秋真昼

珈琲の旨み増したり十三夜
チャーハンをじゃんと炒めて秋真昼
晩秋の蝶は集いし菜の畝に

十三夜句会

後の月雲の流れに漂いぬ
十三夜静かに髪を洗いけり
食卓に熱き汁物十三夜

もみいづる

もみいづる空蝉をまだそのままに
秋天に弧を描く鳶のつがいかな
静けさは秋の末なる森にあり

爽やか

長き夜の底に静かに沈みおり
爽やかに何か終わりて始まりぬ
朝の陽の差し来るさまも秋深し

蛇穴に入る

蛇穴に入るとて素早きその動き
幹にある晩秋の陽の暖かさ
曲がるたび色葉深さを増しにけり

晩秋

晩秋の海峡をゆく貨物船
十月の水平線に船並ぶ
サーフボード立てかけてあり秋深し

晩稲

雀来よ鴉も来よと刈田かな
陽の低くなりたる泡立草群れる
晩稲まだ取り残されし薄曇り

末の秋

停車せるオートバイへと紅葉かつ散る
もう一杯珈琲飲みたき末の秋
思いつくこといろいろの長き夜

秋晴れ

澄む秋の青空に溶けてしまいたく
秋晴れを走り続ける人のいて
りんご手に少女の歩く秋日和

柿の秋

鰯雲泳ぎし空の大きさよ
秋澄むや指さす先の淡路島
柿の秋ぎっしり空へ実りけり