花水木

豊満に日差し重なる八重桜
まっすぐな街路に並び花水木
ふと指に触れたる蔦の芽の赤さ

たんぽぽ

ゆく雲を受けて広がり花楓
たんぽぽやはるかに遠し幼年期
少年の髪さらさらと春の風

チューリップ

青柳の明るささらに驟雨あと
菫草少し影ある場所が好き
そういえば誰も葉を見ぬチューリップ

八重桜

濃き影を成し八重桜満開に
野田藤の山路に開く構えあり
雨近き午後となりたり花楓

熊蜂

熊蜂のホバリングしてゆるゆると
日輪の分厚き光やえざくら
風通る霞桜の咲く丘に

遅桜

時雨去る丘を登れば遅桜
もつれあい虚空に消えし昼の蝶
山々の上に雲ありのどかかな

木の芽山

ひと雨の去りて鮮やか木の芽山
三葉躑躅しぐれの露を宿しけり
キャンバスの白さの光る春の雷

残花

山吹の揺れ初む坂を下りけり
雨風の強き夜明けの残花かな
桜蘂散り敷く日にはいつも雨

柿若葉

雨いつか降り出しおりぬ柿若葉
雨続く中に飛びおり花吹雪
若葉して楓の枝の低くなる

散る桜

戯れて広場をゆくや蝶の昼
山路いま三葉躑躅の回廊に
正面に散る桜見て座りおり