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違いが楽しい―二紀展と新制作展

2007-05-12 19:13:04 | 美術
 この春、神戸の原田の森ギャラリーで二つの洋画団体の大きな美術展が相次いで開かれました。
 神戸二紀展(4月1日~8日)と関西新制作展(5月5日~11日)の二つです。
 力作がそろって、なかなか見ごたえのある展覧会になりました。
 
 原田の森ギャラリーというのは、もとの兵庫県立近代美術館です。
 昭和の名建築家の一人、村野藤吾(とうご)が設計した最初の美術館で、近代的で軽やかなシルエットが目に気持ちいい建物です。
 5年前に新しい兵庫県立美術館(安藤忠雄設計)が神戸港にオープンしたので、それを機会にまさしくサプライズな巨大ギャラリーとして一般に開放(有料)されることになりました。
 おかげで神戸でも本格的な団体展が開かれるようになったのですが、展示室の質も最高クラスの空間ですから、「出品する作家も力がいちだんと入るよう」(高崎研一郎・二紀会兵庫県支部長)です。
 
 さて美術界も多様化が進んで、美術団体の個性や特性も薄れてきたといわれますが、力作がこのように高い密度で並べられますと、やっぱりそれぞれに独特の香りというものが漂います。
 これが見る者には楽しみです。
 神戸では二紀会の重鎮の中西勝さん、新制作の重鎮の石阪春生さん、この二人の有名作家がなおパワフルな制作を続けていますが、この二人が放つえもいえない光と空気がそのままおおぜいの作家が出品する展覧会でも感じられて、人間の心の不思議を考えたりするのです。

 むろんこれはあくまでも相対的・感覚的なことですが、二紀会の作家たちと新制作の作家たちとでは光への感性に微妙な差異があるようです。
 明るさと暗さ、つまり明度の変化により鋭く感応するか、鮮やかさと渋さ、すなわち彩度の変化により鋭く感応するか、その違いといってもいいでしょう。
 その微妙な差異がひいては、深淵さや思想性をより強くにじませる二紀会の作風と、明快さや造形性を掘り下げていく新制作の作風とに反映されていくようです。
 その差異が見る者の心をいっそう豊かにしてくれます。
 違いが大きければ大きいほど、楽しさも大きくなるというわけです。 

 いい空間があって、そこで味わいのある展覧会に出合いますと、人間の心の働きにとって装置(場所)の贅沢さもまた重要な要素なのだと、そんなこともあらためて教えられる思いです。
コメント
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