夏鶯

朝ぼらけまず響きけるほととぎす
万緑を巣立ち燕の群れて飛ぶ
夏鶯木立の霧の向こうから

半夏生草

天守より望む瓦へ梅雨しぐれ
遣水に沿い半夏生草咲き初める
蓮の葉のころり雨滴を転がして

合歓の花

夕涼の風を湯上がりの肌に
生垣へ揚羽つぎつぎ寄り来る
合歓の花午後の陽ゆっくり巡りけり

涼風

青羊歯の波の誘いし谷間へと
鐘楼の上の青空揚羽飛ぶ
涼風が杉の木立を抜けてくる

Ｔシャツ

洗いたてのＴシャツさらり素肌に着る
鷺白しことに夏陽の輝けば
明易し部屋の中まで薔薇色に

万緑

川風の来れば万緑さんざめく
梅雨夕焼け高空さらに透明に
朝の陽へすいっと飛びし夏燕

柿青葉

家々に紫陽花の色それぞれに
万緑のあわいに霧のたちのぼる
つばめ来て柿の青葉をめぐり飛ぶ

植田

屋上に出窓に夏の花あふれ
特急の過ぎゆく植田映しつつ
高層ビル額縁として梅雨晴れ間

プール

単線の駅舎を囲む植田かな
澄みし水張られプールは子らを待つ
夏草が鉄路の跡に生い茂る

夏至

夏至の空夕刻青く澄み渡る
雨上がるくちなしの香の濃くありぬ
耕運機代田を出し泥のあと