読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

最後の忠臣蔵/映画

2010年12月19日 19時01分18秒 | ■見る
久し振りに魂を揺り動かされました。クリント・イーストウッド監督の「グラン・トリノ」と同じように。物語は、武士道を貫く二人の男を巡って淡々と描かれて行きます。主人公の役所広司さんが誠に圧巻の演技でした。ヒロイン(?)役である可音(かね)を演じた若い桜庭ななみさんも実に瑞々しく心に染みる演技でした。他にも片岡仁左衛門さん、伊武雅刀さんなど、圧倒的な演技で、心ゆくまで作品を楽しめました。
観客は、年配の方(私もそうですが)が多かった。あちらこちらで、耐えかねて涙している雰囲気が満ちていました。それぞれの人生の体験に重ね合わせ、思い至る記憶と響き合ったのだと思います。
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URL => http://wwws.warnerbros.co.jp/chushingura/
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この作品の原作は読んでいませんが、終盤でえ可音の嫁入り道中の道すがら、多くの赤穂浪士が加わる場面以外は無駄が無く、過不足がありません。そして、人が武士の道と信じて自分の一生を捧げようとする姿は、乙川優三郎さんの「生きる」に似て、胸苦しく感じ、人生の意味を考えさせられます。人のために身を捧げるのは、世界中に普遍的かもしれませんが、キリスト教の文化圏で、本作品がどのように受け止められるのかが、非常に興味深い所です。
日本人が道(型)に倣い生きる事は、ある種予定調和的ともいえます。丁度、結婚式で媒酌人が、原稿を読まず、すべてを型どおり挨拶し遂げた際の会場に流れる安堵感などが似ているかもしれません。人が個としてどう生きるかを、自分だけの人生から学ぶには限度があります。だから、世の習慣、道徳、宗教などの、いわば社会や人の英知に学びながら、自分の人生を歩んで行く。そうした一つに武士道と言われるものがあるのだと思います。現代では失われつつあるからこそ、非常に感銘を受けたのだと思います。
作中、主人公の瀬尾孫左衛門が負った使命を知った寺坂吉右衛門と、孫左衛門と交わす視線が印象的でした。役所さんは目の表情で、悲しみ、惑い、喜び、愛情、苦しみを演じていました。役者は凄い、と感じると共に、感極まる場面でした。
本作品は、画面に隙がありませんでした。美術、衣装、照明、カメラのすべてが深く極めた技術に支えられているのでしょう。特に、陰翳礼賛とでも言うべき映像美は圧倒的でした。
評価は5です。

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