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竜の末裔 第93話

2009-07-12 | 小説
時計台には何の痕跡も見つけられず、狙撃主が何者か不明ではあったが、仕方なく三人は広場に戻ることにした。
「とりあえずじいさん、こんなところにいてもしょうがないぜ。帝んところに行くんだろ?急がなくていいのか?」
「おぉ、そうであった!フェン、私と一緒に来てくれるか?一刻を争うのだ。」
「あ、はい。でも僕では道案内ぐらいしか・・・・・・」
広場には悪漢二人の死体が無残に横たわっていた。
そして、店の前には泣きじゃくるマオの姿と、マオを優しく抱きとめる青年の姿があった。
フェンとサーガが駆け寄ると、寄り添う二人は顔を上げた。
「あなた方がマオを助けてくれたのですか?ありがとうございます。」
そういって青年は深々と頭を下げた。
「・・・・・あ・・・・・・それは・・・・・・」
明らかに狼狽するフェン。
「いやー、可愛い女の子を助けるのは俺様の役目だから良いってこと。ところで、あんたは誰?」
青年は頭を上げた。サーガの失礼な物言いに嫌な顔を見せることも無かった。
「私はクリス・ユナ。マオの婚約者です。」
「あ・・そ、そう。マオってお嫁さんになる予定あったのね。(あちゃ~。)」
サーガが横目でフェンを見ると、目に見えてわかるほどがっくりと肩を落としている。
「・・・・・・!クリスってシンハ・クリス家のことか?」
「そうですね。父は確かにそういった仕事をしています。私はただの音楽家ですが。」
「名門なのか?」
あまりのフェンの落ち込みぶりにいたたまれなくなったブランが口を開いた。
「名門も何も中書門下十家の一つだよ。イェンロンの民生を司る十の名家だ。どこもガルダの紋様を使っていて聖鳥大家なんて呼ばれ方もしてる。」
「なんと!ヴィシュヌから聞いておる。イェンロンとの交易はすべてガルダと行っているはずだ。ということは帝とも近い位置にあるということか!」
「は?ヴィシュヌというと龍皇国のヴィシュヌおば様のことですか?」
「ユナとやら。ヴィシュヌを知っているのか?」
「知っているというか、ヴィシュヌおば様の妹が私の祖母です。あなたは、まさかヒルデブラン公ですか?ヴィシュヌおば様からいつもお話は窺っております。ブラン坊やという素晴らしい方がおられると。」
坊やの部分にブランは顔をしかめた。どうやらユナはヴィシュヌに褒め言葉として教わっているようだ。
「余計なことを・・・。しかし、あの謎だらけの老女にそんな秘密があったとはな・・・。渡りに船とはこのことかもしれん・・・。」


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