二百十日

薄明の去りゆき高まる虫の声
遠きビル秋の朝日の中にあり
晴天の二百十日でありにけり

秋の百合秋の白さを持ちてあり

秋の蚊

秋の蚊の来てさんざんにさしにけり
何ものか洗い流して秋驟雨
鳥取の初物の梨売りに来る

播州高原秋の初めの風渡る

無花果

優嵐スケッチブック


秋空を深しと思う飛行機雲
山の色変わり初めにし秋の風
頂で冷たき無花果をふたつ

秋口のダリアの色の冴えてくる

台風

かまきりの幼き威嚇尻立てて
秋の朝静かにみんみんぜみの鳴く
黄海をゆく台風のあまり風

秋茄子を嫁にも婿にも食べさせる

杜鵑草

＜兵庫県宍粟市・一山（ひとつやま）登山＞
初秋の森林王国ひとつやま
頂の風ここちよし秋はじめ
下山道点々と咲き杜鵑草

秋の雲照らし日の出の近づきぬ

かまきり

子らの手を逃れかまきり軒下へ
つくつくぼうし終わり再び背後より
半月や残る暑さの地を照らす

木槿へと陽は存分に差しにけり

地蔵盆

秋の陽に甲羅干したり池の亀
地蔵盆準備整う寺の庫裏
低き雲高き雲あり秋の空

高砂百合少し傾いで咲きにけり

秋の蝶

一番に紅葉かつ散る桜かな
今生を終えて静かな秋の蝶
丹波から六甲淡路へ秋の晴れ

四季咲きの薔薇一輪に涼新た

処暑

八月の雲を散りばめ宵月夜
処暑夜明け雲の動きの縦横に
咲く木槿すべて巡りぬ黒あげは

秋めける池に白蓮咲き続く

燕帰る

初秋の夜明けの空にかかる虹
気がつけばいつか燕の消えし空
山の辺の萩の最も風に揺れ

陽を受けて鶏頭さらに燃えており