黄菖蒲

吹き折れし青葉の数多嵐あと
黄菖蒲の黄色全きくもりなし
薔薇咲かせテナント募集の貸店舗

青梅の葉裏に太り月変わる

梅雨

ライブとて梅雨の嵐の中をゆく
風荒れて青葉の大樹身をよじる
万緑にさざめき残し嵐去る

雨あがる黄菖蒲の黄のあざやかに

麦

雨音を聞きつつ薔薇を描きおり
芍薬のすでに摘まれし畑の色
熟れ麦へ梅雨の嵐の接近す

露残し今朝開きたる紅き薔薇

青葉若葉

芍薬句会（信之先生傘寿）

祝福を湛えし薔薇のいっぱいに
万緑を洗いし雨よ師は傘寿
傘寿なり青葉若葉へまた一歩

祝福を湛えし薔薇のいっぱいに

梅雨入り

会う人にはや梅雨入りと聞きし午後
黄菖蒲の黄の鮮やかに梅雨に入る
ほととぎす夢との間で鳴きにけり

薄暑なる森に開きしもちつつじ

花あやめ

ちらちらと光綾なす花あやめ
チワワ抱き男薄暑の川に向く
地に影を揺らしつ紋黄揚羽飛ぶ

わさび育つ富士近く見ゆ清流に

青筋揚羽

青筋揚羽そら色をきらめかせ
近々と来て囀りぬ四十雀
緑陰に塗り直されしポスト立つ

花アヤメすらり光へ立ちにけり

薫風

風揺らす若葉に光揺れにけり
薫風や沖まで青き播磨灘
飛ぶものの楽園夏の頂は

若葉雨

黄菖蒲を親子の傘が通り過ぎ
若葉雨降りてもやみても明るくて
風少し梅雨の走りに加わりぬ

小満

小満の山河へ雨の降り初めし
椎の花細かく散りし森をゆく
不如帰遠く近くに木の間より