社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

ディズニーランドの限界:サービスイノベーションの視点から

2005年11月06日 | サービスサイエンス
昨日,ディズニーランドに行ってきた.ディズニーランドは「サービス」の典型例であろう.しかし,たいへん混んでいたこともあり,5000円以上の入場料を取るディズニーランドに限界を感じた.

問題は,サービスがディズニーランドから入場者への一方的な価値の提供でしかない点である.特に,混んでいると一方的な価値の提供が必然的に薄くなり,5000円に見合う価値も薄れ不満が残る.

これからの時代のサービスは,亭主(ディズニーランド)と客人(入場者)によるインタラクティブな価値の協創がKFS(成功のカギ)になってくると筆者は思っている.

例えば,「遠州流茶道」では,一人の客人が遅れたとしても,到着を待つ間に他の客人が香を聞くというイベントを入れることで,「遅れてくれたことで香が聞けて本当によかった!」となるらしい.

いくら混んでいても,客人が「混んでて本当に良かった!」と思えるような,インタラクティブな仕掛けができるはずである.それを実現することが,サービスイノベーションであろう.

サービスサイエンスが成功するための3要件

2005年11月06日 | サービスサイエンス
米カリファルニア大学バークレー校のチェスブロー先生によると,サービスサイエンスがコンピュータサイエンス(計算機科学)のように1つの研究分野として確立するための3つの要件を挙げている(出典:DHBR6月号「サービスの科学」を拓く).

(1) 現象の規模(例:もはや計算機なしには社会が成り立たない)
(2) 共通基盤ツールの普及(例:PC,OS,ミドルウェア)
(3) 解決すべき壮大な難問の存在(例:ソフトウェア生産性の危機)

学際的学問分野として,過去にも「サイバネティクス」「システム科学」「安全工学」「複雑系」など数多く提唱されてきたが,計算機科学ほどステータスを確立できたものはない.よくあるパターンは,理系と文系の関係する先生を集めて学際的な大学院専攻を作ってはみたものの,実際はバラバラなことをやっていて,先生はともかく学生にとっては中途半端というケースである.

チェスブロー先生の指摘のように,これらの分野では上記の(1)(2)(3)が十分満たされていないように思える.

筆者は,学際的研究においては,(3)の「解決すべき課題」を起点とし,関係する学問が「協働」して解決するアプローチが不可欠だと思っている.

サービスサイエンスにおける重大な課題とは,
(1)製造業に比べて圧倒的に低い生産性の向上
   (プロセスイノベーション)
(2)脱工業化時代の経済成長のエンジンとしての責任
   (バリューイノベーション)
である.さて,サービスサイエンスは,計算機科学と同様のステータスを獲得できるだろうか?

参考文献:亀岡 秋男監修,「サービスサイエンス 新時代を拓くイノベーション経営を目指して」,エヌ・ティー・エス,2007.