紅葉山

紅葉山ゆるりと舐めて雲の影
赤き実のたわわに森の秋深し
秋の陽にきらきら流れ蜘蛛の糸

明るさも暗さもありし紅葉かな

秋惜しむ

コーヒーにチョコレート添え秋惜しむ
夕闇の迫りし中へ鵙猛る
腕抜きを外せば腕の夜寒かな

三種のりんごそれぞれに持つ味かたち

秋園

秋園は菊の容の花ばかり
静かなる電動ベッド秋深し
抹茶碗手にしみじみと暮の秋

同胞やコスモス祭始まりぬ

柿

秋天に伸びゆくものの数多あり
吊るされし柿にさんさん真昼の陽
透明な日差しに梅の紅葉かな

さびしさをそのまま咲かせ吾亦紅

りんご

優嵐スケッチブック


テントシューズ部屋で履きたる夜寒かな
スライスのりんごを熱きトーストに
黄金なし秋の入日の去りゆけり

林檎生る北国の空清冽に

漸寒

紅葉する街路を自転車で走る
漸寒のかたかたと鳴る石畳
身に入むや昼の日差しも斜めにて

ぼうぶらやナンキン南瓜とうなすび

時鳥草

時鳥草流れを聞いて咲いており
少年は父によく似て赤のまま
包まれて秋刀魚は東寺揚げとなる

黄の薔薇の明るし秋の深まりに

新米

ハードルを越え行く少女秋高し
高々と空へ掲げし柿の色
玄米のままと新米いただきぬ

おのおのの庭に畑に柿の秋

無花果

家生りの無花果食べて昼終わる
銀杏を夢中になって剥いている
日当たりのよき庭先や貴船菊

ぱっくりと裂けし石榴のルビー色

秋の雷

忌中明け告げて激しき秋の雷
秋雨や遺愛の大島黄八丈
法要の人々迎え萩揺れる

ハロウィンはケルトの祭に始まりぬ