ビデオで『イヌと人 3万年の物語~絆が生んだ最強の友』を観た。2018年3月に放送されたNHK番組の再放送を録画しておいたものである。あらためてイヌとヒトとの関係の深さに感動した。
番組では先ず,群れから落ちこぼれたオオカミが人間に近づき,その有用性を認められて約3万年前から共同生活を送るようになったと仮定する。そして,人間とともに,あるいは人間の集団から集団へと地球上を拡散し,南米大陸やオーストラリアにまで至る。人間とのコミュニケーション力,嗅覚などの備わった能力から,狩猟,牧羊,地雷探知など人間社会の役割を担うようになる。
日本人の研究者によって,イヌがヒトを見つめると,ヒトの中に絆を感じさせるホルモンのオキシトシンが生じることが明らかにされた。これはちょうど,母親が愛児から見つめられるときに生じる現象と同じで,見つめられると見つめ返すことにより,絆を強めるループが成り立つことになる。異種の動物の中で,ヒトにそのような作用を及ぼすのはイヌだけだそうである。
いくつかのエピソードの中で最も感動的だったのは,筋肉が硬直するという難病に罹り,人嫌いで引きこもりのオーエンと,虐待によって片足と尾を失ったハチ(忠犬ハチ公から名前はとられている)というイヌとの交流である。家族はハチを譲り受けてオーエンに引き合わす。不自由な体で寄り添うハチに心を許し,二人の間には強い絆が生まれ,オーエンは明るくなり,ハチと一緒に散歩に出るようになる。観ていて涙が出た。
ヒトとイヌの関係は,共進化の素晴らしい賜物である。
オーエンとハチ。テレビの画面を撮影。
ペルーで見かけたインカ犬。ショロイックインツレという種類で,一緒に寝て人を温めてくれるという。2011年撮影。