万葉の岬 水煙294号(2007年12月) 2008年10月30日 | Weblog 短日の稜線歩くこと幾度 枯薄かなたに海の光りけり かさこそと枯葉踏む音連れてゆく 金色を沖に集めて冬の海 万葉の岬小春の小舟いく 枯木なる楓の枝のなお紅く 年越しの天に星あり地にわれらあり
落葉の音 水煙293号(2007年11月) 2008年10月30日 | Weblog 山道に落葉を踏めば落葉の音 薄原ふうわり光を波とする 海光る甍も光る冬隣 冬めきてさらに色濃き針葉樹 木枯しのやんで夕焼け鮮やかに 霜の田の輝く近江の空広し <鎌倉句会> 万両や日の昇りくる帰源院
富士高し 水煙292号(2007年10月) 2008年10月30日 | Weblog <東海・中部・甲信越オートバイ行> 空広くなって近づく秋の海 トンネルを抜け天高し富士高し りんご食み蒼空浅間と向かい合う 灯台の蔦紅葉して日本海 旅終えて目覚めし朝の鰯雲 田はすでに鋤き返されし曼珠沙華 快晴のきちきちばった高く跳べ
ケルトの歌 水煙291号(2007年9月) 2008年10月30日 | Weblog 秋茄子がドアの取っ手にかけてある 梨をむく今朝快晴の台所 露草や高き雲間の空の色 十五夜に澄みしケルトの歌を聴く 豊の秋辻に幟の立ちにけり 青鷺を映して静か秋の水 早稲の香の東播磨の野を走る
カンナ燃ゆ 水煙290号(2007年8月) 2008年10月30日 | Weblog 地に余熱空より秋のきたりけり <台湾・行天宮> 立秋や祈りの人の中にいる 静けさを深呼吸して夏未明 釣竿を肩に少年晩夏光 積乱雲見上げて母と墓参り カンナ燃ゆ三十八度の日中に 法師蝉去りゆくものを追いて鳴く
夕涼し 水煙289号(2007年7月) 2008年10月30日 | Weblog 青空が恋し李の種を吐く 夕涼しアイルランドの歌を聴く 夏草の中に埋もれて夏草刈る 曇天の風をとらえてのうぜん花 七月の寝椅子に読みぬ文庫本 向日葵のむこうを下校の少女たち 夏休み始まる弾みしリコーダー
浴衣の少女 水煙288号(2007年6月) 2008年10月30日 | Weblog 半袖の手首に涼しブレスレット 子ら駆ける植田に影を映しつつ 入梅の真青な空を見上げたる 苗色の播州平野梅雨に入る 頂の風遠くよりほととぎす とりどりの浴衣の少女踏切に ゆらゆらと身をあずけおりハンモック
山法師 水煙287号(2007年8月) 2008年10月30日 | Weblog 夏近き木陰の風の芳しき 緑いま風に湧き立つ真昼なり 田は水を受けて輝き夏浅し 桐の花かなたに雲の湧きいずる 山法師空より星を受けて咲く 蝶の道われも歩みて夏真昼 ものの影みな涼やかに朝の眼に
花楓 水煙286号(2007年4月) 2008年10月30日 | Weblog 清明や竹の触れ合う音のする 静かさや舞う花びらの絶え間なく 整然と春の水待つ田のありて 四方より囀り上がる頂へ もう誰も見上げぬ桜しべ降らす その先に青空のあり花楓
野遊び 水煙285号(2007年3月) 2008年10月30日 | Weblog 野遊びの子らとりどりのお弁当 頂に立てば一面畦青む 新刊の図書を抱きて春風に 自転車を立ち漕ぎ少女の春休み ランニング芽立ちの空気吸い込んで 鶯や未来予測の本を読む 花映す水面をくぐりかいつぶり