寒暁

寒暁の月を仰いで駅へ行く
空っ風ビルの谷間を散歩する
手袋よりマニキュアの指あらわれぬ

晩冬

大寒や背すじ伸ばして立ちにけり
晩冬の身を切る風の明るさよ　
朝霜のきらきら佳き日の始まりぬ

風花

風花に播磨灘なお輝けり　
米粒のひとつ分ずつ日脚伸ぶ
昼の雪ひとを静かにさせるべく

初霰

にぎやかに森に響きし初霰
人生は生き抜くことぞ虎落笛
大霜のやがて明るき鳥の声

冬芽

剪定の木口あたらし梅冬芽
小寒の空のほのかにやわらかく
鳥の声梢に春の遠からじ

寒の入

木の影のくっきり寒に入りにけり
切り株の木屑に触れる寒の入
新年の計を心に本を読む

初仕事

看護師のうなじきりりと初仕事
風いきいき初凧の糸ぴんとはる
旧友の賀状まだ来ぬ五日かな

初日の出

初日の出待ちて立ちける風の中
五重塔抱きて吉備路の初御空
揺れによせ破魔矢の鈴がまた鳴りし