ハナウタ うたこの「宝物がいっぱい」

自分にとっての「好き」や「嬉しい」を集めて綴る、ささやかなことのブログです。

読んでよかった

2014年05月18日 | ❷ 本とか映画とか

図書館で10ケ月待ちで手に入れました。

中脇初枝さんの『わたしをみつけて』(ポプラ社)です。

今か今かと待っていた本です。

 

この話の主人公は山本弥生。

産まれてすぐに産婦人科医院の前に捨てられていました。

乳児院を経て児童養護施設で18歳までを過ごします。

 

先ごろ放送されていろいろと話題の絶えなかった「明日 ママがいない」(日テレ)を観た方は

知っていると思いますが、こういった施設には18歳までしか居られません。

その後は身寄りがなくても、行くところがなくても、どんなに嫌でも施設を出て自立しないと

いけないそうです。

進学はまれ。

女性なら美容師か准看護師になる人が多いのだそうです。

 

弥生の場合も施設を出てすぐ昼間は病院で働きながら(病院には寮があるんですね)、

准看護師の資格をとるために看護学校に通い、資格取得と同時に看護師として働き始めます。

 

 

もう二度と誰かから捨てられないために、弥生は「いい子」をふるまい、生身の人間関係も

築かず、病院内の不条理も感じないようにつとめ、自分の心を無感覚化して必死に生きています。

 

 

最初に養護施設から出た後は、引っ越しも転職も出来ません。

最初に部屋を借りるときと就職するときには養護施設の施設長が保証人になってくれるのですが、

それは最初の1回だけのこと。

施設出身者が仕事がきついからと安易に辞めてしまわないためのルールなのだそうです。

弥生に頼れる人はいないのです。

今の病院を辞めさせられないように弥生は「いい子」をつづけることを身に馴染ませて生きています。

「いい子」であることは生きる手段なのです。

でも心の中には等身大の自分がいて、そういう自分を客観的にみています。

 

この物語はそんな弥生のもとに赴任してきた新しい看護師長と仕事を通してふれあう中で

徐々にそして大きく変わっていく弥生の人生、そして成長を描いています。

 

 

出だしから引きずり込まれました。

中脇さんの文章はいちいち立ち止まって読み返したり解釈を試みる必要がないほど、流れ込んで

きます。まるで水のよう。

静かに淡々と。

自分が発した言葉なのではないかと錯覚するほどの共感性を持って。

 

作品の中で弥生はいつも

「早く家に帰りたい。いい子のふりをしなくていいのは家だけ

という感覚の中にいます。

誰とも交わらない弥生ですが、でも新しい看護師長(藤堂師長)にはとまどいながらも

心をひかれていくのです。

素晴らしい出会いです。

 

作品の後半で師長弥生

あなたは自分で自分を育てたのね」と言う場面があるのですが、

弥生にとってなんと尊い言葉だったことか。

 

 

読み終えて、

この先私のそばに誰もいなくなりそれを嘆く日がきても、「この本が私を見ている」と

思うかもしれないな、と思った一冊です。

またすぐ読みたくなった本でもあります。そういうことって稀なのですが。

ラストまで読んだ後もう一度読んだら今度は私は何を感じるだろうという期待があるのです。

また違う希望をそこに見つけるんじゃないかというような。

 

 

人との付き合い方にも、子育てにも、仕事への取組み方にも、自分の生き方すべてにゆさぶりをかける。

体の芯がふるえるような素晴らしい作品でした。

とても優しい日本語で描かれています。

読みはじめたら中断できないと思います。

会話が多いので流れるように読めますよ、読みやすいです

 

 

この作品、気に入った方は是非こちらも読んでください。

1つ前に書かれた作品です。

 

「きみは いい子」(中脇初枝)

2013年本屋大賞 第4位」(他にも「第28回 坪田譲治文学賞」「第1回 静岡書店大賞」受賞)になった

作品です。

「読まなければいけない本大賞(架空)」受賞作品だと思います

 

 


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
図書館予約まち (W)
2014-05-19 15:42:04
うわぁ~~ちょうどその「きみはいいこ」
もうすぐきそうなんです。
こっちが来て予約枠があいたら、すぐ予約してみますね。
返信する

コメントを投稿