以前ここで、「全部"引き出し"式の冷蔵庫」 の話題を出した。この記事、ナニが読みたくてか 知らないが"ほぼ"毎日、微量のアクセスがある。
日本だと、2台目(のサブ冷蔵庫)でもなきゃ購入はキビしそうだなぁ……てのが(当時の)自分の感想だった。きょうは、それを延長したような「こんな大型冷蔵庫 、魅力もあれば欠点も…」というネタでお送りしようと思う。
ご覧にいれるのは、日本に住んでる限り(まず滅多には)お目にかかることもないドイツのキッチン家電メーカー、《Kuppersbusch|クッパーズブッシュ》 社 製の冷凍冷蔵庫。そのまたハイエンド・モデルの
KE-9000 シリーズ❕ である。
まず、シリーズのなかでも最上位の旗艦モデル
KE-9800 。
その下のモデルが、
KE-9600 。ちなみに現在の欧州における市場価格は(目下の円ユーロ相場で)、
KE-9800 が約36万円。
KE-9600 が約31万円だ。
KE-9600の方が、ひと回り細身に見える❔かも知れないが、庫内空間は
KE-9600 が542L、
KE-9800 が540L。驚くなかれ、僅かなれど下位機の方が
「たくさん入る」 んである。
よほど(超の付く広さの)豪邸にお住まいのかたを除いて、540Lなんてデカさの冷蔵庫が36万円、という価格は果たして
高いんだが値打ちなんだか 見当も付かないと思う。結論から言うと、ドイツのキッチン装備メーカーの名門が世に出した製品のワリには、36万円なら「けっして高くない」。ドイツの高級車は日本のそれより高い、とかの定着イメージからすると「日本製品並み」の相場なのだ。
たとえばパナソニックの「最高級」冷蔵庫
NR-F604HPX も、国内店頭での市価は36万円。すぐ下のモデル
NR-F604WPX が30万円で、
KE-9000 シリーズに準じ、外形の大きさ加減も
ほぼ 同じなのだ。ニッポンのキッチンも、特に裕福なお宅では西欧並みになってきた…というコトか。さらには、外形がほぼ同じなのに、パナ製のこれらモデルの庫内容量はナンと600Lっ❕❕ ドイツのそれより、実に1割も広い
!? んである。
われわれ下層民にとっちゃ、540Lも600Lも(逆に)違いは感じられないかも。どっちにせよ、
スゴくデカい 冷蔵庫にゃ変わりない
ww 外形寸法のことを言うと、ドイツの両モデルはともに幅×高さが(京都以東の東日本でいう)
たたみ1畳 のサイズにほぼ合致し、それが72㎝の奥行きを持った大きさ、と喩えられる。内寸容量である「540~600L」に関しても
あえて 、その「だだっ広さ」感を説明してみると、下掲図
↓ 右側のような概算になる。
ところで自分は、この「日独
60L の差」が
どこから 生じるのか、に着目してみた。
ひとつは、パナソニック製品側の「構造革新」。パナの大型冷蔵庫はコンプレッサを冷蔵室の頂上部(天板)奥に移し、下部の冷凍庫を大幅に容量UPさせた。ふたつ目が、パナのように「メーカー出来合いの収納しか採れない冷蔵冷凍庫」か、クッパーズのような「ユーザー側で引き出しの配置や冷蔵冷凍区分をアレンジできる冷蔵庫」か❔ …の違いだ。
KE-9800 は上部(=冷蔵庫)の下段を引き出しボックスに出来る。また下部右側のドア内は「冷蔵庫(チルド)、氷温チルド、冷凍庫」の、いずれの温度帯にも設定を合わせられる。つまり全体で見れば、冷蔵庫と冷凍庫の「容積比」を変えられるのだ。
KE-9600 は世界的にも珍しい、冷蔵/冷凍区分を(上下でなく)左右に割った斬新なスタイル。向かって左が冷凍庫、右が冷蔵庫。冷凍庫上部は氷温チルド庫に宛がわれており、
KE-9800 みたく冷蔵庫と冷凍庫の「容積比」までは変えられない。が、冷蔵庫・冷凍庫とも「引き出しボックス」を付設できる柔軟さは備えている。
では、このように温度割りや収納タイプ(=棚か引き出しかホルダーか)をフレキシブルにすると、なぜ庫内容積が犠牲になるのだろう?
その答の直接的なモノは、引き出しボックス=密閉された小空間であるから、ボックス設置位置と(そうでない)開放空間では別々にサーモ(定温)制御する必要が生じるせいだ。小空間には別途、温度センサーと冷風ファンが宛がわれないと、例えば(まだ十分に)冷め切っていないスープでもボックスに入れた日にゃ、ボックス内は籠った熱がなかなか取り除けず、逆に開放空間内までも不用意に「温めてしまう」。
ボックス内に熱(=急な温度上昇)を感知したら、そこには独立したファンが猛回転して、局所的に急冷する仕掛け…つまり装置が必要になり、そのためのスペースを割(さ)く必要に迫られるのだ。結果、
KE-9600/9800 には4箇所から5箇所ものファン(=冷却風の噴出し口)が設けられることとなった。こうなると大元の冷却器自体、休まるヒマがなく……使用電力量は
KE-9600 で同クラスのパナ製の約35%増し。
KE-9800 に至っては67%増しで電気代を貪(むさぼ)る。
かたや、日本で作られる大型冷蔵庫は基本、ひとつの冷風ファンで冷凍庫も冷蔵庫もサーモ制御する
シングルファン方式だ。直結する冷凍庫はファンのON/OFFや回転数で温度を制御し、冷蔵庫へは
「無段階に流入冷気量を調節する空気弁」 たる
ダンパーサーモ 【同じく下図↓ 参照】 を介して冷温を保つ。
その代わり、庫内の「冷風の通り道」はメーカーの想定した通りでないと困る。内部収納のアレンジをユーザー側で勝手に出来る自由は無い。メーカーの指定した「食べ物の入れかた」には逆らわず、ただ大人しく従うことでのみ、
大容量スペース、静音性、抜きん出た省電力 は実現されてるんである。家電の細かなスペックには、見えない部分で生産国の国民性が色濃くにじむモノだと思う。
また国民性に含まれるのかもしれないが、独立系ファンを増設してでも冷気の「素早い効き」にこだわる西欧の気質は、日欧の「暖房文化の違い」にも一因がある。基本的に「凍れる国」である北欧・中欧・東欧では、冬季ともなればセントラルヒーティングがバンバン稼働。(日本家庭などのように生活時間だけの部分暖房で)部屋ごとに暖め分けない分、キッチンの室温は夜通し20度❕❔なんてコトも珍しくない。そんなところで、冷えたワインでも
と冷蔵庫を開け閉めされたんじゃ、日本製の冷蔵庫なんぞ「冷えにくいっ
」とボロクソに叩かれてしまうだろう。冷凍冷蔵庫というマシンにとって、欧州のキッチンは中近東ばりに「過酷な環境」だ。ヨーロッパ的には、音が多少うるさかろうと電気を余分に食おうと「急冷力」に見劣りする冷凍冷蔵庫だけは
(やはり)
お呼びじゃない んである。
以上…見てきた通り、庫内の収納タイプをアレンジできるなんて「さっすが、欧州の高級冷蔵庫はイイねえ🎵」と、パッと見感覚で憧れるは易しい。しかし、良い面の裏には必ず悪い面が。長所は、裏を返せば短所である。それでも読者諸氏は
KE-9000 シリーズを推すだろうか。それとも、やっぱり
NR-F604 シリーズに軍配を上げるしかないか。
「庫別」に独立した送風系統を持たせることを、
ボッシュでは「マルチ・エアフロー」と呼んでいる
VIDEO
同じくドイツの名門 Miele(ミーレ)では、
「ダイナクール」という"庫内かき回し"機能も
VIDEO
=了=
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