道端鈴成

エッセイと書評など

新春歌謡放談

2007年01月03日 | 言葉・芸術・デザイン
道端「おめでとうございます。」
河端「やあ、おめでとう。ちょうど良いところに来てくれた。」
道端「どうしたんです。」
河端「家人が。話相手にならないというか、まるで小言爺あつかいだ。」
道端「まんまというか、あ、いえ、私は先輩のお話を楽しみにきましたんです、はい。」
河端「そうか、まあ一杯やってくれ。なんだ、あの紅白。家人につきあって、つい見てしまったが、安物のポテトチップスと古くなったお造りを同じ皿に載せてかき回した感じで胸が悪くなった。DJオズマだかなんだか、裸もどきで挑戦のつもりか。実にくだらん。」
道端「DJオズマの裸もどきはインターネットで見ました。茸で恥部隠しは下品です。すっきり裸の方がよっぽどましです。それに、恥部隠しをするならやっぱり葉っぱでしょう。紅白でも葉っぱ隊かアルゴリズム行進をやって欲しかったです。小林幸子だって、1トンですか、巨大化するだけではなく、ピタゴラス装置とフュージョンするとか、」
河端「道端君の趣味でいくと、視聴率は一桁だろうな。」
道端「いえ。視聴率もちゃんと考えています。安物のポテトチップスと古くなったお造りを同じ皿という比喩は、言い得て妙です。せっかくNHKは沢山チャンネルを押さえているのですから、前半は、なつかしの紅白歌合戦と、紅白ミュージックバトル、あかしろうたがっちぇんの3チャンネル構成にし、最後は、全部あわせて紅白歌のハルマゲドンとして、」
河端「なんだ、その、あかしろうたがっちぇんというのは。」
道端「コスプレ、声優総出演で、アニメソングを中心にやります。たまらんひとにはたまらんとおもいます。」
河端「どうも道端流は視聴率一桁から離れられんようだな。」
道端「大丈夫です。視聴率は三チャンネル合計でいきますから。」
河端「道端君は視聴率の心配などしなほうがいいよ。」
道端「そうですね。視聴率を気にしてないマイナーな番組だと思いますが、今日、NHKのラジオでニューイヤーオペラの前半を聴きました。ひさしぶりのフィガロの結婚でした。プッチーニなどの、すこし芝居の書き割りめいたところのある名曲と並べると、あらためてモーツァルトは金無垢だなと感じました。歌手はすべて日本人ですが、実に堂に入ってました。とくにバリトンなど見事でした。その後のデビュー50年のイタリア人メゾ・ソプラノ歌手の声が良く出るのにも感心しました。歌手は咽が命だなと、あらためて思いました。」
河端「そうだな。紅白でも、夏川りみの声は、聴いていて持ちが良かった。細川や布施も相変わらず響く声ではあった。しかし、全体とすると、肝心の咽という楽器がお粗末で、周りだけデコレートした感じが強かった。まあ、道端君のオペラ評にしろ、素人の感想なんだが。」
道端「そうですね。実は、暮れにつきあわされて、美空ひばりの特番を2時間近く見てしまいました。」
河端「パジャマ党の道端君が珍しいな。」
道端「最初はいやいやでしたが、聴いているうちに、微妙なところまで音程が正確で、やや低い地の声と裏声の高い声の使い分け、全身全霊での曲への感情移入、感銘をうけました。「車屋さん」など明るい発声のややコミカルな歌から、「柔」などの低い地の声を強調した歌、低い地の声と裏声の高い声が絶妙に組合わさった「悲しい酒」などの歌、等々、表現の範囲も広いです。特定のタイプの歌が得意な歌手はほかにもいますが、これだけ広い範囲で、見事な表現のできた歌手はあまりいないです。たしかに不世出の大歌手だったと思います。早い晩年での、病気を押してのステージでは、低い張りのある声が消えて、高い透き通った感じの歌で、聴いていてつらい感じがしました。」
河端「そうか、やっと、道端君にも美空ひばりの良さが分かるようになったのか。よし、よし。実は、私も「塩屋岬」を持ち歌にしようと、ひそかに練習をしていたのだ。ひとつ聴いてくれないか。何なら道端君も一曲どうだ。」
道端「いえ。今日は、新春放談ということで、この辺で。」
河端「そうか、せっかくの機会で残念だが、またにしよう。」
道端「はい。また、いずれ、あらためて、そのうち、もしかしたら、ということで。」