道端鈴成

エッセイと書評など

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再生医療のブレークスルー

2007年11月24日 | 時事
道端「おひさしぶりです。」
河端「やあ。しばらく、どうしてたんだ。」
道端「なかなか忙しくて。吉兆はショックでした。」
河端「道端君は、賞味期限は気にしないんじゃあなかったんじゃないかな。」
道端「いえ。産地の偽装は別です。詐欺的商売ですから。」
河端「道端君は吉兆はなじみなのか?」
道端「それにしてもミシュランの東京版楽しみですね。」
河端「道端君、話しをそらさないように。見えをはらなくても良いよ。道端君のためにお勧めのサイトを見つけてきてあげたから。」
道端「ああ。昆虫料理研究のサイトですか。そうですね、あそこはわりと昔からやってますね。調理はいまいちですが、情報が豊富で役に立って楽しいサイトです。」
河端「すでに知っていたのか。さすがは、サバイバルグルメだな。実践してそうだな。もっと一般向きにはこんなのもあるよ。」
道端「すみません。昆虫食は前から興味がありまして。昆虫料理研究では昆虫はもっぱら野外で採集ですが、食料の昆虫の飼育や、家庭虫園などの試みも必要かと思います。飼料にハーブを使ったりすると、楽しみが広がると思います。もともと昆虫は牛などに比べるとエネルギー効率が良く、良質の脂肪やタンパク質、ミネラル、ビタミンなどをふくんでますし。牛や豚などの知能の高いほ乳類、我々と同じ暖かい血がよい、親もいれば子もいる、そんな生き物を組織的に殺して食べるのは、人間にとって良いことなのかという気がします。緑豆グループなどキリスト教圏の偽善者の人々は捕鯨非難に熱心なようですが、自分達の牛の扱いがどうなのか、ヒンズー教の人々の心を踏みにじっていないのか、マタイ福音書7でももう一度読んで出直してこいと言いたいです。まあ、自分の目に丸太をくっつけたままあれこれ人を非難する独善癖をなおすのは難しいでしょうが。」
河端「食の問題になると、俄然熱を帯びてくるな。」
道端「京都大学のCOEプロジェクトに昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生というのがあります。是非、21世紀の虫食文化の基礎となる研究もしてもらいたいと思います。」
河端「そうだな。道端君みたいな人が沢山いればだがな。いずれにしろユニークな研究をしてほしいものだ。ところで京都大学といえば、山中教授のグループが人の皮膚から、ES細胞(胚性幹細胞)と同様な分化能をもつ幹細胞を作り出すのに成功したと報じられているが。」
道端「はい。21世紀に入ってからのこれまでの科学研究のなかでは、最大のブレークスルーと言って良いかと思います。ウィスコンシン大学のチームもやや遅れてScienceに出しましたが、山中教授のグループの方は、Cellのより詳しい論文ですし、昨年度はマウスを使った結果を報告していて、ウィスコンシン大学のチームの研究はそれを参照してのものです。山中教授のグループのプライオリティーは明確だと思います。The Timesは、すでに7月16日の記事Human stem cells may be produced without embryos ‘within months’で、山中教授のグループの研究を紹介しています。またThe Times ONLINEの11月21日では、Leo LewisがIs the synthetic stem cell Japan's greatest ever invention?というタイトルでブログ記事を投稿しています。答えは、"Well I think so..."です。このなかには、山中教授の下のような言葉が引用されています。
 『日本の幹細胞研究に対する政府の態度には2つ大きな問題がある。
 まず、一つの幹細胞に関する実験のたびに500ページもの書類3部を提出しなければならない。これを書くのに1カ月、さらに政府の審査に1カ月、これでは英国のライバルがその間10回以上実験できてしまう。本気で競争しようと思ったら、研究者を一人首にして代わりに事務員を2人雇わなければならない。
 だからほかの研究者が、公務員仕事の代わりに実験に集中できるよう、幹細胞を人工的に作る方法を見つけたんだ。
 それから日本の厚生省の気の変わりやすさ。長期研究を短い期間に押し込めたり、十分な資金を与えずに放置したり。問題は、事務官の長が3年ごとに変わることだ。新しい人が来るたびに、科学研究に足跡を残そうと新しい予算を立ち上げるが、科学的な根拠はなく思い付きだけで、すでにある研究プロジェクト(どんなに成功していても)から予算を奪ってしまう。基本的に、3年でプロジェクトが完成できなければ、あきらめろということだ。』」
河端「なるほど。さすがはThe Timesだな。些末な形式主義と無定見で現場を困らせている日本の役人にはじっくり読んで反省してもらいたいものだ。いくら鉄面皮だと言ってもまさか我々の提供した不自由と拘束が山中教授の発憤と研究をうながしたなどとはいわんだろうな。」
道端「まあ、それはないでしょう。今回の研究は、再生医療、ひいては医療全体に大きなインパクトを与えるものです。アメリカでは大統領が今回の成果に歓迎のコメントをし、ローマ法王も体細胞の利用は倫理的な問題がないとさっそくコメントを出しました。こうした素早い反応に比し、日本の政治家はほとんど反応してないようですし、役人がまた無定見と形式主義で、せっかく現場の研究で出てきた芽を育てられない、つぶしてしまうのではと心配です。」
河端「メディアもそこを報道してほしいものだ。」
道端「日本で科学的知識や考えが普及しない背景には、学者やメディア、役人の世界で正当化の論理がつよすぎて、選択主義の思考が弱い事が影響しているのではないかと思います。欧米では正当化の論理は宗教と結びついていますが、日本の宗教にはキリスト教のような原理主義はあまりありません。かわりに正当化の論理の中心になっているのは法的な思考です。役人などは法的な思考にどっぷりつかって、正しい法令を適正な手続きにしたがって適用すれば誤りはありえないと考えています。その法令や手続きが社会や個人に何をもたらすのかなどの結果によって評価するという発想はきわめて弱いです。役人の無謬主義はここからでてきます。科学的な考え方は、ちょうどこれとは逆方向で、可謬主義で仮説検証を基本としています。で正当化の論理と選択主義は、ポパーが言うように、」
河端「あ、またポパーか。いや、ありがとう。道端君の選択主義と正当化主義、またの機会にじっくりうかがうことにするよ。」
道端「はい。わかりました。」
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