朝蝉

驟雨来る気配に取り込む洗濯物
朝蝉の産声のごと高らかに
蝉死して抜け殻もうひとつ残す

蓮池や日毎開きし花数多

夏の菊

涼風のきっとここは通り道
シャッターの閉ざされしまま夏の菊
うつし世に朝いちばんの蝉の声

いとけなく葉陰に糸瓜生り初めし

晩夏光

開山堂静かに包む晩夏光
水面に蓮華散らして花托立つ
蓮開く夜明けはいつも美しき

晩夏光黄色花コスモス咲き乱る

夏の川

夏の川横切ってゆく雲の影
つかまったところが故郷蝉の穴
花かげに小さく糸瓜生り初めし

暑き日や熱帯睡蓮涼しげに

ハイビスカス

散る蓮を囲み三つの蓮開く
ハイビスカス鉢植えひとつ庫裏の前
槌音の途切れずありぬ日盛りに

庫裏隣ひとつふたつと茄子の生る

空蝉

暁やすでに高かり蝉の声
空蝉を四つ見つけし山路かな
山の道戻りて冷やしトマト食ぶ

縦横に伸びて糸瓜の花盛り

蟻

一匹の蟻が引きゆく鳥の羽根
太陽を戴き大向日葵となる
高速路示して高し夾竹桃

蓮開く天上天下唯我独尊

大暑

大暑かな韓国料理に舌鼓
蝉しぐれ浴び石段を下りけり
少年の祖父と魚釣る夏休み

小さくもミニヒマワリは空を向き

晩涼

晩涼や屏風の月は銀色に
午前八時蝉一斉に鳴き始む
しゃっきりとグレープフルーツ昼寝覚め

睡蓮の浮かぶ水面の暗さかな

蝉時雨

優嵐スケッチブック


部屋移る小さき扇風機を連れて
向日葵の陽を追いし日は過ぎ去りぬ
車停めドアを開ければ蝉時雨

南国の夢の名残や仏桑花