すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

阿部和重「ニッポニアニッポン」

2005-07-13 08:07:44 | 書評
もういいよ、若貴問題は………


私だけでしょうか?
「雅子様のご回復には、どうすればいいのか?」
と思い出してように朝の番組で放送されることがあるけど、「一番いいのはマスコミが静かにして、プレッシャーを与えないことなんじゃないだろうか?」と思うのは、私だけでしょうか?
私だけ?


「ニッポニアニッポン」を読みました。

妄想にとりつかれた少年が、「人間の書いたシナリオ」によって生かされているトキに自分を重ね合わせ、トキを解放(殺害)すべく佐渡に渡るという話です。

崇高な稀少動物トキは、何しろあまりに非力であり、抵抗の術すら剥奪されてしまい、もはや操り人形みたいなものに改造されかけているため、俺の援助を強く必要としている。俺もまた、世間から自分という存在を消されぬために、トキの境遇を利用して、独自の行動を起こさねばならない。それゆえに運命が、俺とトキを固70 く結び付けた。トキは、復讐の協力を得る代わりとして、俺の人生に多大な意味を付与し、有意義な変革へと導くだろう。必ず、そうなる。俺をT入にしたことを、この国の連中すべてに後悔させてやる……
阿部和重「ニッポニアニッポン」69~70頁 新潮文庫


この小説の主人公の性格なんですが、どうも完璧すぎるんだよなぁ。
 ・自分のことを優秀な人間と思っている。
 ・女性に対して、変質的な性愛を抱いている。
 ・女性に嫌われているのに、ストーカー行為を繰り返す。
 ・インターネットによって、自己の妄想を肥大化させる。
 ・暴力的に親を支配して、完璧に依存しきっているが、一方で軽蔑している。
主人公の傾向を簡単に列記してみました。
どうでしょう? どっかの事件の犯人を思い起こさせるものばかりです。
それが、まずまず無理なく統合されているんですが、…………どうも完璧過ぎて、紋切り型の弊害が出ております。

でも、解説を読んだところ、この「紋切り型」というのも、もしかしたら、作者の作戦なのかもしれません。

が、それが、なにを意味しているのかまでは、僕には、ちょっと分かりませんでした。


また解説では、物語中の二人のヒロイン(?)、「本木桜」は「カードキャプチャーさくら」の「木之本桜」、「瀬川文緒」は「おジャ魔女どれみ」の「瀬川おんぷ」に由来していると書いてあります。

そのことは、表紙をからも分かるそうです。

左の子の手には「カードキャプチャーさくら」の「封印の杖」が握られおり、右の子の髪型は「瀬川おんぷ」と同じだそうです。
分かるでしょうか?

あんまり「カードキャプチャーさくら」と「おジャ魔女どれみ」は詳しくないのですが、なんとなく僕にも分かりました。

が、なんで、その作品からキャラクターの名前を借りただけではなく、表紙に登場させたのか? までは分かりませんでした。性格が似ているのでしょうか? 彼女たちにまつわるエピソードが、小説中でパロディにされているのでしょうか?
それとも、単なるお遊び?


さらに言えば、「瀬川文緒」というのは、佐渡で主人公と行動を供にする少女なのですが、個人的には、あまり意味を見出せないキャラでした。
「あたし、よく判らないけど……その、鴇谷さん、あたしは、鴇谷さんは、いい人だと思う。だから……」
阿部和重「ニッポニアニッポン」159頁 新潮文庫
主人公のトキ殺害計画を知った少女の言葉です。
なんで、こんなこと言わせたのかなぁ。

「稲中卓球部」の古谷実の作品では、どうしようもない男でも、適当に小奇麗な女性が惚れるようになっているけど、それと同じで、「誰でも愛してくれる女性が、いるもんだよ?」と言いたいのでしょうか?

うーむ。


それは、さて置き。
トキというのは、天皇の暗喩です(少なくとも、「トキ」=「天皇」と読めるような仕組みにはなっています)。

そんなわけで、今の皇太子妃問題と、ちょうど重ねて読めます。


まぁ皇太子妃問題に興味がなくても、おもしろく読めると思います。
個人的には、ちょっと物足りないものがありましたが…………。


ニッポニアニッポン

新潮社

このアイテムの詳細を見る

最新の画像もっと見る