政府が福島第一原発からの処理水を海洋放出する方針を決定したという。なんとも苛立たしい気分である。
そんな方針には反対だといって,知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいい問題ではない。原発を廃炉にしてその場所をきれいな状態にすることが絶対的に必要ならば,処理水の処分は避けて通れない問題である。孫子の代にまで及び,またかつて原発からの電気を利用してきた立場からすれば,多少なりとも責任がないとは言えない。
今自分にはっきり言えることは,処理水に含まれるトリチウムは,決して安全なものではないということである。DNAに取り込まれれば,修復不能の障害を残す可能性がある毒物である。これを数十年にわたって海に放出し続ける。また,処理水は原発の敷地外に出することが難しく,福島の海に流されることになるという。漁民の皆さんが怒るのは当然であろう。
わたし自身反省していることだが,今回の政府の方針の発表があるまで,本気でこの問題を考えようとしなかった。また,方針に反対する野党の主張にも付焼刃的なところがあるようにみられる。ただ時間を置けばいいという問題ではないが,今回の方針はあくまで提案として扱い,反対論,別方針案を含めて公開の討論に付すことにすれば,多少いらだちもおさまるのだが。現在貯蔵されている処理水だけでも放出に30年を要するという。何世代にもわたる問題である。開始を2年後とせず,方針決定を2年後としても,決して遅すぎるとは言えないのではないだろうか。