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雑感や書評など

古谷実「シガテラ (5)」

2005-08-23 08:39:08 | 書評
「女とやったら、人生観が変わる!」と豪語していた彼は、その時、既に経験済みだった。…………人生観が変わる前の彼は、いったいどんな人間だったのだろう……………


「シガテラ (5)」。


以前も少し書きましたが、古谷実の作品の女性って、けっこう無責任に男の欲望を投射した存在となっているよなぁ。(だからこそ、魅力的だけど)

シガテラのヒロイン・南雲さんなんて、美人でグラマーで勉強もできる。それでいながら、ちょっとしたことで落ちこんでしまう彼氏を、いつも理解してくれるような性格の良さ。しかも、主人公と同じ趣味であるバイクが好きで、エッチもさせてくれる。

完璧すぎ…………。


で、そんな彼女ができてしまい、バイクの免許・単車自体を手に入れてしまった、荻野君。彼自身は顔は良くない、体型はなで肩、勉強はできないといった中の下程度の男。

最初のころのように、ただただイジメられていたら、荻野君も、
人はけっこう違うんだ・・・・・・・・
例えば性的嗜好だってクラスの男子だけでも
みんな ちょっとずつ違う・・・・

僕はその点 自分はかなり普通だと自負している

ある人は女性の足首にしか欲情しなかったり
男性のオシリにしかグッとこなかったり・・・・・・・・

中には牛や羊・・・・
鉄のカタマリなどにしか欲情しない人もいるだろう

そして運の悪い事に人の血を飲む事や
内蔵をモミモミする事にしか欲情できない人もいる・・・・

おさえきれず・・・・
ビンビンになって そんな事をする彼らは
猟奇的殺人犯と呼ばれてしまう

僕はツイてる・・・・
まず1~4億ものライバル精子に打ち勝ち 1位でゴールした
だけで超ツイてる・・・・

そのうえ ちゃんと オッパイやオシリを見たり
触ったりする事で欲情する
古谷実「シガテラ (5)」135~136頁 講談社
「ちゃんと オッパイやオシリを見たり触ったりする事で欲情する」ような正常に男になれていなかったかも。

そうでなければ、ゴミだらけのアパートの一室で、胃がんに違いないと勝手に恐れて、人生を放棄しているような男になったかもしれない。


当然のことながら、彼を正常な方向に導いてくれる南雲さんにメロメロです。(越君みたいな彼女だったら、どうなっていたのやら)
が、自分が彼女とつりあっていないことは、痛感せざる得ないこと。
僕は南雲さんという〝彼女〟という存在ができて・・・・
弱くなったのか?

・・・・だとしたら悪いのは当然僕で
彼女はなにひとつ悪くない

出会う前は何もなかったし・・・・
どんなにつらい事があっても一人で何とかしてきた・・・・
そうせざるをえなかった・・・・

・・・・だけど今は・・・・
彼女に頼り・・・・時には彼女のためにと自分を欺き・・・・
常に傾いている不安定な状態

・・・・いや・・・・・・
・・・・違うな・・・・

イジメられてた・・・・
あの時の〝強さ〟みたいなものはニセモノで・・・・

ただ何もせず・・・・
厚い鎧を何枚も身につけ・・・・
石のようにジっとしていただけの
・・・・ダメな安定感だ・・・・

今はその重い鎧は不必要となりはがれ落ちた・・・・

やっとみんなと同じくらい身軽になったんだ・・・・

その無防備さ・・・・
スカスカ感に不安を覚え・・・・
弱くなったと錯覚しているのか?

とにかく・・・・
これからは自分の事は自分で決めるんだ!

南雲さんとか親とかは置いといて

自分で考えて
行動をするんだ
古谷実「シガテラ (5)」22~23頁 講談社
こうして、彼女と対等になる上でも(と言っても、優しい彼女なので、彼自身を下に見ているわけじゃないですけど)、荻野君も自立を図るべく、自らの人生を考え始めます。


それで、彼の立てた目標は、立派な(しがない)サラリーマンになること。そのためには、まず(そこそこの)大学に入ること。

健全、健全。


で、その行き先に立ちふさがる、荻野君をかつていじめていいた谷脇の登場で、次巻に続く。


シガテラ 5 (5)

講談社

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