八重桜

木漏れ日の中を来る風夏隣
軽やかに揺れし苗木の八重桜
角ひとつ曲がり花水木の街路

春落葉

稜線は木の芽の色にほぐれゆく
石段へひっそり積もる春落葉
目を細め惜春の昼の頂に

羊歯萌ゆる

降りだせば声高らかに昼蛙
羊歯萌ゆる谷を下りて清流に
六甲まではるかに続く木の芽山

竹の秋

木の芽雨明るき色の傘三つ
さわさわと風通りけり竹の秋
春深き快晴の風と光かな

芽立の山

マウンテンバイク芽立の山を走りゆく
水平線まっすぐ見えて夏近し
囀りに囲まれている静けさや

亀鳴く

豊潤に光を溜めし八重桜
木の芽山あまりに明るき真昼なり
ありそうでなさそうなこと亀鳴く日

春深し

小楢には小楢の光春深し
春の川横切っていく春の雲
頂に春の陽あまりに溢れ

蝶の昼

夢を見る如く飛び立ち蝶の昼
花過ぎの山桜の葉緑得て
遠ざかる新幹線へ木の芽風

羊歯萌える

春たけて風芳しくなりにけり
谷よりの風や真昼の羊歯萌える
少し影ありし所に菫の座

木の芽晴

山なみの彼方は神戸木の芽晴
赤子抱き母の過ぎゆく八重桜
春の海光と船をちりばめて