秋冷

露草の色に澄みたる野辺をゆく
漣のごとき雲出て秋の空
秋冷の色鉛筆は６０色

秋の海

雨あがる光りて静か秋の海
猪に道を譲りて引き返す
ねぎらいの如く刈田に雨の降る

秋空

ジグザグに秋の野をゆく蝶の道
秋空へ園児の太鼓の音響く
夜の雨あがる秋天澄み渡る

ねこじゃらし

猪のよく見れば可愛らしき目よ
ねこじゃらしかたまり揺れて彼岸明け
秋の野を蝶ゆらゆらと我誘う

澄む秋

澄む秋の朝の空気がそこにある
蝶軽やか秋の光を滑空す
玉入れを数える声や天高し

蓮の実

蓮の実のいずこへ飛びし構えかな
風の音ばかりとなりぬ秋の森
淡き色後の彼岸の夕焼けは

稲妻

稲妻を連れおり貨物列車過ぐ
秋の雨あがる海峡大橋立つ
秋の海沖から雲の切れてくる

月今宵

群雲に見え隠れして月今宵
雨月なる叶わぬ恋の歌を聴く
秋分の朝雷鳴に目覚めけり

萩

秋の森静かに風の吹き渡る
山寺へ向かう坂道萩揺れる
ごろごろと座りの悪き南瓜かな

秋彼岸

花筒を洗い清めて秋彼岸
月の出を確かめ茄子を炒めおり
歩むほどきちきちのまた跳ねてゆく