すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

香山リカ「生きづらい<私>たち」

2005-01-20 19:10:40 | 書評
老いては、誰に従え?


若者の苦しみを聞いて、どう感じますか?
共感できますか? それとも、ぬるく感じられますか?
ぬるく感じられるとしたら、もう艱難辛苦を経験した(と思っている)立派なおじさんです。(共感できるとしたら、無定見の世話好きなおばさんです)

死ぬのも仕方ない、死んでもいいよ、とは言ってほしくないし、本当に気持ちをわかってもらうのは無理だと思う。ただ、そういうのは間違っているとかダメな奴らとか言わずに、"認識"してもらえればいい。(香山リカ「生きづらい<私>たち」187頁 講談社現代新書)

香山リカさんの本は、他に「ぷちナショナリズム症候群」を読んだことがあります。
現代的な雰囲気をうまく文章にしていると思います。さすがマスコミによく登場しているだけありまして、時代の空気を読み取るのが上手です。

本書では、そんな現代風の若者の「生きづらさ」が書かれております。
ただ、取り上げる例や発言が作者の卑近過ぎて、どうも信用性に欠けるんだよなぁ。しかも、その発言者の背景とか、あんまり深く解説はしないし。
参考にしている他の資料にしても、広く渉猟して集めたというよりも、手元の資料で済ませているようなイメージがぬぐえないんだなぁ。

まぁ、そんな風に、ちょっと俗に流れているきらいがある分、読み易いですけどね。

で、引用した文章は、自傷癖のある女性の言葉です。
こういう言葉を聞いて、「かわいそう」と哀れみを覚えるでしょうか?
それとも、「甘えている」とあきれるでしょうか?
ではなく、「そういうのあるよなぁ」と同情できるでしょうか?

個人的な意見としては、若者は苦しむものです。
ですから、がんばって苦しんで下さい。

自分の年を実感したい人には、お勧めの本です。


生きづらい<私>たち 心に穴があいている

講談社

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ぷちナショナリズム症候群―若者たちのニッポン主義

中央公論新社

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