八月尽

ひらひらと影あるところ秋の蝶
頂のその上を飛び鬼やんま
八月尽海の色も田の色も

涼新た

月のいま雲間渡りゆく速さ
ガスレンジごしごし洗う涼新た
森を出て野に降り立てば秋めく陽

きちきちばった

播州平野稲の稔りの色になる
歩むほどきちきちばったその前に
色変わり初めしえのころ揺らす風

稲の秋

弾かれしバネはいずこにバッタ跳ぶ
稲の秋上ゆく雲も豊穣に
透明な秋の空気を描きおり

秋の昼

新しき秋の朝なり茜雲
傘の端かじられている茸かな
存在のすべて透明秋の昼

秋めく

青空に映えたる色よ赤とんぼ
初秋の日差し背中にポストまで
秋めきて今朝の空気の透明に

盆の月

雲ひとつ抜けて輝く盆の月
かなかなの翅透きとおる声もまた
朝風の運ぶ新たな涼しさよ

秋の蝶

ひらひらと黄を翻し秋の蝶
蓮池に漣たてて秋の風
午後の陽の部屋へわずかに秋めく日

新秋

大橋の新たに涼しき主塔かな
初秋の浜辺に竿の立ち並ぶ
新秋の光の満ちる貨物基地

秋扇

秋扇盛んに揺れるホームかな
新涼の朝の川へと網を打つ
案山子立つ隣にすっと青鷺も