冬耕

雲低く垂れ込める下冬耕す
関西の生まれよ餅は丸餅で
膝掛けをして一枚を描きおり

芳しく薔薇咲き師走を迎えおり

冬ざれ

児童ら駆ける冬の三の丸広場
立ち漕ぎで一気に越える冬の坂
山崩れ防ぐ工事の冬ざるる

禅寺に広々とあり冬の空

マフラー

マフラーの野球少年自転車で
霧深き中に浮かびし冬紅葉
裸木となりし桜を見上げおり

枯芙蓉たとえば品良き老婦人

蒲団

子だくさん蒲団ずらりと干しにけり
風邪の神そろそろ帰り支度かな
売り出しの大根カートへ斜めに差し

小春日や町家を行き交う人いろいろ

風邪の神

シリアルを温めて吹く冬の雨
従いて家に篭りし風邪の神
雨上がる一瞬のぞく冬夕陽

茶の花やあるいは大胆かもしれず

初霜

初霜に輝き増せり西の山
冬りんご白き果肉の冷たさよ
冬紅葉夕陽に枝を差し伸べて

麗しき人の名を持ち冬の薔薇

冬未明

優嵐スケッチブック


冬未明その静けさを聞いている
おのおのに南天の実を住宅地
忘年会予定たずねるメール来る

冬麗や町家の老舗呉服店

咳

鼻喉の粘膜の乾き冬の雨
咳をする隣の部屋も咳をする
部屋の窓映りし銀杏冬黄葉

境内に冬陽の色の小菊咲く

小雪

枯蓮と青空たたえ水平ら
蜜柑食ぶときは蜜柑のことだけを
人を待ち小雪の日の暮れにけり

山茶花の一輪二輪と咲き初めし

枯芝

枯芝やおのずから道成しており
枇杷咲くや甘き香りは親譲り
冬山路輝く海を見に登る

お社を囲む小さき冬紅葉