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社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

イノベーションシステムの必要性

2005年01月30日 | 技術経営
2005.01.30
イノベーションシステムの必要性
イノベーションを起こしやすくするための「制度=アーキテクチャ」に関する議論がある.国レベルの制度は,ナショナルイノベーションシステム(NIS)と呼ばれる.企業レベルのイノベーションシステムもあるだろう.しかしながら,世の中の過去のイノベーションはそのような「システム」の中から生まれたものなのだろうか?携帯電話の写真メールも当初は「家族の写真を撮るサラリーマン」を想定していたが,実際は「女子高生のシール交換の延長」としてブレークしたという話もある(Michael Bjon: Who decides the success of picture mail?).プロセスイノベーションの典型である「トヨタ生産システム」も,賢い経営者が意図して作ったもではなく,現場の試行錯誤の結果として生き残ったものという分析もある(藤本隆宏:能力構築競争).そもそもイノベーションとは既存の枠組み(フレーム)の外で生まれるものであり,フレームを規定することでイノベーションを阻害しているという言い方もできる.
ただ,偶然によるイノベーション創発は高度経済成長の日本では十分期待できたことかもしれないが,少子高齢化・安定成長の日本では,偶然はどんどんシュリンクしつつある.すなわち,高度経済成長下では,多少のブレ(不均一,分散,遊び,無駄)があっても,結果オーライでうまくいくケースが多く,逆に偶然の入り込む余地も大きかった.しかし,厳しい時代ではキッチリやる企業だけが生き残り,経営システムの収斂,多様性の減少が起こってくる.その意味で,社会としてはイノベーションが起こりにくくなってきているのかもしれない.
イノベーションシステムに求められるのは,偶然に頼らず偶然を生み出す仕組みといえるかもしれない.