冬の蝿

陽の中にみじろぎもせず冬の蝿
なお赤さ残して紅葉師走に入る
茶の花に小さき蜂の寄りきたる

山茶花

山茶花に朝の日差しはまだなくて
陽だまりという暖かき言葉あり
青空へ冬の紅葉のさらに映え

銀杏落葉

木枯しに帽子飛ばされ土手走る
街の川銀杏落葉を載せ流る
それぞれの高さに枯れて荻すすき

枯蔓

（忘年句会）
蝶飛ぶや小春は余生にはあらず
枯蔓を引きて強さに驚きぬ
冬林檎かじり王朝の歌を読む

梅枯る

梅枯れて枝のおのおの天を指す
あべまきの幹に寄り添い散紅葉
陽に木の葉降り続くなり山の道

冬菊

冬菊の風に乱れて咲き続く
枯蓮に陽の燦々と降り注ぐ
裸木の影踏みし後森へ入る

茶の花

茶の花の無数にうつむきかげんなる
本堂へ冬陽が作る軒の影
枯野原北へ真っ直ぐ高速路

枯木

いさぎよく枯木となりて立ちにけり
また一枚木の葉散り来て我が前に
紅葉散りいよいよ空の透けている

散紅葉

木枯しの静まり森の空透ける
脱ぎ置きしジョギングシューズ散紅葉
降り積もる木の葉を踏んで境内へ

手袋

襖絵のごとき遠山冬霞
落葉踏む音を身体で聞いている
手袋の片方のみが残されて