鐡路便當(60元) 莒(草冠に呂)光號の車内販売
樹林停車中に年配のご婦人が乗ってきた。通路を歩いているところへ、「アーマー…」と乗客が口々に何か呼び掛けている。中国語は解らないが、状況からして、ご婦人に空席があるからそこに掛けるよう言っているに違いない。ちなみに空席は私の隣、窓側の席である。私の隣に座ったこのご婦人は自願無座(立席)の客であろう。終点までご婦人の席の切符を持った客は現れなかったから、この席は空席だったのだ。昨日、台北で切符を買った時に、何故窓側の席を売ってくれなかったのか。車窓を楽しむため(だけ)に台湾に来ているのに。
莒光號 35次は樹林を12時40分発。暫くして車内販売のワゴンを押した服務小姐が現れたので、さっそく便當(弁当)を買う。二つくれようとするが、隣のご夫人は連れではない。一つだよと言って買う。60元。ワゴンにはやはり酒類は見当たらない。駅で買っておいたビール飲み、便當を食う。盛り付けは大雑把だが旨い。ところで莒光號の座席にテーブルは付いていない。弁当箱を置く事が出来ないので大いに困る。テーブルはないのに、フットレストはあるので、テーブル代わりに使う。小さくて傾斜があり不安定なところで、弁当箱を置いたり、ビールを持ったりしているうちに、箸を床に落としてしまう。代わりの箸は無いので、ちり紙で拭いて使う。食事を終え、静岡玉露を飲む。台湾のお茶には砂糖入りの物があるが、これは無糖である。食事を終えて手洗いに立つ。手洗所は日本の国鉄を思わせる。途中でデッキを通るが、扉は手動なので開け放たれたままである。ガラスを通さない風景が流れてゆく。旧型客車を思い出す。
列車は決してガラガラにはならず、通路に立つ人も出てきた。足の悪い老人が、頻繁に手洗に立っていたが、ちょうど席を立っている時に駅に到着して、乗ってきた客が老人の席に座ってしまった。そして老人が帰ってきた。どうなるかと見ていると、老人が自分の席に座った客に猛烈に文句を言い始めた。結局、老人は席に戻ることが出来た。南国とはいえ、11月で日没は早い。車内の様子を見て過ごすしか用は無い。
莒光號 35次 (屏東)
何かの拍子に、隣のご婦人が話し掛けてきた。私は中国語は話せません、と英語で言うしかない。約6時間も隣に座っていて、外国人とは気付かれなかったのだ。車両基地なのか700T型列車が沢山留まっているのが見える。そして高鐵の左營站。高雄側の終着駅である。隣接する台鐡線には新左營站が建設されている。まだ開業していないので、莒光號は通過して、左營に停車した。判りづらいが、(高鐵)左營站と(台鐡)新左營站が乗換駅で、(台鐡)左營站は高雄方の次の駅である。例えると新幹線新大阪駅が(JR東海)大阪駅、在来線新大阪駅が(JR西日本)新大阪駅となる。神戸方の次の駅が(JR西日本)大阪駅という具合だ。愛河を渡って、19時に高雄に到着した。車内はようやく空いてきた。隣のご婦人も下車した。この先の屏東線は初めて乗る区間だが、車窓は闇の中である。窓側の席が空いても仕方が無い。板橋から約7時間掛けて、19時24分に終着の屏東に到着した。老人もここで降りた。 (つづく)
台鐡 屏東線 屏東車站 (台灣省屏東縣屏東市)
いずれも民國95年11月25日撮影