花冠同人・多田有花の俳句ブログ

日々の俳句の備忘録

鯔  水煙222号(2001年12月)

2008年10月24日 | Weblog
鯔とんで夕べ平らな冬の海
冬林やぴいと鳴いては鹿駆ける
滝涸れて源頭に日の当たりけり
里の日を集め素麺干されけり

<長崎・天草自転車行三句>
頬を打つみぞれのやんで海見える
凍空に瞑すや平和祈念像
振り向けば冬の海あり天主堂

諏訪富士 水煙220号(2001年10月)

2008年10月24日 | Weblog
<北八ヶ岳縦走>
雲流る落葉松の道歩きけり
諏訪富士のすっきり立てる秋日かな
秋澄むや明日踏む峰を指差せり
山小屋のふとんふかふか夜寒かな
秋の暮窓に寄り添い日記書く
霧深しケルン数えて登り行く
がまずみの実を赤くして山静か

シュバルツバルト 水煙219号(2001年9月)

2008年10月24日 | Weblog
<ドイツ・シュバルツバルト紀行>
シベリアの秋茫々と湖の数
夕月の異国の町へ降りにけり
教会の塔秋天を突いて立ち
八月の森に日の差す静けさよ
のどを越す泉の水の澄みにけり
秋草や積まれし薪に日の当たる
秋薊アルプス遠くかすみおり

雪渓 水煙217号(2001年7月)

2008年10月24日 | Weblog
<レーニア山バックパッキング行六句>
夏日差す砂漠の彼方蒼き湖
夏川の水汲み上げて晩ごはん
短夜やテントの外に明けていく
雪渓を落ちる流れの音高し
氷河より昇る夏霧絶え間なし
野鹿しなやかに歩む夏の朝なり

<白馬岳登頂>
駒草や稜線はまた霧の中

光る風 水煙215号(2001年5月)

2008年10月24日 | Weblog
<東北自転車行>
光る風追い越したくてペダル踏む

粽解くほのかに笹の香りあり
ブナの森若葉の底に立つ我ぞ
ひるがえる朴葉の彼方夏の雲
葉桜が見下ろす町に土蔵あり
山若葉しだいに遠く滝の音
真っ白な襟風に立て海芋咲く

羊歯萌えて 水煙214号(2001年4月)

2008年10月24日 | Weblog
羊歯萌えてしんとしている雑木山
ボール高く菜の花畑の真ん中に
九十九折いきなり春の富士に会う

<東北自転車行二句>
十和田湖の水の蒼さや蕗のとう
残雪や稜線長く岩手山

アイリスや空の青さを集めたり
新緑や墓みな城を向いて立ち

初燕 水煙213号(2001年3月)

2008年10月24日 | Weblog
水門の向こうに満ちる春の潮
遠き田は夕映えの中梅開く
陽光をひらりかわして初燕
なだらかに春嶺下る雲の影
東風吹いて長元坊は森を越ゆ
竹林に彼岸の夕陽入りにけり
雪解水集めせせらぎ音高し