーは何を示唆したか
第9章 動的平衡を可視化する―「ベルクソンの弧」モデルの提起
1章 フィールド武者修行
2章 カラスは食えるか
3章 人気の鳥の取扱説明書
4章 そこにいる鳥、いない鳥
5章 やっぱりカラスでしょ!
付録―カラス情報
子に身を捧ぐ生涯―ハサミムシ
母なる川で循環していく命―サケ
子を想い命がけの侵入と脱出―アカイエカ
三億年命をつないできたつわもの―カゲロウ
メスに食われながらも交尾をやめないオス―カマキリ
交尾に明け暮れ、死す―アンテキヌス
メスに寄生し、放精後はメスに吸収されるオス―チョウチンアンコウ
生涯一度きりの交接と子への愛―タコ
無数の卵の死の上に在る生魚―マンボウ〔ほか〕
なぜハスは困果倶時のたとえに用いられたのか ほか)
第2章 仏教と植物の意外に美味しい関係(隠元禅師が日本に伝えたのはインゲンマメかフジマメか
ネギは神聖なのか不浄なのか ほか)
第3章 心に染みる仏教と植物の話(仏様の渇きをいやすミソハギのしくみ
ともに生きるレンゲの智恵 ほか)
第4章 仏教が理想とする植物の生き方(どうして肉食が禁止されるようになったのか
どうして植物を食べることは殺生ではないのか ほか)