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読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

父の詫び状/朗読:渡辺美佐子

2009年12月02日 19時32分29秒 | ■聴く
向田邦子著、新潮カセットブック刊
向田さんのエッセー集「父の詫び状」の中の3編「身体髪膚」、「父の詫び状」、「子供達の夜」を収録しています。戦前から戦後の、向田さんが育った家庭の情景が美しく描かれています。私より25歳も年上ですから、ほとんど母と同じ世代ですが、その家庭の情景は、私が幼い日を過ごした昭和30年代と多少近い情景が伺えます。恐らく若い人が読んでも、景色として思い浮かばないでしょう。
日本人の生活が大きく変わったの昭和40年代ではないかと思います。急激な経済成長が家庭と生活様式に大きく影響を与えました。その時代は、私が中学生生活に入った頃からで、食べ物、着るもの、そしてレジャースタイルなどに、大きな変化の時代でした。そして、家族の関係が大きく変わった頃でした。
向田さんが描いている戦前・中の家族の有り様は、まだ、明治以来培われてきた伝統的な日本の家族が生きていたようです。家長としての父親と、それを支える母親の関係が背景となり、絶妙な家族の関係が描かれています。また、妻は夫を立てながら、主張すべき所は賢く主張している様も描かれています。
印象的な場面がいくつかありましたが、もっとも心に残ったのは、「昔は夜が静かだった・・・。」の下りです。そうでした。私が思春期の頃、秋の夜長に遠くから聞こえてくる貨物列車の長い通過音。秋の夜長は、音が遠くまで届くのは、大気が地表近くで冷えて発生する大気のレンズ効果で、上空へ逃げてしまうべき音が曲がって、普通より遠くまで聞こえる、と理科の参考書で読んで感動したことを思い出しました。
また、家族の邪魔にならないよう、小さく絞ったラジオから、雑音と共に聞いたフランク・シナトラやのビートルズの曲。向田さんのこのエッセイ集は、まさに静謐なたたずまいをまざまざと再現し、心に深く残りました。
評価は5です。

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