どんぐり

どんぐりのつややかなるを持ち帰る
秋ぐもりコーヒーにビターチョコレート
木漏れ日の森行く十月終わりけり

きちきちばった

フォールディングナイフぱちんと秋の雨
秋天に頂の旗高々と
快晴のきちきちばった高く跳べ

爽やか

（長野から白馬を経て飯田へ）
荻すすき陽に輝ける中を行く
爽やかや三山雲をたなびかせ
城跡の桜紅葉に遠き夢

ななかまど

（佐久から草津を経て小布施へ）
りんご食み蒼空浅間と向かい合う
秋高し草津白根へ九十九折
陽をそこに集めて燃えるななかまど

残る虫

霜降の月の光を受け歩く
長月の夜は熱々のちゃんぽん麺
残る虫くまなく晴れし月光に

晩秋

紅葉待つ庫裏にありにし白木の香
コスモスに停めて香りの中へ出る
晩秋の空一片の雲もなく

秋夕

（静岡から佐久へ）
富士川に秋鮎釣りの竿並ぶ
甲斐信濃いずこも秋の山の国
秋夕の雲晴れにけり浅間山

鵙

祭り過ぎ秋の陽受ける鬼瓦
旅行記を記し秋の日暮れにけり
贄くわえ鵙高枝に飛び立ちぬ

秋風

秋風や破産告示の真新し
秋晴るるざっくり洗うオートバイ
夕月の松の影へと沈みけり

鶴

蒼空をわがものとして鶴来る
ヒマラヤを高々と越え鶴渡る
待つ人のまなざし受けて鶴来る
凍鶴の一本足の眠りかな