朝涼

朝涼のガラスボウルにシリアルを
南風受けて書を読むデッキチェア
灼熱の鉄路のそばにカンナ咲く

空蝉

雨あがる南の風の強く吹く
空蝉をやわらかく握るたなごころ
うつむけば向日葵にある愁いかな

蝉声

正面に真っ赤な夏の入り日かな
夏の朝どこかでラジオ体操の歌
静けさを知るや蝉声とまるとき

夏の暁

月光の部屋一杯の涼しさよ
夏の暁ヴェネツィアングラスに光さす
夕暮れの部屋を包みし蝉しぐれ

炎熱

炎熱やいっそ小気味よき光
風連れて走りゆく人青田波
太陽を背後に灼けしビルの立つ

初蜩

午後三時初蜩に森の澄む
缶ジュース買う日に焼けし郵便夫
大橋や海峡の夏跨ぎけり

炎昼

炎昼の真ん中にある静けさよ
青田波赤き校舎の屋根包む
遠花火うしろに聞いて帰りけり

大暑来る

オフショアに変わりし風よ夏の宵
涼しさに触れて木陰をたどりゆく
大暑来る頂に立てば雲近し

夏山陰

雲の影夏山陰に重なりぬ
波紋のみ残して静か夏の池
蝉時雨浴び坂道を登りけり

水無月

水無月の夕月を見し鰻食ぶ
その上に紺碧を載せ雲の峰
頂の青筋揚羽雲に触れ