すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

ポン・ジュノ「殺人の追憶」

2005-01-25 15:25:12 | 映画評
バンザーイ!………なしよ


定石通りに作品をつくると、なんだかんだで、適当なレベルのものが出来上がるものです。
しかし、完全に定石通りにしてしまうと、往々にしてありきたりの陳腐なものに堕してしまいます。
で、どうにか定石を、一つ二つずらしてやろうとするのですが、むしろ「なんだ、こりゃ?」という結果に陥ることもあります。下手をすると、その一つ二つの定石破りが作品全体の敗因にすらなってしまうことあります。


「殺人の追憶」ですが、タイトルから想像できる通り、サスペンスです。
韓国の田舎で起こった殺人事件を巡って、「土着の腕力に訴える刑事」と「ソウルから来たスマートな刑事」が、最初は反目し合いながらも、最終的には互いに感化されて協力して捜査に当たっていく、という物語。

これだけ書いてしまうと、「腕力型」と「知能型」の組み合わせで、「いかにも」な感じがします。
が、ネタバレになりますが、最後の土壇場で、サスペンスでありながら、「犯人が特定できない」という定石破りを敢行してくれます。
「犯人が捕まらない」「犯人を捕まえることができない」くらいならパターンとしてありそうですが、「犯人が特定できない」まま終わってしまうとは。

知恵遅れの犯行目撃者が、刑事たちに容疑者の写真を見せられて、自分の悲惨な過去とオーバーラップしてしまい、パニックに陥るというシーンがあります。無理に解釈すれば、これが真犯人を推測させるのですが。


現実の事件を基にしていて、さらに犯人は捕まってないそうです。ですから、犯人逮捕というラストにはできなかったのでしょうけど。
しかし、深い余韻を残してくれるラストでした(モヤモヤも残りますけど)。

骨太なサスペンスを求めている方には、うってつけだと思われます(高村薫なんか、大絶賛しそうです)。


殺人の追憶

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