鋭角に 水煙270号(2005年12月) 2008年10月28日 | Weblog 空風の中を青年大股に 白鷺の群れ発つ川の十二月 霜柱踏んで朝へ歩みだす 音すべて消して粉雪降り続く ものの音みな鋭角に霜の朝 枯れ踏めば乾き切ったる音ばかり 黒々と流るる川に雪の降る
雲の連なり 水煙269号(2005年11月) 2008年10月28日 | Weblog 霧濃くて朝日まったき紅に 曇天をそのまま咲いて花八手 海までの雲の連なり冬始 <奈良句会> 朱雀門はるかに望み落葉踏む 高速路曲がる先まで冬紅葉 初冬の空気ひそかに救世観音 わっと飛ぶひと群の鳥冬空へ
さわやかに 水煙268号(2005年10月) 2008年10月28日 | Weblog ここに住む幾歳峰の初紅葉 いずこへも行かぬぜいたく秋時雨 雨音を聞いて湯にいる十三夜 いちめんのコスモスにある風の道 快晴の空の青さへ柿熟れる 戦記読むつま先あたりやや寒し さわやかに心を決めていることも
十六夜に 水煙267号(2005年9月) 2008年10月28日 | Weblog 窓少し閉めて葉月の風の音 嵐去りふと初月と会いにけり ハーブティ入れて書を読む秋曇 それぞれに暮らしのありて良夜かな 新米をたっぷりもらう十六夜に いま晴れていつしか曇り稲の秋 秋草のふれあう音の続きける
空は直角 水煙266号(2005年8月) 2008年10月28日 | Weblog 朝涼の廊下ゆっくり歩みけり 部屋に陽の入り初めし日よ夏深し 八月の風をうなじに本を読む 赤とんぼ墓参の道を群れて飛ぶ 洗い髪そのまま仰ぐ盆の月 東京の空は直角秋暑し 静けさも連れて降りけり処暑の雨
苺ゼリー 水煙265号(2005年7月) 2008年10月28日 | Weblog いきいきと雨受けている七変化 風も陽もぞんぶんに浴ぶ梅雨晴間 ラケットを置いて冷たき麦茶飲む 開け放つ窓より一声夏鶯 語らいは弾みつ苺ゼリーゆれ 中空に雲湧き梅雨の明け近し 静けさの真ん中にあり夏真昼
籐寝椅子 水煙264号(2005年6月) 2008年10月28日 | Weblog 代掻きの田の少しずつ増えていく 籐寝椅子手足余れる幼き日 雹晴れて山河の色の戻りけり 朝燕ひらりと夏の大空へ 暮れかぬる夕空映す植田かな 掘割の水の匂いに夏至の風 驟雨去り風に吹かれておりにけり
青空と静けさと 水煙263号(2005年5月) 2008年10月28日 | Weblog 緑へと吹く風八十八夜かな 若葉雨傘差しかけて語りけり 青空と静けさとあり麦畑 桜の実つやつや赤く日の高く 楠若葉剥落激し絵馬があり 海峡を越えて南は麦の秋 新刊書届く緑の風の中
門出 水煙262号(2005年4月) 2008年10月28日 | Weblog 新しき門出に香る木の芽和 始まりにいつも見上げし初桜 鶯の一声空気澄み渡る 人声はまだなき清し朝桜 菜の花のカーブを抜けて菜の花へ 潮騒のはるかな響き菫咲く 春深しケータイ鞄の底で鳴る
麦青む 水煙261号(2005年3月) 2008年10月28日 | Weblog 海山を眼下に見やり鴨帰る 献血を終えて春陽の中に出る 麦青むいつしか風も柔らかし 足元に光あふれていぬふぐり 退職を決め背後より春嵐 春雪が鏡の中を降りしきる 連翹や明日はいつもまぶしくて