花曇

なんとなく今年いいこと花曇
春雷がまぶたの奥で光りけり
明け方の驟雨どこかで春の夢

春の星

天空に春の星々われひとり
風をいま感じておりぬ雪柳
自転車を立ち漕ぎ少女の春休み

染井吉野

咲き初めし染井吉野に夕の月
落椿敷き詰めし道走りけり
汗ぬぐう背に幾度も鶯啼く

茎立

階段にオムレツの匂い花の雨
立ち昇る霧は桜の色映す
茎立の規則正しき遠近法

花

山肌に日ごと桜の灯りゆく
高速路上にも下にも花の波
花映す水面をくぐりかいつぶり

桃の花

時おりは鶯啼いて雨静か
頂に小さきつつじ咲き初めし
桃の花さらり仕事の片付いて

東風

鶯や未来予測の本を読む
青ぬたや夜より風雨強くなり
東風吹かば我がペダルまた軽快に

彼岸ばらい

風少し混じりし彼岸ばらいの雨
夕暮れの雨煙らせて山桜
梨状筋ストレッチして彼岸終わる

春薄暮

ロゼワインあけて更けゆく彼岸の夜
おぼろなる夕陽に向かい走りける
山ぎわの空はももいろ春薄暮

大霞

春の朝ポニーテールが駆けていく
城の影立ちし夕べの大霞
ランニング芽立ちの空気吸い込んで