読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

ゴサインタン[神の座]

2010年04月07日 06時09分17秒 | ■読む
篠田節子著、双葉文庫刊
山本周五郎賞の受賞作品は、直木賞と並んで私の好みにあった作品が多いように思います。山本周五郎賞を受賞した作品中、「異人たちとの夏」、「砂のクロニクル」、「火車」、「閉鎖病棟」、「ぼっけえ、きょうてえ」、「五年の梅」、「邂逅の森」、「君たちに明日はない」、「ゴールデンスランバー」、「果断 隠蔽捜査2」が、読了した作品です。
受賞作品は、当然多彩で、追い詰められた人、人生の波に翻弄された人、不条理に直面した人など、登場人物も様々ですが、いずれも人の有り様を描いている点で共通しています。
そして、本作も受賞作品です。篠田さんの作品を初めて読み、下記のURLで経歴を調べたところ、年齢は私と一歳違いです。そのためか、作品を読んでいて、同じ時代を生きてきたのだな、と感じました。作中、男性と女性が置かれた社会状況を描いていますが、丁度、私達の年代に共通する問題意識に根差しているのではないかと思います。また、過去のしがらみやしきたりが女性をがんじがらめにしたり、地域社会を閉鎖的にしている状況を基礎として、作品世界が展開されて行きます。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/篠田節子
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しかし、本書の魅力は、次の展開が全く読めない所だと思います。多くの著作は、展開の先を漠然と予想しながら読んでいますが、本書に関しては、全く予想と異なった展開が待ち受けています。さすがに終盤にもなると、落としどころがはっきりしてきますが、それでも、その前に、まるで障害物のようにいくつものエピソードがちりばめられています。そして、それらは、主人公が再生するために必要な体験なのだと思います。
作中、様々な不可思議な現象が起きますが、作者は説明をしていません。そこに起きつつある事を静かに語り続けています。読者に解釈のための材料を提供しながら、明確な謎解きはしません。奇跡は奇跡であるが故に、その存在を示すのみであるようです。そして、主人公の再生を読者も共有し、誠に厳かな心持ちで読了すると思います。
評価は5です。

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